「イギリス」と言われると、私たちは一つの国というイメージを抱きがちだ。そのため、今問題になっている「スコットランド独立」というと、ピンと来ない方も多いのではないだろうか。
United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(UK)の日本語訳が、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」という名称になっていることからもわかるように、イギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国から構成されている「連合国家」だ。
今回いわれている問題は、「スコットランドがイギリスという共同体から独立したい」と主張しているというわけだ。
著名人の間でも、賛成派・反対派の意見が激突しており、俳優のショーン・コネリー氏などはスコットランド独立を支持しているが、ハリーポッターシリーズの作者であるJ・K・ローリング氏やデビット・ボゥイ氏などはスコットランド独立に反対を唱えている。様々な議論を呼んでいるが、9月18日に住民投票が行われ、スコットランドが独立するかどうかが決められることとなった。
なぜスコットランドが独立しようとするのか?
もともと、スコットランドは独立した王国だった。ところが1700年代のはじめに、経済的理由などからイングランドに併合された。この併合を不満とする意見が当初からあった上に、1979年にサッチャー政権が炭鉱などを閉鎖したため失業者が急増した過去がある。その後、1999年に当時のブレア政権が地方分権を認めため、約300年ぶりに復活したスコットランド議会の中で、イギリスからの独立を唱える意見が強くなってきた。今回のスコットランド独立住民投票は、その流れと言える。
北海油田を財源にするという考え
独立派の意見の中でもっとも強く支持されているのが「北海油田を財源にすれば、雇用や福祉を保てる」という意見だとされている。北海油田から徴収される税収は、公称で8200億円弱。スコットランドが独立して、北海油田を手にすればそれだけのお金が落ちてくるので、全員が豊かに生活していけるというわけだ。
とはいえ、独立するとなると、新しい通貨の発行はどうするのかという問題が生じる。仮に、スコットランドが独自の通貨を発行したとしても、世界に信用されているイギリスの「ポンド」よりは信頼が低くなるのは想像に難くない。また、世界有数の証券取引所がロンドンにある以上、北海油田を手にしたとしてもイギリスからの影響をまったく受けない経済体制を構築するのは難しいように見える。そのため、イギリスから独立する意味がないのではないかという意見も多い。
スコットランドのブランド スコッチウイスキー製造業者は反対姿勢
意外に思えるのが、スコットランドのブランドともいえるスコッチウイスキー製造業者の団体が独立反対を唱えていることだ。スコッチウイスキーは、イギリスが輸出する食品や飲料の1/4程度を占めると言われている。スコットランドが独立すれば、イギリスに徴収されている酒税をスコットランドが独占できそうだが、実際はそう簡単な話ではないという。
現在、イギリスはEUに対して無税でスコッチウイスキーを輸出できるが、もし、スコットランドが独立すれば、関税をかけられて売れ行きに影響が出かねない。また、イギリスはヨーロッパ以外に貿易協定を結んでいる国が200以上あるため、スコットランドが独立すれば、売り上げが打撃を受けるのは必至だ。
様々な問題を抱えた問題だが、スコットランド独立の住民投票は、まもなく行われる。日本にも影響がありうる話なので、慎重に見守りたい。
※写真は 足成 http://www.ashinari.com/ より
※この記事はガジェ通ウェブライターの「松沢直樹」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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