今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■産業とルーチンワーク(メカAG)
はるかな昔、人はそれぞれ自給自足をしていた。自分で住む場所は自分で確保し、自分が食べるものは自分で野山を駆け巡って動植物を捕っていた。あるいはみんなが自分の食べる分を耕作していた。波瀾万丈。すべてが人生で初体験の連続。
とはいえ慣れてくれば何でもルーチンワーク化していくものだ。それにそれぞれ得意な作業を分業し合った方が効率がいい。専門家が現れ物々交換や貨幣経済が始まった。
しかし人間の手で生産できる量は限られている。食料にしろ工芸品にしろ、1人の人間が何百人、何千人分の食料を作れるわけではない。なので自然と住み分けが行われた。街のパン屋じゃないけど、住人の一定数辺り1軒の店があり、離れたところにまた1軒ある。自然とテリトリーができていた。これが最初の産業構造の変化。
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産業革命によって人力から機械による生産になり、このテリトリーが崩れた。機械を使えばそれまでの何十倍、何百倍もの客に製品を提供できる。量こそ強さであり、たくさんの量を作れる者がすべての市場を取る。そのためどんどん巨大化していった。これが2度目の産業構造の変化。
ただ量が支配的要素であることは変わらない。というかより鮮明になった。量が産業構造を決めていた。
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生活必需品の大量生産技術は行き着くところまで行き、むしろ産業を支配するのは流通になった。いくら大量に物を作れても広範囲に運べないと頭打ちになってしまう。いかに大量のものを運ぶかが重要になる。鉄道や船舶などの運送業。これが3度目の構造変化。
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物を大量に作るのも運ぶのもできるようになった。量については行き着くところまで行ってしまった。次に戦いのテーマになったのは時間。応答性。同じものなら生産にせよ流通にせよパイプライン処理をすれば、客の注文から客の手に届くまでの時間は無視できる。注文の前にあらかじめ作っておいて、客の近くの倉庫にストックしておけばいいのだから。
しかし注文から配達までの絶対的な時間を競うようになった。多品種少量生産やオーダーメイド品。これらは先行して作って倉庫にためておくわけにはいかない。ここでも機械が活躍することには変わりない。しかし方向がちょっと変わった。
CPUのパイプラインに似ている。Pentium4あたりのCPUはパイプラインの段数を上げることで見かけ上の処理性能を向上させていた。14段とか。ただ条件分岐とかのように次に実行させる命令が予測できないと14段のパイプラインは邪魔にしかならない。Pentium4が「もっさり」(速度が機敏でない)というのはこのため。これ以降CPUのトレンドは少ないパイプラインの方向へ向かう。4番目の変化。
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そして情報化社会。社会の支配要素が物質の量ではなく情報の量に移ってきた。情報ならいくらでもコピー可能。究極の大量生産。逆に大量生産の能力は意味を持たなくなった。そこで何によって市場の支配力を競ったかといえば、絶え間ない変化。
パソコンでいえばCPUもOSもワープロなどのアプリも互換性が重要になった。互換性が重要というのは別な見方をすれば非互換性が重要。絶え間ないバージョンアップ(変化)が重要。変化の中で変わらない部分(互換性)が重要なのであって、変化しないことではない。変化しないだけなら、他のライバルに真似されてしまう。現にMS-DOSなどは互換性のある製品が登場した。CPUも。
後から追い上げてくる互換製品の蹴落としのために、MicrosoftもIntelも絶え間なく新製品を開発し続けた。
全然違うジャンルだが、マンガやテレビ番組も一品物(読み切り)から、連載・シリーズ物が主体になったのも同じ理屈かもしれない。Microsoftが頻繁に自社製品を改良し続けることでライバル製品の追従を許さなかったように、毎週毎週「続き」の作品を提供し続けることで、獲得した読者を縛り続けた。
単発で独立した画期的な変化よりも、小刻みな持続的な変化。いわば変化(開発)のルーチンワーク化。反面、マンネリ化は避けられない。5番目の変化。
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これらの変化は、新たな変化が起きるとそれ以前のものは消滅してしまうのではなく、どんどん上に積み上がって行き、常に一番上のある部分がその時代の支配的産業として見えるということ。依然として大量生産は重要だし流通も重要。ただ競争の最前線ではなくなったというだけ。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年09月11日時点のものです。
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