ジャケ写

6月に公開され、誰も観た事の無いストーリーと映像が話題を呼んだ映画『リアル ~完全なる首長竜の日~』。佐藤健演じる浩一市が、自殺未遂で昏睡状態に陥った恋人・淳美(綾瀬はるか)を目覚めさせる為に「センシング」という最新医療に挑む事から物語ははじまります。「センシング」とは、他人に意識の中に入り込み、その人物の感情や意思を感じ取るというもの。センシングを繰り返すうちに、浩一市は幻覚を見るようになり……。

第9回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した小説『完全なる首長竜の日』を原作に、本作のメガホンをとったのは黒沢清監督。『回路』『LOFT ロフト』などのホラー作品から、『トウキョウソナタ』『アカルイミライ』など、都会的でシニカルなドラマを描くことで熱狂的なファンを持つ映画監督です。今回は、12月18日の『リアル ~完全なる首長竜の日~』DVD&Blu-ray発売の前に黒沢監督にインタビューを敢行。作品への想いなどを伺いました。

黒沢清監督

――正直最初は「首長竜?」とどんな作品が想像が出来なかったんです。けれど、作品を拝見して、予想外のストーリーに黒沢監督らしいホラー演出が冴えまくっていて、かなり驚かされました。監督は最初に原作読んだ時にどんな感想を抱きましたか?

黒沢:読み物としてはとても面白く複雑で、文学の香り高いものでした。その分「これどうやって映像にすればいいんだろう」と難しく感じて。でも、誰が作っても同じ様な作品になってしまいそうな原作よりもやりがいはあるなと思いました。

――綾瀬さん演じる淳美の意識の乱れから部屋がガラリと変わったりとか、映像的な工夫もかなりありました。

黒沢:この作品は人の意識の中を描いた作品ですよね。そういった作品はいくつかあったし、最近でいうと『マトリックス』とか『インセプション』とか。観る分には楽しいんですけど、自分がついにそういった題材をやるはめになったかと緊張しました。一瞬にして風景がガラリと変わってしまうとか、ハッと気付いたら何かが消えてしまっているとか、実際に起こったら大変なことですよね。でもそれがいとも簡単に出来てしまうのが映画だと思うんですね。カットが変われば何だって簡単に変わってしまう。だから、逆に映像表現としては簡単に出来てしまう分、どうすれば観客が混乱しつつも納得してストーリーの先に行ってくれるのか、試行錯誤の連続でした。

――観ていると「この後どうなっちゃうの?」という不安はもちろん、映画全体に流れている不穏な空気が独特でしたね。

黒沢:少しずつ少しずつ“これ変だな”って感じてもらえる様な、毎シーン毎シーンに必ず違和感を入れていっていたので。やり過ぎると本当のホラー映画みたいになっちゃうし、微妙なさじ加減でしたね。自分としては、ちょっとした薄気味悪さを演出したつもりではあるんですけど、もしかして慣れていない方からすると本格的に怖いのかもしれない……。

――監督のファンとしては、大興奮だったと思います!

黒沢:そうだと良いんですけどね。そんなに怖くしたつもりはないんだけど(笑)。原作に“フィロソフィカル・ゾンビ”というのが出てくるので、どう見せるか考えました。でも、俳優の皆さんも嫌がりもせずに変なメイクしたり、変な動きしてくれたので有り難かったですね。

この物語には重大な驚きがあるわけですが、そのシーンも映像で簡単に観せることは出来るわけです。その大きな転換点だけは、時間をかけて丁寧に誰にでも分かる様に作りました。とはいっても、『マトリックス』や『インセプション』を観た事が無いお客さん、そんな映画のカタチがあるんだって知らない方が観たら何が何だかさっぱり分からないかもしれないし……。そのへんは、仕方の無いことですが不安に思ったりはしました。

――精神世界を描いた作品故に、勉強されたことや参考にした資料はありますか?

黒沢:1個とても参考にした本は「昏睡状態の人とどうやってコミュニケーションをとるのか?」という研究を記した本ですね。これはとても面白かったです。人間は昏睡状態であったとしても、意思はあるんですね。映画の中で中谷美紀さんが演じている役はこの本や、実際の医療現場を見学してもらって、作りました。「コーマワーク」という治療法も実際の医療現場で使われている方法なんですよ。

――その様な相手の判断にゆだねる、良い意味で分かりやすくないテイストのお話を、ここまでの大規模で公開するという事自体が素敵ですよね。

黒沢:そうですね、日本映画としてもちゃんとこうした企画が成立するんだっていうのは嬉しかったし、それを示せただけでもとても満足している。こうしたマニアックな映画を大規模公開出来るというのは、日本映画がまだ健全な証拠かなと。分かりやすいエンターテイメント作品があってももちろん良いんだけど、選択肢があるのは必要かなと。

――佐藤さん、綾瀬さんとのお仕事はいかがでしたか?

黒沢:佐藤さんは、役柄が怯えたり感情が揺れる役なので、かなり苦労はしたと思います。それでも全力で頑張ってくれましたね。そして綾瀬さん。噂には聞いていましたけど、彼女は奇跡の様な人でしたね。決して楽な役では無いのに全く動じない。いつもニコニコしていて、何を言っても「はい!」ってすぐに言ってくれて、現場がかなり癒される。それでいて、どっしり落ち着いている。2人は本当に好対照でしたね。その2人の違いが役柄にもピッタリはまっていたと思います。

――映画の結末や、2人の熱演ぶりなど、DVDやBlu-rayで何度か見直すと、謎解きと答え合わせが楽しめそうですね。今日はどうもありがとうございました。

リアル_メイン1

『リアル ~完全なる首長竜の日~』Blu-ray&DVD発売中
スタンダード・エディション<1枚組> 
DVD:3,027円(税込) Blu-ray:3,990円(税込)
発売元:TBS/アミューズソフト 販売元:アミューズソフト

http://www.real-kubinagaryu.jp

(C)2013「リアル~完全なる首長竜の日~」製作委員会

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