■高畑淳子が遺品整理人を、大久保佳代子が結婚詐欺師を熱演!『遺品整理人 谷崎藍子』
テレビの2時間サスペンス(2時間ドラマ)のファンは多く人気は根強いものがある。最近でもスポーツ解説でもお馴染みの作家・佐野正幸氏が『2時間ドラマあるある』(宝島社)を出したほどだ。
2時間サスペンスは「誰がいつ見ても入り込めるように、たくさんの「ベタ」な展開が盛り込まれている」(佐野氏の本より)ため、お約束というべきちょっと変な描写が多く、それがまたファンを楽しませることにもなっている。
そんな中、2ちゃんねるの2時間サスペンス実況民の間で、余りにもぶっとんだ描写から、『日本四大二時間サスペンス傑作』とされる作品があるのをご存知だろうか。
作品は以下の四本。
●「崖(がけ)ワイン」
●「優しい顔のこけし」
●「あの世でも外反母趾(がいはんぼし)」
●「いいことなんてな~んにもなかった」
サザエさんのような名前だが、実はこれは全て実況民(2ちゃんねるの2時間ドラマファン)が付けたアダ名である。
この内の1つ、「いいことなんてな~んにもなかった」こと、『遺品整理人 谷崎藍子2』が製作元のMBS・TBSの動画オンデマンドサイト(http://tod.tbs.co.jp/item/2711/)や、アマゾンのインスタントビデオで公開されている。
『遺品整理人 谷崎藍子』は、薮内広監督兼プロデューサー、清水有生脚本の作品。主演の高畑淳子は企画段階から携わった。単なるネタドラマではなく、しっかりした筋書きで業界筋での評価も高い。
2010年には民放連のドラマ優秀賞を受賞している。
実況民から「ホンジュラス」として親しまれている高畑淳子演じる遺品整理会社社員・谷崎藍子が、殺人被害者の遺品を整理するうちにミステリーを解いていく。「いいことなんてな~んにもなかった」は、このドラマの2作目。
お笑いコンビ・オアシズの大久保佳代子演じる結婚詐欺師・藤原美咲と、美咲の彼氏が、無理心中を装って殺害される。美咲たちの遺品整理を依頼された高畑淳子たちが被害者の謎と真犯人を解いていくストーリーだ。
●演技派俳優たちのマジ演技!「鬱ドラマ」の名作。
実況民から「鬱ドラマ」と言われるほどに重い内容で、予告編は同サイトで無料で公開されている。公開中の予告編を見るだけでも、鬱さ加減はよく分かるだろう。以下に内容を文字起こししてみる。迫力がなかなか伝わりづらいので、是非映像を見てほしい。
http://tod.tbs.co.jp/item/2711/
悲しい音楽。大雪の「明日萌駅」から降りてくる、主役・矢崎藍子(演:高畑淳子)。ザンバラ髪で思いつめた表情。殺された藤原美咲(演:大久保佳代子)の遺品を悲痛に凝視する高畑刑事の矢崎滋の衝撃告白
「自己責任じゃないですかッ!!」と絶叫する男性
生前の美咲(演:大久保佳代子)が彼氏と楽しそうにしているシーンに、「やっぱり結婚詐欺だったんですね!」「そうよ!」という捜査陣の発言がかぶる
遺品に真剣な表情で合掌する高畑淳子
顔をひきつらせた真犯人・森尾由美の絶叫、それを一喝する高畑淳子
主演の高畑淳子はベテランの演技派女優で、豪快なおばさんの役には定評がある。
マイナビニュースのインタビュー(http://news.mynavi.jp/news/2011/04/15/075/)では、この役に掛ける意気込みを、
「長寿の時代になりましたけど、今は"終いじたく"とか"エンディングノート"とか、自分が死ぬ準備にみなさんの目が向いている。生前、言葉ではわかり合えなかった人と人とを、遺された物で繋いでいく谷崎藍子という役にとても惚れ込んでいます」「サスペンス仕立てのドラマなんだけど現代を映してる。人が感じている寂しさや都会の孤独、ひとりで死んでいく人の思いが胸にグイグイと入っていく中身の濃い作品になっていると思います」」
と語った。
2ちゃんねるのアダ名「ホンジュラス」も、かつて大河ドラマ・「篤姫」で演じた役・本寿院(ほんじゅいん)と「火を噴く怪獣ホンジュラス」とをもじったものだ。相当な覚悟がいる遺品整理人にはピッタリ。
殺される結婚詐欺師を演じた大久保佳代子もはまり役といえるだろう。大久保も同じインタビューで、演技にかける意気込みを語っている。
「結婚詐欺師は、ずっとやってみたいと思ってた職業でした。でも、生い立ちから恵まれず、ついに詐欺をやってしまう不幸な女性。私自身はそんなふうにはまったく思ってないんですけど……私からから自然ににじみ出てるという幸薄い感じですか?(笑)それでドキュメンタリーのように見せられればと思ってます」
●あまりの話の欝さ加減に、2サス実況民の間では伝説になっている
放映直後から、その強烈な描写に感動したファンが、公式掲示板(http://cgi.mbs.jp/fixf/bbs_log/ihinseiri2.html)に声を投稿した。
「特に大久保さんは演技がうまくて、切なくなりました。大久保さんの切ない役の演技をもっとみたいとおもうくらいでした。」「ドラマとして、近来まれに見る秀作だと感じました。
出演者の方それぞれ、真剣に取り組んでいらっしゃるのが
わかります。大久保さんは、思いがけず、悲しい運命を
