今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
■新・幸福の杖(4) 子供を幸福にするのは 女?男? その1(中部大学教授 武田邦彦)
最近の男女関係の議論を見ると、「女と男」のことばかりに関心があつまり「子供にとって母と父はどうあるべきか」という子供からの視点が少ないように思う。また、子供を産むのが女性であることは否定しないのに、その他のことはすべて男女が同じことをするのが子供のためになるということも言われ、私には違和感がある。
人生には二つの目的がある。一つは自分自身の人生、二つ目は次世代を作るための人生だ。一般的な生物では、一つ目の自分自身の人生はほとんど意味を持っていないように見える。だからもしかすると、自分自身の人生というのは「幻」なのかもしれない。
また、「自分」と「集団」というのも区別が難しい。人間のように「集団性の強い動物」の場合は、「集団の次世代」のために「自分」の命を捨てることすらできる。たとえば独身男性が志願して出征し、突撃して死ぬというのも人間の集団性の一つで、古代から普通にみられる現象である。
これらの一つ一つはまた別の機会に譲ることにして、ここでは、1)人間は集団として自分自身のために生きることはできない。2)集団として次世代を作ることに幸福を感じる。として話を進めることにしたい。
女性が子供を産むようになっているのは、それなりに意味がある。これはたとえば一夫一妻制が厳密に守られ、離婚のないオオカミの一生を見ると良く分かる(オオカミがそのまま人間に当てはまると言っているのではなく、オオカミの一生は物を考える時の参考になるという意味)。
オオカミのメスは子供を産んで育てる。オスは約10キロ四方の縄張りを守る。敵が来るとメスは子供とともに穴倉に逃げ、オスは敵と戦って縄張りを守る。なぜ、オスが縄張りを守る必要があるかというと、生活するのに必要な面積が決まっているからでもあるが、子供が大きくなったとき、その縄張りを譲る必要もあるからだ。
これを人間に当てはめると(最終的に当てはめるわけではなく、考える順序として)、女性が子供を産んで18歳まで育て、男が土地、職業、環境を整えておいて、子供が18歳になったら、土地を耕したり、仕事についたり、核廃棄物で被曝しないようにするという分担をしている。
ここで一つ考えなければならないのは、現在の日本は、男性が現在の仕事(自分が生きる)に熱心で、子供のための土地、職業、環境を整えることをあまりしていない。現在の仕事をした後の時間は、「子育てや家庭サービス」をしているので、18歳以後の子どもの人生を守るためのことをほとんどの人がしていないことに気付く。「集団としての親」は次世代の幸福を考えていないように見える。
かつて男性が兵役(25歳までに女性が2人の子どもを産むのに相当する1年半から2年の兵役)と戦争で死ぬ(50歳までに子供のために土地を確保する)ことをしていたが、現在ではその役割を果たす人が少なくなっている。
このことが子供(日本の将来)にどのような影響をもたらすか、幸福に向かっているのか、考える必要がある。また「子供の幸福」に全力を注がない人生で「幸福」が得られるのか、今の不幸の原因の多くが「子供の幸福」を考えないことによるのではないか、それをさらに整理していきたい。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年02月17日時点のものです。
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