今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■「時間を止める」のSF考証(メカAG)
他の人が話題にしてたので便乗。前々から思ってたいのだけど、マンガとかで自分以外の時間を止めて、その間自由に動けるという能力がよく出てくるが、これはどういう理解をしたらよいのか。
時間を止めるといっても大きくわけて2種類あるように思う。1つは時間が止まった世界には介入できないパターン。空中に投げられたボールはそこで静止していて、主人公が動かそうとしてもびくともしない。Aパターンとする。
もう一つは主人公はある程度その世界に介入できるパターン。空中のボールを持って手で動かせたりする。そのため時間を動かせば、そこからボールは運動し始める。Bパターンとする。
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Aパターンの場合一見矛盾がなさそうだけど、そもそも主人公が移動する場合、空気中の分子とかはどうなるのか。分子も動かないならつっかえて移動できないし、そもそも主人公は呼吸もできないはず。
さらにいえば物が見えるというのは主人公の目に光が届いているから見えるのであって、時間が止まっているなら光も静止しているはずだから、なにも見えないのではなかろうか。時間が止まった状態で、主人公に地球の重力が作用するのかも気になるところ。
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Bパターンの場合、当然「どの程度介入できるか」が問題になる。たいてい力学的な介入にとどまることが多いが、自動車のエンジンとか燃えている炎とかに介入できるのか…。もっといえば爆発途中の原子爆弾とか。
Bパターンの変形として主人公が手で触れているものは時間が動き出すという設定もあるだろう。主人公が友人と一緒に行動する場合、このパターンになる。
この状態だと空気中の分子とかの問題も回避できそうに思う。自動車のエンジンをかけることも可能だろう。ただ「手を触れている」が厳密になにを意味するのか考え始めると微妙。自動車のエンジンから排出される煙は動いたままなのか。友人が持ってるかばんを落とした場合、そのかばんは動き続けるのか。
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そう考えていくと、主人公が(無意識にせよ)「動け」と考えているものは動くということかもしれない。それなら「自分」の範囲も解決できる。主人公が自分と認識している範囲が動くわけだし、友人についても同様。
ただ認識が誤ってるとえらいことになるかもしれない。友人の心臓をうっかり友人の一部として認識し忘れたとか(笑)。
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ただこの場合ですら、ものが「見える」と点を解決するのは難しい気がする。前述のように「見える」ということは主人公の目に光が届いているということ。いいかえれば光源はエネルギーを放出し続けているということ。
時間を止めて、再度動かした時に、主人公が介在していないものは基本的に「時間が止まったことがない」状態で何事もなく再開しなければならないはず。しかし主人公が活動している間に光源から放出されたエネルギーはどう処理されるのだろう。
時間が止まった世界では音がしないのが通例だが、光については無頓着な点は否めない。
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主人公は時間が止まっている世界では、可視光ではなく超自然的な力でものを認識しているのかもしれない。しかし不確定性原理ではないけれど、対象になんらかの作用を及ぼさないと対象は観測できないように思う。そうなると主人公にはマクスウェルの悪魔並みの能力を仮定しないとならない。
まあマクスウェルの悪魔のような能力をもってるなら、時間停止以外のさまざまな能力も説明がつくかもしれない。確率を操作することで、局所的に熱エネルギーを集めて火炎を作り出すことも不可能ではないだろうし、これまで述べてきたような時間停止によって生じるさまざまな物理法則の矛盾も、この世界が自然にもっている不確定性の範囲だという説明も可能かもしれない。
でも、結局マクスウェルの悪魔を許すというのは、因果律の否定であり「魔法」を許すということなんだよね。つまり時間停止は魔法でないと実現できないという、ありきたりな結論で終わるのであった(笑)。
この世界に量子論的不確定性が存在するのは、実は誰かが時間をちょくちょく止めていて、その間にこの世界に介入しているのかもしれない・・・。
執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年05月30日時点のものです。
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