2014年1月1日に発行された仮想通貨『モナーコイン』(Monacoin)が、オタククラスタの間でじわじわと浸透しつつある。
●仮想通貨『モナーコイン』とは?
『モナーコイン』は、『2ちゃんねる』の『ソフトウェア板』と『ニュー速(VIP)板』のユーザーが中心となって開発した仮想通貨だ。名称の由来は『2ちゃんねる』初期に人気だったアスキーアートキャラの“モナー”。有志が作成したコインのイラストにもモナーがあしらわれ、なかなか愛らしいデザインとなっている。
先行するビットコインなどと同じP2P技術を利用した暗号通貨で、これまでに“採掘”されたコインの流通総額はおよそ1200万円。1モナーコイン(MONA)あたりの価値は、発行直後は2.5円ほどしかなかったものが、今では4.5~5.0円前後まで上昇している。既にビットコインなど他の仮想通貨との取引所も作られ、ややこしい手順を踏めば現金(円やドル)との交換が可能な仕組みもできあがっている。
『モナーコイン』には特定の“管理者”は存在しない。もちろん最初にプログラムを書いた人物は存在するが、彼の意向でコインを発行できるわけではなく、価値は『モナーコイン』の利用者全員で担保する。導入手続きをわかりやすく解説したサイトや取引所はあるものの、それらはすべて有志(ヒマ人)が自腹でサーバーを立て、寄付される『モナーコイン』がモチベーションの支えとなって運営されている。
一部では「2ちゃんねる運営の金儲け」「ひろゆきが関わっている」などと言われているようだが、『ソフトウェア板』でプロジェクト当初からの動きを追ってみると、海外大手掲示板発祥のネタコイン『Dogecoin』に触発された2ちゃんねらが、「俺たちもネタコイン作ろうぜ!」と言い出したことが発端となっているようだ。横のつながりを持たない匿名の「名無しさん」たちが、単なる数学的興味とプログラミング実践のために始めた“祭り”にすぎないのだ。
●まずはネタコインとして利用されている『モナーコイン』
仮想通貨というからには何がしかの物やサービスを購入することができるわけだが、では、『モナーコイン』は一体どこで使われているのだろうか。
現在のところ『モナーコイン』は、某大手オークションサイトを模した『モナオク!』と、『ニュー速(VIP)板』の関連スレッドにおいて、目に見える形で活発に流通している。
『モナオク!』にはAmazonギフト券などの金券、中古ハードディスク、中古ゲームソフトなどの出品があり、多い日には2~3万円相当のオークションが成立している。
ネタコインとしての本分を果たすべく「ネタ」カテゴリも設けられていて、ここでは「FPSで俺と遊ぶ権利:40モナ」「1週間の神社参拝代行:7モナ」「私にmonacoinを送る権利:5モナ」といったふざけた出品でいっぱいだ。また、『2ちゃんねる』の「絵を描いてうpしたらmonacoinがもらえるかもしれないスレ」では、大喜利のようなやり取りが行われていたり、『モナーコイン』を賞金にしたゲーム大会なども開催されている。その他、ニコ生主や『pixiv』の利用者にも『モナーコイン』の利用者が現れ始めた。匿名性が高く、ほんのわずかの手数料で素早く決済できることから、ネットコンテンツ全般に対する「おひねり」「投げ銭」として定着することが期待されている。
一方、『モナーコイン』を投機対象として見ている者も少なからず存在するようだ。ご存知のように、『ビットコイン』は発行当初の価格から10万倍以上の価格にまで高騰した。仮想通貨バブルよ再び、である。ただ、『モナーコイン』の場合は、発行上限が『ビットコイン』の8倍もあることと、“採掘者”以外の外国人の参加を拒む空気があることから、すぐにその価値が10倍20倍と跳ね上がるような事態が起こるとは考えにくい。
●仮想通貨入門としてのモナーコイン
今現在、率先して『モナーコイン』関連のサービスを開発・提供している先駆者たちは、(たぶん)ほぼ全員が日本人だ。
『モナーコイン』のポータルサイト『Start-MonaCoin スタートモナーコイン』では、暗号通貨の基礎知識から、“ウォレット”(銀行口座)開設、“採掘所”でコインを“採掘”する仕組みまで、暗号通貨を利用するに当たって理解が必要な一連の流れを懇切丁寧に日本語で解説してくれている。“採掘所”と『モナトレ!』では、開始早々海外からのハッキングおよび詐欺未遂事件が発生したが、管理人の注意喚起対応は素早かった。開発者の集まるコミュニティでは、“大モナ持ち”が自ら積極的に“投資”を呼びかけ、現実の通貨とリンクした“投機”をよしとしない空気が醸成されている。未知の原野で人の優しさに触れた新米の感傷にすぎないかもしれないが、『モナーコイン』は日本人的な性善説に支えられていることを実感する。やはり日本人は信用できるのだ。
暗号通貨について世間一般では未だに、過去に大規模な詐欺事件を引き起こしてきた「擬似通貨」や、各社が独自に発行している「電子マネー」と同じようなもの、という程度の理解しか得られていない。だが、自分がオタククラスタに入り浸っているせいもあるのかもしれないが、暗号通貨という概念の理解者は、実は既に臨界点を超えていて、今後もある種の経済的価値を持った“貨幣”として使われ続けていくのではないかと筆者は考え始めている。
仮想通貨後進国である日本のインターネットユーザーが、仮想通貨が価値を持つに至る過程を追体験し、そして、もしかしたらバブルの果実にもありつけるかもしれない――そんな壮大な社会実験に参加する機会を『モナーコイン』は提供してくれている。
画像:モナーコインウォレット起動画面と『Dogecoin』
モナーコインプロジェクト[リンク]
Start-MonaCoin スタートモナーコイン[リンク]
※この記事はガジェ通ウェブライターの「ろくす」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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