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足を運びたくなる邦題へ――『推理作家ポー 最期の5日間』プロデューサーに聞く原題と邦題の関係とは? 

2012/10/11 11:30 投稿

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推理作家ポー 最期の5日間

秋になると何故か自然とミステリー作品を観たくなりませんか? 10月12日に公開される映画『推理作家ポー 最期の5日間』は、コナン・ドイル、江戸川乱歩、東野圭吾ら後世の推理作家に影響を与えた作家エドガー・アラン・ポーの最期の日々を、史実とフィクションを交えて贈るミステリー作品です。

原題は『The Raven』と、私たちにとってはぱっと見ただけではイメージが浮かびづらいものですが、『推理作家ポー 最期の5日間』という邦題になった時、ミステリー作品であることや、ポーの物語であること、“最期”と言うフレーズから何かただならぬ状況を想像する事が出来ます。

今回は、この邦題を担当されたウォルト・ディズニー・ジャパンの宣伝プロデューサー、脇坂守一さんに映画と邦題の関係、『推理作家ポー 最期の5日間』というタイトルをつけたポイントなどお話を伺いました。

脇坂さん

――映画『推理作家ポー 最期の5日間』の原題は『The Raven』というものですが、これにはそもそもどの様な意味があるのでしょうか?

脇坂守一さん(以下、脇坂):エドガー・アラン・ポーの最も有名な詩の中に『大鴉(オオガラス)』というものがあります。アメリカでは『The Raven』=『大鴉』は教科書にも載っているくらい著名な詩なので、このタイトルでもピンとくるわけですね。

――そのタイトルがそのまま日本で使われてしまっては、私もそうですが、映画をイメージしづらいですものね。

脇坂:そうなんですよ。僕もそうです。ポーの作品を読んだことがあったとしても、『モルグ街の殺人』などの推理小説の名前はパっと出てきても、『大鴉』はなかなか出てこないですよね。

――ポーが詩人でもあったという印象自体無かったので、今回の映画で知る事が出来て面白かったです。

脇坂:ポーは後のSF作品に通じる発想を持っていたり、ポーのゴシック・ロマンスの世界に影響を受けたナボコフが「ロリータ」を執筆し、ゴシック&ロリータ(ゴスロリ)という言葉が生まれたりと、色々な影響も与えている人物なので、すごく多才な人だったんですね。

――『The Raven』から邦題を作るときに意識したことはありますか?

脇坂:アメリカ版のポスターはポーが中央にいて、カラスが羽を広げているという“スリラー”的な、非常に怖がらせようとするデザインにしているんですね。でもこのイメージをそのまま『The Raven』というタイトルで日本に持ってきては、観客のターゲット層とは合わないかなと思う、邦題をつけるというところまではスタッフの共通の認識だったんですね。

推理作家ポー 最期の5日間

――日本版では邦題、ポスターのイメージ共にミステリーファンの興味を“そそる”仕上がりになっていますね。

脇坂:この作品を全て観終わった時に『エドガー・アラン・ポー 最期の8日間』というタイトルが頭に浮かんだんですね。8日間というのはなぜだか分からないのですが。なので、「もし日本で公開をするんだったら『エドガー・アラン・ポー 最期の8日間』というタイトルにしたいです」という事は言っていたんです。

そこで、本当にタイトルを決める頃になって『エドガー・アラン・ポー 最期の8日間』では長いというのがあったり、ポーの認知を考えて“推理作家”という職業をつけたしたり、実際にポーが亡くなる直前5日間の行動が非常に謎であるという事実から、現在のタイトルにしたわけです。その邦題と背景にある理由をアメリカ本社に連絡して、説明をしてOKをもらって決定しているので、トータルで言うと1ヶ月ほど時間がかかっています。

――調整時間はあれど、邦題のベースになるフレーズはぱっと観た瞬間に決まったわけですね。

脇坂:今回の様にインスピレーションでぱっと決まる作品もあれば、すごく時間をかけて考える作品もあります。または、アメリカで大ヒットしていてその原題が日本まで情報として届いていればそのままにしたり。

僕が個人的に大事にしているのは、最初に観てぱっと思った事、第一印象で、8割は直感をそのまま採用します。でもそれはあくまで僕の感覚なので、周りの皆からの意見で変更することももちろんあります。

――脇坂さんが個人的に好きな邦題、これには唸った! という作品はありますか?

脇坂:古い作品でハル・アシュビー監督の『さらば冬のかもめ』という映画があります。現代は『The Last Detail』なのですが、その『さらば冬のかもめ』という邦題にとても余韻があって。映画を観る前に抱いた印象と観終わった後の感想は違うのだけど、原題のままだったら観なかっただろうし、すごく良い作品でした。

後は『明日に向って撃て!』は原題には『Butch Cassidy and the Sundance Kid』という2人の強盗の名前が使われているんですね。今から30年以上前の映画業界は特にボキャブラリーも豊富で新鮮だったと思うし、どうやって日本の市場でヒットさせようと試行錯誤していたから、良い邦題が多いのだとも思います。

――なるほど。『Butch Cassidy and the Sundance Kid』では、日本の観客は足を運びづらいでしょうね。

脇坂:僕も全てを邦題にしたほうが良いとは思いませんが、邦題にしたことによって、良い意味で“騙される”というか、邦題で受ける印象のまま映画館に行くというのも面白い映画の観方だと思うんですね。

例えば、ディズニー/ピクサーの映画でしたら『カールじいさんの空飛ぶ家』の原題は『UP』、『レミーのおいしいレストラン』は『Ratatouille』というタイトルなんで日本でそのまま使うのは難しいだろうと。もちろん、内容と邦題が隔離していてはダメですが。

『推理作家ポー 最期の5日間』という邦題は今回上手くいったなと思っているんですが、公開はこれからなのでどうなるか楽しみですね(笑)。

推理作家ポー 最期の5日間

――秋が深まってくるとミステリー作品を自然と求めますし、ダンスシーンのドレスなどもとても美しくて、女性にもオススメ出来る一本だなあと思いました。

脇坂:ミステリーファンはもちろん、以前ブームになった『ダヴィンチ・コード』の様な謎解きを楽しめると思います。何よりも、作家のポー自身が、自分の作品になぞらえて行なわれた事件の謎解きをしていくという設定が面白い! この映画をきっかけにポーの作品に興味を持っていただけたら嬉しいですね。

――どうもありがとうございました!

推理作家ポー 最期の5日間
http://www.movies.co.jp/poe5days/

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