背負った女性の役を上手にこなされていて、驚きました。」
2ちゃんねる実況民でも、
「実況民みんなが驚く名作」「先週再放送していた大久保さん出演の第2作目(この作品)は泣いたな」
と、感動の声が広がるとともに、「実況板のガイドライン」で毎回スレの先頭に名作として書かれるようになったのである。
この作品は、構成も秀逸であり、見て損はないと思う。
●崖で自白中の犯人が突然苦しみだす!西村京太郎全集未収作品「崖ワイン」
さて、『日本四大2サス傑作』の他の三作についても触れておこう。
他の作品は動画配信・DVD化ともされていない。3作は全てテレビ朝日系の2時間サスペンス「土曜ワイド劇場」である。
まず、「崖ワイン」は、西村京太郎トラベルミステリー『山形新幹線 つばさ111号の殺人!』のことである。この作品は、2010年2月6日に放映された。
西村京太郎トラベルミステリーは現在DVD全集が刊行中だが、なんと、「崖ワイン」(「山形新幹線 つばさ111号の殺人!」)は全集に収録されていないようだ。これは、全集がTBS系放映分のみの収録となっている為で、他の放送局の西村作品は未だソフト化されていない。ファンの間では再放送を望む声がある。
http://www.tv-asahi.co.jp/dwide/contents/nextweek/0083/
2ちゃんねるのドラマ解説では、下記のようになっている。
ドラマ内で犯人が事件関係者を崖の上へおびき寄せワインを飲ませようとする。 しかし十津川警部に事件の真相を見破られ例のごとくあっさり自供してしまう。 その後突然苦しみだす犯人。 理由は関係者達にワインが安全である事を示す為に自分も毒入りワインを飲んでいたため。 崖の上でワイン→自供→悶絶→救急車→エンディングとあまりにもカオスな状況に十津川警部も実況民も大混乱。 最も斬新な崖の使用法として実況民の心に深く印象付けられ、 サスペンスで崖が映ると「崖ワインを越えるラストシーンを見せてくれ」と書き込まれるようになった。
●こけし大量出現ドラマ!「優しい顔のこけしに気をつけて」実況民「254回もこけしが出てきた…もう数え切れない…」
「優しい顔のこけしに気をつけて」(略して「こけし」)とは、土曜ワイド劇場 『新聞記者・鶴巻吾郎4』のことである。2010年11月13日放送で、主演は村上弘明演じる新聞記者。
2ちゃんねるのドラマ解説では、下記のようになっている。
被害者のダイイングメッセージが「優しい顔のこけしに気をつけて」という謎の言葉。こけしに顔が似ていたから。犯人の子供の頃のあだ名がこけし。こけしと思ったらこけし型の箸立て。箸立ての中に覚醒剤。こけしこけしこけしこけしry。とにかくこけし。怒涛のこけしラッシュに実況民も大興奮
実況民の間では、「スレ住民が実況中に254回までは数えたが、余りの多さに途中でカウントを断念した」という伝説さえも生まれた。後にブログに書いた人は106回だったともいうが、とにかくたくさんのこけしが出てきた話だったようである。
●「あの世でも外反母趾」 男性犯人「男先生を苦しめる女子どもは、あの世でも外反母趾で苦しめばいいんです!」と絶叫
「あの世でも外反母趾(がいはんぼし)」は、「おとり捜査官北見志穂シリーズ」の、2011年4月9日放送『口をふさがれた美女連続殺人』 のこと。
2ちゃんねるのドラマ解説では、下記のようになっている。
終盤(犯人から)明かされた真相は、「自分(男)が心酔する医師(男性)のために、クレーマーをかたっぱしから殺した」というもの。犯人が心酔していた医師は外反母趾サポーターを開発していたためか、受けるクレームも外反母趾関連。
そこから、「先生を苦しめる女は、あの世でも外反母趾で苦しめばいいんです!」と逆切れ。 そのセリフのインパクト、直後に犯人確保、確保されてもなお「先生は俺が守るんだー!」と叫ぶ犯人、流れる主題歌・森山直太朗『花鳥風月』など、 そのあまりの画面のシュールさにスレはアッー!一色になった。
森山直太朗『花鳥風月』は日本情緒を盛り込んだ西条八十風の穏やかな曲なので、このぶっとんだ展開とは全く合わない。
普通、2時間ドラマは事件解決後に、視聴者の緊張をほぐすためにちょっとしたコントや、平穏を取り戻した下町の情景が流れる。そこに流れるのが統一主題歌『花鳥風月』だったのだ。
ところが、『あの世でも外反母趾』では、どうみても不穏なシーンで主題歌が流れてしまい、実況民も驚く事態となったのである。
これからも、2時間ドラマはどんな話で我々を驚かせてくれるのであろうか。これらの作品はBS放送などでちょくちょく再放送されている。新聞やテレビ番組雑誌の番組欄で紹介されることもあまりないが、見ておいて損はない作品ばかり。いろいろな意味で。
(画像はTBSオンデマンドホームページより http://tod.tbs.co.jp/item/2711/ )
※この記事はガジェ通ウェブライターの「松平東龍」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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