川崎市の横浜地検川崎支部から逃走した無職の杉本裕太容疑者(20)が昨日逮捕された。読売新聞の本日付の報道によると、「川崎市多摩区の友人宅に潜伏していたほか、車で移動していた。携帯電話も借りていた」という。この友人は罪になるのか。
■逃走に手を貸したらー犯人蔵匿隠避罪。弁護士事務所「真犯人でなくても犯人蔵匿罪が成立します」
刑法上、友人の行為は犯人蔵匿(ぞうとく)罪か犯人隠避(いんぴ)罪になる可能性がある。刑事弁護に詳しい東京弁護士法律事務所の公式サイトのQ&A">東京弁護士法律事務所の公式サイトには、
Q.「指名手配中の犯人を匿いましたが、裁判で真犯人でないことが判明した場合には、犯人蔵匿罪にはなりませんか?犯人蔵匿罪は「罪を犯した者」が対象なので、真犯人でなければ該当しないのではないでしょうか?A.「真犯人でなくても犯人蔵匿罪が成立します。判例によると、「罪を犯した者」には、真犯人だけでなく、犯罪の嫌疑を受けて、捜査または訴追されている者も含まれます。(最判昭24.8.9)
指名手配中の犯人を匿った場合には、結果論として犯人でなかった場合であっても、捜査の妨害をしたことには変わりありません。」
http://taiho-bengo.com/information/qa_zaimei/qa5/qa5_4/index.html
と述べている。
刑法にはこうある。
『(犯人蔵匿等)第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する』
なお、蔵匿(ぞうとく)・隠避(いんぴ)とは、
「蔵匿」とは、捜査機関等からの発見・逮捕を免れる場所を提供することです。「隠避」とは、蔵匿以外の方法で捜査機関からの発見・逮捕を免れさせる一切の行為です。」(同事務所)
だという。
■容疑者は犯人蔵匿隠避罪の教唆罪の可能性も
さて、逃亡した犯人はどのような罪に問われるのであろうか。今回の場合、逃亡罪は適用しにくい。産経新聞は下記のように伝えている。
杉本容疑者が逃走した7日午後2時16分の時点で、検察は警察から身柄の送致を受けたばかりで、勾留を裁判所に求める手続きを完了していなかった。逃走罪が適用されるのは、勾留中の容疑者や被告、もしくは刑が確定して服役中の受刑者が身柄が置かれている施設から逃走した場合だ。平成24年1月に広島刑務所から逃亡した中国籍の受刑者には、同罪が適用された。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140109/crm14010920490019-n1.htm
こうした状況から、逃走容疑での現行犯逮捕はできない上、1度目の逮捕状は執行されて効力を失っていることから、捜査当局は集団強姦容疑などでの逮捕状を再取得し、杉本容疑者の行方を捜していた。
しかし、今回のケースでは杉本容疑者が友人に「助けてくれ」と頼んで友人と一緒に逃亡しており(同紙)、犯人蔵匿の教唆(きょうさ)罪、つまり犯罪をそそのかした罪に問われる可能性が出てきた。日本経済新聞では、
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者の逮捕を妨げると犯人隠避罪が適用される。友人らが逃走を手助けしたのであれば罪に問われ、杉本容疑者は犯人隠避の教唆罪となる可能性がある。
と伝えている。
尚、この「犯人蔵匿隠避罪」が無罪になるケースもある。容疑者の親族がかくまったり、逃したりした場合には、無罪になるのだ。
刑法第百五条(親族による犯罪に関する特例)
前二条の罪(注:犯人蔵匿隠避罪・証拠隠滅罪)については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
いずれにせよ、逮捕された場合、たとえ無実でも逃亡するのは罪が重くなり良い選択ではない。友人の中には警察に協力して自首を勧めた人もいたようだが、逃走を助けると罪になるということは、覚えておきたいものだ。
※画像は容疑者が逃走した横浜地検公式ページ
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