今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
※この記事は2014年05月24日に書かれたものです。
■人間の悪魔性とは(メカAG)
世にコンピュータ犯罪は数多くあるけれど、他人を誤認逮捕させることが目的の事件というのは、珍しいのではなかろうか。他に思いつかない。
遠隔操作ウィルス事件で容疑者の「悪魔性」というものが語られている。無実の人間を陥れ、そのやり方を嬉々として説明する容疑者の姿を形容したものだろう。こうした点は大きな事件のたびに話題になる。オウム真理教事件でも、それなりに優秀な人間がサリンを一生懸命作っていた。
だがしかしそれなら軍隊の兵器を開発している人たちはどうなのだろう。彼らは家電製品を開発する感覚でミサイルなどの兵器を開発してるのではないだろうか。思い通りのものができれば、開発者としては嬉しいだろう。それが悪いことなのだろうか。
さらにいえば軍隊そのものも人を殺すための組織だ。自国の利益のために他国の兵士を殺す。いかに効率よく敵を殺すか作戦を立てるわけだ。
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遠隔操作ウィルス事件でもサリン事件でも、目的を実現するために一生懸命努力し、知恵を絞り、その結果成功すれば喜ぶということ自体は、人間としてごく普通の事だと、俺は思う。
こういうことを述べると「おまえは被害者の気持ちをわからないのか」という非難が来るだろうけど、それはまた別な話だ。ある時は、溺れている人間を見て我を忘れて飛び込んで自分も死んでしまう。ある時は嬉々としていかに大量の人間を殺せるか知恵を絞る。
原子爆弾の開発なんかその最たるものだろう。そして実際に原爆を落とした兵士の人たち。それとウィルス事件やサリン事件での犯人のひたむきな努力は質的に違うのか。
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むろん目的の正当性は違うだろう。国家の、民族の、利益を守るために人を殺すのと、単に面白そうだから人を殺すのでは、同じ次元の正当性は主張できない。だからそうした犯罪を犯した人の倫理観を論じるのはまったく正しい。
いいたいことは倫理観と、犯罪成功のためのひたむきな努力は、全然別なことであり、冷静に知恵を絞って綿密な犯罪計画を立て実行することと、実行者の倫理観は関連がないという話。
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エンジニアや研究者というのは、日々ある意味「常識との戦い」なのだよね。これまでの常識を覆すのが研究であり、誰もやったことのないことを実現するのが開発。
なので「可能なことはやっていい」「むしろやるべきだ」という発想、いわゆるハッカー文化はエンジニアの一種の職業病としてあるように思う。
以前、セキュリティの研究者(自称)が、不正アクセスで逮捕されてしまう事件があった。セキュリティを研究するということは、どうやったら破れるかを研究することでもある。
セキュリティとかの問題も、「侵入されるならそれは侵入されたほうがマヌケなのだ」という考えはエンジニアの間に根強くあると思う。
実際に不正侵入を行えば犯罪者として逮捕されてしまうのはしかたないが、いかにセキュリティを突破するか?に知恵を絞った思考プロセスまで否定されるべきではないと思う。こういう思考は研究者として大切。実際に実行するかはともかく。
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よくコンピュータ犯罪はネット越しだから直接自分が他人に損害を与えているという認識が希薄だと言われる。ゲーム感覚というか。たしかにそういう面はあるだろうけどミサイルを設計している人が、そのミサイルで人々が怪我を負ってる場面を想像していたら、開発はできないだろう。
銀行に就職した人間が、最初のうちは目の前の札束に圧倒されるが、すぐに目の前の札束と自分の財布に入っているお札は、全然別なものだという認識になり、平然と扱えるようになるという。またこれは何かで読んだ話だから本当かどうか知らないけれど、医者は自分の子供を手術できないという。手術台に載っている物体を同じ人間と思わないからこそ、メスで切れるのであって、ひとたびそれを自分と同じ人間(自分の子供)と認識してしまうと、もうできなくなるのだ、と。
人間は常になにかしら役割を演じている。役割を果たすには「考えない」ことも必要で、それ自体はそんなに特別なことでも異常なことでもないと思う。犯罪が起きた時に、そういう部分に必要以上に着目しても不毛だと思うのだよね。
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犯罪を踏みとどまるのは倫理観であり、それといかに犯罪を成功させるかの研究・開発的な思考の部分は、ごっちゃにして論じるべきではないと思う。
執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年05月26日時点のものです。
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