お酒を飲むのは楽しいですが、失敗した経験がある人も多いはず。ひどい悪酔い・二日酔いだけでなく、中には鉄道の駅で暴力行為を働いてしまったり、急性アルコール中毒などで死亡してしまう事件も起きてしまっています。そんな現状を踏まえて、お酒デビューして間もない学生を対象としたセミナー『大学生のためのお酒NAVI』が2013年11月28日に東京大学中島董一郎記念ホールで開かれ、アルコールと身体に関する科学的な知識や、上手に飲むためのマナーなどを学ぶプログラムが実施されました。
●適度なアルコールは健康にいいけれど…
まず登壇したのは科学・教育関連のサービスを展開しているリバネスの孟芊芊さん。「誰かにちょっと話したくなるお酒の話」としてビール・ワイン・日本酒・紹興酒などの醸造酒と、ウイスキー・焼酎などの蒸溜酒の違いや、発酵のメカニズム、酵母の種類などを解説しました。
さらに、JR西日本や都営地下鉄の駅などで使われ、年間4万袋を販売している嘔吐物緊急処理剤『ノンゲーロ』を持ち出し、実際に効果を確かめる実験をすることに。
男性助手が用意したパットには、ゼリー状のものが入っており、一つには『ノンゲーロ』を投入。もう一つには水分吸収効果がある米ぬかを入れます。普段はあまり見る機会がないということもあり、参加者は興味津々でテーブルを囲みます。
水分が抜けず流動体のまま浮いてしまっている米ぬかに対して、『ノンゲーロ』はすぐに固体化。その威力には驚きの声が上がりました。
各鉄道駅の係員に話を聞いたという孟さんは「駅員に対する暴力行為がここ数年増えていて、その8割はお酒を飲んでいました」と話し「中には介抱しようとして殴られたという理不尽な事件もあります」と事例を紹介しました。
孟さんは大学生の急性アルコール中毒などによる死亡事故が2000年から2013年の間に20数件発生していることに警鐘を鳴らす一方で、「少量の飲酒は、飲まない場合よりも死亡率が低い」という研究をグラフ入りで示し、一部の病気には適度なアルコール摂取が有効に作用すると述べます。その上で「自分がきちん飲める量をしっかり知ることがとても大事」と強調しました。
●アルコールを分解するアミノ酸"アラニン・グルタミン"
「悪酔い・二日酔いを上手に回避する方法について」と題してアミノ酸の効能についてレクチャーをしたのは、『アミノバイタル』『ノ・ミカタ』などを発売している味の素の片山美和さん。
ヒトの身体を20%を構成するタンパク質は、20種類のアミノ酸があり、皮膚・筋肉・骨・臓器・血液・ホルモンなどを構成。中でもグルタミンは免疫強化や消化管粘膜保護作用があり、スポーツサプリメントや健康食品に使用され、同様にアラニンはアルコール分解促進や皮膚の保湿、コラーゲン成分の摂取に使われるなど、様々な商品に応用されているとします。
「もともと肉や魚、卵、豆などを食べることにより、人類はタンパク質を摂取してきました」という片山さん。タンパク質を取ればアミノ酸も充分に摂取できるように思いがちですが、「お酒を飲んだり運動をしたりしてカラダに負担がかかっている時には、特定のアミノ酸の補給するのが効果的」といい、目的に応じたアミノ酸を摂ることで、タンパク質だけでは得られない効果があると話します。
実際、健常成人10人に、血液100ml中のエタノール量がワイン1本分の相当する90mg以上になるよう飲酒した際、血液中濃度が減少したアミノ酸を分析したところ、アラニンが30%も減少したという結果になり、アルコールを摂ると不足する可能性が高いことが示されました。
「お酒を飲むことは悪いことではなく、脳卒中や心不全の死亡リスクが減り、ストレスの軽減や善玉コレステロールの増加、虚血性心疾患の予防効果があります」(片山さん)
とはいえ、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドにより、肝臓の機能低下や口臭などの不快感や健康障害の原因になることも事実。そのための対策として、摂取してすぐに吸収されるアミノ酸、特にアルコール分解を促進させるアラニン・グルタミンが効果的という研究データを味の素では蓄積してきたとのこと。
