今回は、『はてな匿名ダイアリー』から転載させていただきました。
■ブラック部活―児童虐待と化している部活動
もはや部活動は児童虐待となっている。特に高等学校の部活動は、その傾向が著しく、実際のところ一時期よりはマシになっているのだが、現在も状況は続いている。
この児童虐待というのは体罰やいじめといった暴力事件の問題ではない。単純に現在の部活動は、その運用自体が虐待になっている。
●異常な拘束時間
一般の高校の場合、生徒は通常1日に6時間の授業を行うことになる。間に休憩時間を挟むがショートホームルームや掃除などを加えれば6時間程度になる。
そこに2時間も部活動をすれば8時間となり、これを5日間で労働者ならば法で定められる週40時間の労働に相当する。
大体朝の練習30分、放課後1時間30分も練習すれば丁度良い按配であり、その範囲内に留まる部活動も多い。
しかし大会で実績を残すような運動系の部活動では授業をあわせて8時間をゆうに超える活動が求められている。
相談に来る生徒の中には朝1時間半、放課に4時間、通学は自転車通学を部内規則とするため、学校から遠い家に帰るのは11時ごろという者もいた。
土日も午前午後の練習か公式or練習試合があり、1日の休暇もない部活動の相談もある。
企業ならば松崎茂と並べても完全にブラックといわれるような状況だ。だからこそ、運動部の経験がある人間はブラック企業に重宝される。
●建前と現実
このような部活動の異常な活動時間が許されているのには一つの理由がある。
教育基本法など各種教育の法律には部活動を規定する法律の条文がほぼ存在しておらず、部活動は要約すれば『生徒が自主的な活動として課外活動をすることを援助し、教員が行動を監督しなくてはならない』といった趣旨のことが書いてあるだけだ。
つまり、部活動は本来「生徒の趣味」として行われているだけで、その援助をするため学校は場所を与え教員は事故や犯罪などのないように監督(指導ではない)するようにされている、ということである。
これは野球の甲子園などで確認できる。監督は審判に抗議してはならず生徒が行わなくてはならない、なぜなら生徒の自主的な活動だから。(どれだけ事実と馬鹿馬鹿しくかけ離れていてもだ。)
生徒の趣味であるのだから、どれだけ活動しようが学校による虐待に当たるはずもなく、教員も指導ではないのだから、そこに仕事としての給与や指導における特別手当が発生することは殆どない。(土日などの手当てはスズメが悔し泣きする位には出る。)
確かに部活動は完全に自由に選択でき所属非所属を選べる学校もある。だが当たり前のように部活動への所属が強制される学校も少なくはない。
部活動は指導の場ではないはずだが、部活動(特に運動部)を通して指導を行うことが期待されている現状は揺るがしがたく存在している。
部活動は教師の完全な指導と強制の下に行われ、自主的な活動が認められていない部も多くあり、退部すら許されず不登校になる生徒もいる。
●部活成果の不均衡
部活動が生徒の趣味であり、教員は指導をするわけではないという建前があるからこそ、部活動は学校ごとに大きな不均衡をもたらす。(それが学校に利益をもたらすことにもなるが。)
まずもって問題なのは、教員には部活動を経営する教育は一切与えられていないということだ。
教員免許に部活動に関する必修講義は存在していないし、教員採用試験にも存在はしない。
現実の部活動においては教員が生徒を技術指導することが求められているが、その技術指導する教員が適切なスポーツ知識を持っているという前提はない。
そのため、公立高校ですらも部活動においては顧問となった教員によって生徒への教育成果に大きな差が現れる。
部活動は現実として、生徒への教育や指導となっており、その成果は後述するが生徒の進路にも大きくかかわってきている。
しかしながら、それは義務教育段階ですら機会も完全に不平等であり成果も完全に不平等である。
入試段階で学力偏重が問題であるならば、部活動の成果もまた評価の基準に含まれてよく、そしてその結果は生徒や学校によって偏りがあることは望ましくはない。
●利権とパイプ
