みなさんはクリスチャン・ベイルという俳優の名前を聞いてどんな出演作品を思い浮かべますか? バットマンを演じた『ダークナイト』シリーズでしょうか。薬物中毒の元ボクサーを演じてアカデミー賞助演男優賞に輝いた『ザ・ファイター』でしょうか。あるいは、デブでハゲの中年詐欺師になりきった『アメリカン・ハッスル』も記憶に新しいですよね。これらの作品について「え? あれもこれも全部同じ人なの?」と思った人も多いはず。その反応も当然で、彼は作品ごとに徹底的に役作りを行い、その作品だけのために何か月もかけて見た目を変化させることで有名な俳優なのです。
身長183センチのクリスチャン・ベイルが最も減量した役は、2004年の『マシニスト』で演じた謎の不眠症に悩まされ1年間寝ていない男。なんとその時の体重は55キログラムだとか……。文字通り骨と皮だけになった姿には、正直なところ恐怖さえ覚えました。そのすぐ後に撮影を控えていた『バットマン・ビギンズ』の役作りのため、今度は6か月をかけて体重を86キロまでウエイトアップさせ、過酷なトレーニングによってムキムキな身体を作り上げました。
変化させるのは体重や体格だけではありません。2010年の『ザ・ファイター』では、薬物中毒の元ボクサーを演じるために13キロの減量を行っただけでなく、自ら髪の毛を抜き、歯並びまでをも変えて見た目の変化を追及。そして、70年代に実際に起きた汚職スキャンダルを題材に主役の天才詐欺師を演じた『アメリカン・ハッスル』では、これまでにないほど激太りして体重は103キロに。衝撃的にだらしないお腹に加えて、この時もハゲ散らかった頭部を披露していました。
そんなクリスチャン・ベイルが登場する最新作『ファーナス/訣別の朝』が、9月27日(土)より全国公開。彼が演じるのはこれまでの特徴あるキャラクターとは打って変わり、寂れた町の製鉄所で働く寡黙な男ラッセル・ベイズ。年老いて寝たきりの父、ギャンブルに手を出して借金を抱える軍人の弟の面倒をみながら、閉鎖寸前の製鉄所で働く実直な男を演じます。
今回の役作りについてクリスチャン・ベイルは、「実は、撮影中も役作りのプロセスの一部だと感じている。もちろん、可能なかぎり準備した状態で、現場にやってくるべきだ。でも、その場でなにが起きるのか予測するのは不可能だし、あらかじめすべてを把握してしまったら、現場で楽しむことなんてできない。だから、映画の撮影中も準備を続けていくべきだと思っている」と、撮影前の体型や見た目の変化だけでなく、撮影中も常に役作りへの努力を重ねていることを説明。
さらに、「ぼくには具体的な準備のやり方があるわけじゃない。レッスンを受けたこともない。実際、これまでに演じた役すべてで、頭を抱えている。こんな役なんて演じられない。いったい、どこから始めたらいいんだと。その状態から、ちょっとずつ発見を重ね、それまでに培った演技法をぶちこわして、新たなものを作り上げていく。毎回がそうなんだ」と、これまで演じてきたキャラクターごとに苦悩を経験してきたことを明かしました。
常にギリギリまで自分を追い込んでいる彼は、「必要なものはなんでも利用する。コメディでも音楽でも、取材でも、自分の記憶でも、読んだ本でもなんでも。なぜなら、どれが役に立つかわからないからね。実際、ヒントは予想もしないところからやってくるものなんだ」と語ります。
本作のメガホンをとったのは『クレイジー・ハート』でアカデミー賞をはじめ数々の賞に輝いた期待の新鋭スコット・クーパー。製作にはレオナルド・ディカプリオ、リドリー・スコットとビッグネームが名を連ねます。現状に満足することなく、常に前進し、日常の出来事をも吸収しようとするベイルの徹底した姿勢が、多くの名優に共演を望まれ、スコット・クーパー監督も絶賛する演技につながっているのでしょう。リドリー・スコット監督とは、オスカー有力候補とも言われている『エクソダス:神と王』(2015年1月30日公開)でもタッグを組み、エジプト王国の王家の養子モーゼ役を演じています。今後さらなる活躍が期待されるクリスチャン・ベイルから目が離せません。
●『ファーナス/訣別の朝』
■監督・脚本:スコット・クーパー
■脚本:ブラッド・インゲルスビー
■製作:ジェニファー・デイヴィソン・キローラン、レオナルド・ディカプリオ、リドリー・スコット
■出演:クリスチャン・ベイル、ウディ・ハレルソン、ケイシー・アフレック、フォレスト・ウィテカー、ウィレム・デフォー、ゾーイ・サルダナ、サム・シェパード
■公式サイト:furnace-movie.jp
(c) 2013 Furnace Films, LLC All Rights Reserved
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