今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■ブログ飯と潜在的需要(メカAG)
「一昨日のことなんだけど、嫁に「会社を辞めてブログで食べていく」と告げました」 2014年04月16日 『sosukeblog.com』
http://sosukeblog.com/2014/04/16/3636/
俺が「プロブロガー」(笑)に否定的なのは、潜在的需要の上限がかなり低いところにあると思っていること。それまで市場とみなされなかったブルーオーシャンを誰かが開拓し、「これは商売になる!」ということで我も我もと人が殺到する。その状態は市場が飽和するまで続き、その後は過当競争による淘汰が行われ、少数の寡占状態で安定する。これが産業のライフサイクル。
ポイントはどの産業にも潜在的な上限が最初からあり、それを越えては成長しない点。ポピュラーな産業はこの上限が非常に高く、当分到達不可能だから、長く栄えている。たとえば食料供給。小さな島や周囲から隔絶された山奥の村なら、そこで生きていける人口も限られるから、わりと早期に上限に達してしまう。先進国など人口増加が止まった国も同様。しかし地球規模で見ればまだまだ上限は先の話。地球上で飢えがなくなってからのこと。
自動車産業とかも同様。上限に達するまでは作れば作るほど売れる。あるいは頑張って市場開拓すればするほど売れていく。しかし潜在的需要の上限に達してしまった産業はいくら頑張ってもそれ以上規模は大きくならない。
もちろんパラダイムシフトが起きてこれまでとはまったく違ったニーズが生まれれば、またそこからゼロリセットされて伸びていくけどね。家電製品とか次々に新製品を出すのもこれが目的。共産主義の計画経済はこれを見誤ったために、最初の上限に到達して飽和した段階で成長が行き詰まってしまった。一生懸命国を近代化したところまではうまく行ったんだけど、その後どうすればいいかわからなかった。
* * *
以前こんな記事を書いた。
「シンガポールと同じ方法で日本が経済発展できるか?」 2013年08月15日 『メカAG』
http://mechag.asks.jp/599470.html
日本とシンガポールでは経済規模が違うから、同じ方法で国の経済の活性化は無理という話。シンガポールではカジノが経済を支えている。でも日本はシンガポールの20倍の経済規模。じゃあシンガポールの20倍のカジノをたくさん作れば、同じ方法でカジノによって国の経済を支えられるか?という話。
これは無理だろう。カジノの潜在的需要はたぶん20倍はない。潜在的需要を越えていくらカジノを作っても20倍の客は来ない。京都に観光客が来るからといって、同じ観光名所が日本に20箇所あっても、観光客は20倍にはならないだろう。観光のために日本に来る外国人の潜在的な人数は多分現在の何倍も多くはないはず。観光立国を標榜して目一杯頑張っても10倍にはならないだろう。つまりそれ以上観光名所を作っても、客の奪い合いになるだけで、トータルの観光客数は増えない。
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同じことがブログ産業にも言えて、この産業の潜在的需要は現状よりそんなに多くないと俺は思っている。参入者が増えれば過当競争になるだけ。まあ何らかのパラダイムシフトが起きれば別だけど。たとえば機械翻訳がすごく発達して、国境を超えて読者が広がっていくとかね。余談だがやっぱこの点「英語」というが有利なのは否めない。ただそうであっても日本に来る観光客が無限に増えないのと同様に、言語の障壁がないとしても無限には増えないように思う。
んでブログ産業が過当競争に突入するとどうなるか?アフィリエイトの取り分が暴落していく気がする。たぶん10年後、ブログ産業というものが残っていたとしても、取り分は10分の1ぐらいになってるのではなかろうか。仮にそうだとすると「個人商店」的な作成作業でいまの10倍PVを稼ぐのは、いかなプロブロガーでも無理なのではなかろうか。出版社や放送局や映画会社のように大量の、そしてそれなりの質のコンテンツを供給できる仕組みを作るのに成功した企業だけが生き残れる。
ゲーム会社とかむかしは規模が小さいけど面白いゲームを作っている会社がたくさんあったと思うんだよね。でも倒産したり合併したりして、いまは大きな企業しか生き残っていない。近いところではソーシャルゲーム市場があっという間に急成長し、同じくあっという間に崩壊した。さすがにここまで急激だとは予測できなかったが。10年ぐらいは持つかな、と思ってたんだけどね。
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昔からある産業は良くも悪くも市場の規模がわかっている。戦略も立てやすい(驚きがないともいうが)。新しい産業の場合、潜在的な市場がどれくらいあるかを考えることが大事。むろん考えても予想通りになるとは限らない。それが面白くもあるけれど。
インターネット時代になって情報が溢れ、それは広告の価値を相対的に下げる流れになると思うのだよね。口コミなどユーザー間の情報交換が限られていた時代だからこそ、宣伝というものに価値があった。ネット時代になって商品に関する無料の情報が溢れるなかで、金をかけて商品を宣伝することが割に合うか…。
むしろ商品そのものの価値を高める方向に金を使った方が、売り上げにつながるのではないか。金を払って自社の商品に有利な記事を書いてもらっても、そんなものは見破られて不評を買うようになっていくのではなかろうか。ネットは社会を変えていく。それはいま「情強」気取りの人間が想像するものよりも大きい。いっちゃなんだけどそういう人が語る未来ってせいぜい2~3年先だよね。
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逆にネットに散らばっている口コミを、良質なものだけを効率よく集計するようなサービスはこれから主流になっていくだろう。Googleの検索エンジンが世界を支配したように。商品の宣伝は作り手が金をかけてやるものから、「名もなき大衆」が無償でやるものに変わっていくだろう。
価格.comとか食べログとかあるけれど、それってちょうどネットの検索市場が、yahoo検索が全盛の頃に相当すると思うんだよね。yahoo検索というのはむかしは人力だった。優秀なスタッフを揃えてその人たちによってサイトを評価・登録させていた。
その後altavistaなどの単純なパターンマッチングによる機械検索サイトが登場したけれど、そのクオリティは実用とは程遠いものだった。ゴミみたいサイトが何千件もヒットして、よほど検索ワードを適切に絞り込まないと使いものにならない。逆にそこまで検索ワードを絞り込める人は探していることについて相当詳しい人。
そういう状況をご存知Googleが根底から覆し今日の検索市場があるわけだ。主力が人力から機械検索に移った。パラダイムシフトと言っていい。商品の評価・宣伝もいずれ同じことが起きるだろう。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年04月21日時点のものです。
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