アウトシュタットに来たユーザーは、まず“コンツェルンセンター”を訪れることとなる。ここは、フォルクスワーゲンがすべての自動車ユーザーに伝えたいことが非常に効果的かつ、より理解を深めるために最適化された形で体現されているスポットだ。何気ない食事から、具体的につくられたオブジェまで、すべてにおいてフォルクスワーゲンの思いが込められており、ここを訪れた人々は、楽しみながら知らず知らずのうちに学習をすることができる。それでは、いくつかの印象的な施設について特徴も交えつつ紹介していこう。
●フォルクスワーゲンのグローバル感が広がるエントランス
エントランスには「直径12メートル、45トン」の巨大な地球儀が飾られており、フォルクスワーゲンのグローバル感を表現。壁面には「歓迎」を表す黄色のカラーリングが施され、ユーザーを迎える場所として、ブランドのデザインイメージを体験できるようになっている。
●“ものづくり”と“コミュニケーション”を知るピザレストラン
不思議なことに、フードコートではなく施設内にピザレストランが存在する。このピザレストランはピザの手作り体験をすることができるのだが、実はここにもフォルクスワーゲンならではの思いが込められている。食事という目的を追いかける過程で、ピザの素材を選ぶ、生地をねる、窯で焼き上げる、といった経験を通して“ものづくり”の大切さを身をもって知ることができるのだ。さらにこのレストラン、非常に芸が細かいのが“椅子の高さがそれぞれ異なる”という点。アウトシュタットを訪れるユーザーは家族連れが多いのだが、「親子の目線をそろえる=対等にコミュニケーションを交わせる」というなんとも気の利いた仕掛けである。
●どうやって乗るの? 運転の難しさを乗り越える“コミュニケーション”
ピザレストランでは、“ものづくり”と同時に“コミュニケーション”の重要さも説かれているのだが、それに限ったことではない。一見すると“公園の遊具”のような乗り物がいくつかあるのだが、これがまた憎らしいほどに考え抜かれた乗り物なのである。見るからに乗りづらそうで、ぱっと見ではどう運転したら良いか分からないようなものさえあるのだが、実はワザと乗りづらくデザインされているのだという。これらの意図は「頭を使って乗りこなすこと」、そして物によっては「協力して乗りこなすこと」である。これらを楽しみつつ運転していくなかで“知性”そして“協調すること”が無自覚のうちに体感できるというわけだ。こうしたさり気ない演出がふんだんに盛り込まれた様々な設備により、、「子供を育てつつ、いかに将来をつくっていくのか」という世界観を知っていく。
●資源利用の裏側にある衝撃的な事実
世界地図を模したオブジェは、世界中の水資源の埋蔵量とその流れを表しているもの。大陸・地域ごとの高さが水資源の埋蔵量を表しており、地表から放出された水の着地点が、流通経路を表している。こうしてみると、先進国ほど海外の水資源への依存度が高く、南アメリカ大陸以外の資源国はむしろ水資源が少ないことがよく分かる。
「バナナ一本を作るために必要な水資源の量」を表した衝撃的な展示もある。これらの展示から感じる(“痛感”が相応しいかもしれない)ことは「資源は有限であること」に尽きるだろう。自動車の製造ともなれば、その消費量は膨大なものとなる。ここから理解できることは、“自動車に乗る”ということは“いかに自然環境と共生していくか”ということである。
●決して多くを語らない“思い”を伝える聖地
“コンツェルンセンター”は、よくある博物館や展示施設のように、細々とした解説がなされるわけではない。くどくどと学習を強制されるものではなく、“見る”、“触れる”といった“体験”を通じて得る知識の数々が、「環境意識をいかに自分の生活と結びつけて認識させるか」といった潜在意識を芽生えさせてくれるのだ。
例えば、「いま私たちが飲んでいる水はどこから来ているのか?」という問題提起を行ってくれる水資源オブジェは、巡り巡って自分に訪れる影響を、決して他人事ではない現実問題として認識させてくれる。当然、自動車ビジネスとも深く結びついており、“サステナブルモビリティ(持続的な自動車社会)”をつくっていくために必要不可欠な問題なのだ。
この“サステナブルモビリティ”に対する試みを、フォルクスワーゲンでは「Think Blue.」という標語にしている。「Think Blue.」には、「自動車に乗る以上、環境に負荷をかけてしまうことは避けられないことなので、環境と共存共栄していこう」といった思いがこめられており、いわばフォルクスワーゲンの神髄である。この神髄を体現する聖地として“コンツェルンセンター”は存在し、フォルクスワーゲンユーザーだけでなく、あらゆる人々に対し、フォルクスワーゲンの考える「Think Blue.」を伝え続けている。
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