今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■日本企業は効率が悪いのか(メカAG)
日本企業はぬるま湯体質で、だから日本の経済はイマイチでイノベーションも起こせないのだというのが、ネットの通説(笑)になってるが、本当だろうか。
まずそもそも大きな企業の意思決定が遅いのはどの国も同じだと思うのだよね。かつてのOS戦争で、IBMのOS/2がMicrosoftのWindowsに打ち負かされてしまった。若き経営者が巨人をまんまと打ち負かしたと、当時脚光を浴びた。
今では信じられないかもしれないが、あの頃のパソコンユーザーは自分たち若い世代の代表として、老いた巨人IBMを相手に善戦するMicrosoftを応援してたんだよね。いまはむしろMicrosoftが過去の巨人として嫌われてるけど。
どの本か忘れたけれど、ビル・ゲイツはなにも好き好んでIBMと決裂したわけではなく、なんとか協調関係を維持しようとしていたとあった。しかしIBMの鈍重さがどうにもこうにも変化の早いパソコン界とその中で生き残るべく必死のMicrosoftの足を引っ張っていた。これ以上IBMと付き合うのはMicrosoftの死を意味する、という危機感だったのだろう。
* * *
なにもIBMを例に出さなくても、アメリカにも古くからある巨大企業はたくさんあるよね。自動車メーカーや航空機メーカー。特に後者は軍産複合体を形成している。
Apple社だってジョブズが不在の1985年~1995年の10年間はやってることがちぐはぐで、傍から見ても気の毒そのものだった。Intelだって1980年台はDRAMの競争で日本のメーカーに敗北。Intelがいまのような覇者となっていくのは、80386 cpuあたりからだよね。この時Intelはセカンドソース制をやめている。
それまでICにせよLSIにせよ、同じ製品を複数のメーカーが作っていた。Z80ならシャープやNECも作っていた。これは1社だけが作っていると、そのメーカーが倒産したり自然災害でダメージを受けた場合のリスクが大きすぎるという考えが当時主流だったためだ。だから積極的にライセンスを行い、他のメーカーにもつくらせた。そうすることでそのICやLSIを多くの企業が採用する。
Intelの今戦略転換で日本のメーカーは再起不能な大打撃を受けた。いままで互換CPUを作ってればよかったのが、見通しが甘すぎた。
一方で一時はIntelと並ぶCPUメーカーだったMotorolaは衛星電話のイリジウム計画とかいろいろ手をだして、結局バラバラに売却されてしまった。アメリカのメーカーだっていろいろ無様なことをやっている。
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現在世界はアメリカのメーカーに主導権を握られているけれど、それはそれぞれの原因があるのであって、日本企業の構造的な問題ではないと思うんだよね。ベンチャーを生み出すのに有利な構造だけは、確かに因果関係があるとは思うけれど、それ以外は関係ないだろう。
ようするにいま「日本の企業は古臭いからダメなんだ」という主張はあまり根拠がないように思う。いろいろ都合のいいことをこじつけているだけだ。それでウサは晴らせるかもしれないが、日本経済にとってなんの解決にもならない。古いものを叩けば若者には人気がでるかもしれないけどね。いいかげん八つ当たりはやめるべき。
既存のメーカーにはしっかり日本経済の下支えをしてもらわなければならない。さすがに赤字は困るが大幅な黒字などなくていいのだ。むろんそういうメーカーにイノベーションは起こせないだろう。いくら批判したところで、それは無理というもの。
新しいものを生み出すのはベンチャーの役目であって、そういうものが育つ土壌を支えるためにも、既存のメーカーには地味に日本経済を支えてもらわなければならない。古いものを叩いても新しいものは生まれないということ。むしろ古いものを叩くのにパワーを使っている間は、新しいものを生み出せないだろう。
執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年06月13日時点のものです。
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