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忘れた頃に、ブラック企業に追い込みをかけてみた

2014/06/26 00:00 投稿

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昨年、取材でブラック企業に潜入した。実際に社員として働く中で、労働法関連についての違法行為の証拠を集め、労働基準監督署に通報した。求人から推察した通り労働環境はひどく、結果として先方から退職を要求されることとなった。

詳細は、本紙過去記事 ブラック企業で働いていたら労働基準監督署のガサ入れにあったをご覧いただきたい。

私自身としては、自著の取材が終了したら脱出方法を検討しなければいけないと考えていたので、解雇通告は好都合だった。企業側に会社都合の退職(解雇)であることを証明する解雇通告書をださせ、解雇を受け入れる形で無事に脱出を図った。

ところが、ツケは回ってきた。

勤務していたブラック企業が約束したはずの健康保険、厚生年金の切り替え加入をしていないことが発覚した。私は、フリーランスなので、国民健康保険、国民年金に加入している。それらの保険料がブラック企業で働いている間は納付されない。

そのため、地方自治体の保険担当者と、日本年金機構から警告を受けることとなった。

詳細は、本紙過去記事 ブラック企業で働いていたら日本年金機構から差し押さえ予告が来た(http://getnews.jp/archives/554611 [リンク])、 ブラック企業で働いていたら健康保険証を取り上げられそうになった(http://getnews.jp/archives/586778 [リンク]) をご覧いただきたい。

国民健康保険と国民年金については、制度のおかしさに歯がみしつつも、担当官に事情の説明を重ね、なんとか決着をつけることができた。取材のために潜りこんだとはいえ、ここまで手間を取らされると、潜入先のブラック企業への怒りが再燃するのを抑えられない。

「報復」といえば大げさだが、一発食らわせてやらないと気がすまない。かといって検察庁などにもちこんで、違法行為を徹底的に洗うように告訴する気力もない。

考えた末、雇用保険の不備をつついた後、労働局に通告するなどの対応を考えることにした。法令では、人を雇い入れた場合、すぐに雇用保険に加入させなければならない。

ところが、潜入していたブラック企業は、健康保険・厚生年金はもちろん、雇用保険もかけていなかった。

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雇用保険がかけられていない場合、ハローワークの雇用保険適用課で保険加入の確認とともに、かつて勤めていた企業に、雇用保険の加入を求める申請を出すことができる。早速ハローワークへ出向き、事情を説明した。

「やっぱり松沢さんには、雇用保険はかけられていませんね」

「雇用保険は、強制加入ですよね」

「はい、強制加入です。フルタイムで働いていらっしゃったんですよね?」

「そうです。すでに申し立てをしていますが、この企業は、健康保険も厚生年金もかけ逃れしてるんですよ」

「それを証明するものってなにかありますか?」

私が、勤務時間が記載された給与明細書と解雇通告書などを見せると、コピーを取った。

「法令の観点からすると、松沢さんに雇用保険をかけてないのは違法ですね。これだけあれば認められると思うんですが、担当が別のハローワークになるんですね。そのため、時間がかかるかもしれません」

このあたりの事情はよく知っている。雇用保険は強制加入で、会社側が意図的にかけていない場合は、職権で強制加入させられることを厚生労働省が明言している。ただ実際は、事業主が説得に応じないなどの理由で、強権を発動することは少ない。

とはいえ、「当時の上司だった人物の判がおされた手書き式のタイムカード」、「給与明細」、「会社判が押された解雇予告通告書」これだけそろえれば、まず言い逃れはできないだろう。事務官に確認請求申請を出してもらって、数日が過ぎた。

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約2週間後、別のハローワークから、雇用保険証書と離職票が送られてきた。どうやら、あっさりブラック企業が役所の言い分を認めて、雇用保険に加入したようだ。これで、「役所側に雇用保険のかけ逃れ」を行っていたという記録が残る。

同様の事件の告発があった場合、前歴から役所は対応を厳しくするだろう。徹底的に争う方法もあるが、一応の目的は達成したので、私からはアクションを起こすのはこれまでにした。

ブラック企業に引っかかってしまった場合、役所や労働組合などの役所を味方につけるには、なにより「証拠」がきわめて重要だ。また、「退職してほしい」と強要されたら、安易にイエスと言わないことも重要だ。

雇用保険がかけられていない場合、退職後の生活が一気に苦しくなる。仮に雇用保険がかけられていても、自分の意思でやめたことにされれば、雇用保険の受給開始は退職から三ヶ月後になる。

会社で働くことが、年々リスクを含むようになってきている。自分の仕事を守る方法を知り、いざというときは冷静に対処できるように努めてほしい。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「松沢直樹」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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