興味深いのは、味の素の男性社員・役員26名が参加した効果実験。白ワインを体重kgあたり4ml飲酒した後、アラニン・グルタミン混合物、ウコン加工品、プラセボのいずれかを摂取。飲酒前から飲酒後の3時間に呼気中アルコール濃度を測定したところ、アラニン・グルタミン群が他と比較してより速く濃度が低下した結果になったとのこと。
「飲酒後2時間でアルコール消失が速まるので、そのタイミングでアミノ酸を摂るのが効果的」という片山さん。お酒を飲む前と中締めの前後、飲んだ後の就寝前に摂ることを推奨します。また、ナッツやチーズ、そら豆といったお酒のおつまみは、アラニン・グルタミンが多く含まれているとのこと。
一方、肝臓医に教えられたこととして、お酒を飲んだ時に「水をたくさん飲む」「汗をかく。サウナに入る」「事前に牛乳やチーズを摂る」「ご飯は食べない」「帰りにラーメンを食べる」といったことが効果的とするのは「都市伝説」とばっさり否定。特にサウナは、脱水が助長されて死につながるので「絶対にやめた方がいい」と呼びかけました。
●アルコールパッチテストでお酒の強さを把握!
二日酔いや悪酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解するALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素)。これが体内に多ければ「お酒に強い」ということになりますが、白人や黒人と比べて日本人を含めたモンゴロイドは遺伝子的に出現率が少ないということが分かっています。
セミナーでは、ALHD2の活性タイプを知るためのアルコールパッチテストが参加者に配られました。約20分腕に貼ることにより、パッチが赤く変化するとALHD2不活性型で「ぜんぜん飲めない人」となり、薄く赤いとALDH2ヘテロ型で「ほんとは飲めない人」、それほど変化がないとALDH2活性型で「飲み過ぎ注意な人」だと簡単に把握することができます。
ちなみに日本人の場合、不活性型は10%でヘテロ型が34%、活性型が56%という数字に。10人に1人は下戸の可能性が高いということになります。
筆者が貼ってみるとALDH2活性型に。お酒いくら飲んでも平気!? やったー!!
喜ぶ筆者に「まったく出ないからといって、強いのでいくら飲んでもいいということではない」と釘を差す孟さん。ですよね…。
孟さんは「男性は中ビール一本分、女性だと肝機能が低いので男性の半分と言われていますが、あくまで目安。自分の酒量を把握してコントロールできるのがモテるオトナだと思います」と話し、悪酔いや二日酔いをしないように飲み過ぎない、ということを強調。「飲めない時は飲めないとはっきり言うことが大事。水やノンアルコール飲料を頼んだり、お酌をしてまわる、早めに酔ったふりをすることも必要」といい、処世術を身につけることがスマートだと話しました。
「アルコールに関する知識や飲み過ぎないためのコツを身につけながら楽しく飲んでほしい」とセミナーを締めくくった孟さん。飲む前に小腹を満たしたり、飲む際にもペースを守ったりおつまみでアラニン・グルタミンを摂り、飲んだ後も水分をしっかりと補給などをすることが二日酔い対策になり、周囲への迷惑や不幸な事故を防ぐことにもつながります。
もちろん、アミノ酸サプリメントを意識して摂ることも効果的ですが、まずは自分の酒量を知るということが必須。「ついつい飲み過ぎてしまう」という人は、体質にあったお酒のつきあい方を見なおしてみてはいかがでしょうか。
味の素KK アミノ酸大百科
http://www.ajinomoto.com/jp/features/amino/
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