部活動が異常な拘束時間をほこっても行われるのには、これは誰でもわかることだが、そこに大きな利権が存在しているからだ。
学校の入学希望者は、その学校にどんな部活動があるかを明確に意識して選んでいく。ある部活動が全国的、県内でも有力であるかどうかは入学の大きな動機になっている。
部活動で大きな成果を出せば、(建前では成果の主体者ではないはずの)学校に大きな利益をもたらす。
卒業生も大きな利益を生む。
プロになれば知名度は上がる。プロでなくとも実業団や有名大学に入れば、そこに企業や大学とのパイプができる。
大学は厳しくなってきたが、それでも推薦枠がある。それはともすれば進学率就職率に大きくメリットとなる。
経営は大事だ。
ローコストで大きな成果を出すのは最も美味しいことである。
指導する人間には、その働きに対して金を払う必要はない。存分に働かせれば良い。
資金が出せず設備を整えられないが成果は出してほしいため、労働者(生徒)には労働時間を増やして成果を出させようとする。
その素晴らしい経営理念はブラック企業と遜色ない。
●教育を圧迫する部活動
部活動で成果を出そうとする学校が最も活用するのが特待生だ。
私立で学費免除などで多いが、公立高校でも独自入試、つまり一芸入試のようなものなど、いわゆる入試に下駄をはかせる行為も未だに行われている。
確かに学力だけで生徒の可能性を測るのは良くないかもしれない、高校に入れるのが学力によって選抜されることは不平等かもしれない。
しかし学校の成績は学力でつけなければならないものが他の活動で評価される部分よりも多くあるのだ。
成績は相対評価ではなく絶対評価となった。
定められた教育内容を覚えたといえない限り、それを卒業できる学力に達しましたと認めることは難しくなった。
下駄を履かした生徒の授業を担当することになった教員も悲惨である。下駄を履かせてどら猫を追っかけさせればそれで優に出来るなら良いが。
下駄を履いていない生徒に定めた最低基準と同じだけの成果を出さないことには、成績に可をつけられない。特に公立高校では、明確に許すことは建前上できない。
授業は、その特待生に足を引っ張られ、入試を越せない人間にすら理解できる内容まで落とさなくてはならない。
その上、多くの生徒には授業によって良い大学を目指せる成績まで上げることを求められる。
そして特待生を抱えるような部活動はやはり長時間の活動時間を生徒に課す。
前記したように、夜遅くまで活動する部活動も多く、それによって予復習をする時間も余力もない生徒が多く現れる。
(部活動は特待生のみでは行われず、多くの一般生徒までもが、それによって時間を取られることにもなる。)
疲労した生徒は、授業中に集中することが出来ない。研究結果では睡眠時間が6時間と8時間の生徒には明確な学力の差が現れている。
学力の落ちた生徒は、テストで赤点を取り補習や追試を受けることになる。そのために他の教科すら更に成績が落ちていく。
そうやって過酷な部活動は教育を圧迫していく。
●部活動のメリット
ここまで問題をあげつらってきたが、しかし、部活動が多くのメリットを生んでいることも事実である。
部活動は日本の高いスポーツレベルを支えている大きな要因である。
野球が世界トップレベルであるのは甲子園という高校野球の大きな競争があるからこそだといえる。
文化系においても書の甲子園やロボットコンテストなど、生徒の育成に大きな力となっている。
また文化への影響も大きい。
複数の生徒が同じ活動することは交友関係を広げ、違う学年との交流を生むことで認識に大きな幅をもたらす。
そして、多くの生徒が共有の「部活動」という体験をしていることは、創作などで「部活動もの」と呼ばれるジャンルを生み出す要因となっている。
多くの人に共有体験があれば、それは一般に受け入れられる創作物の幅広げることになる。
●そして現実の問題へ
問題なのは、そんな成果や影響の大きい部活動を何一つ政治的な援助も規制もせずに野放図となっていることだ。
一部の教員によって支配されている部活動が体罰などの問題を引き起こす。
それは教員が全て強制の無償活動で行っているからであり、そこに「俺がやってやっているのに」という感情がなきにしもあらずといえる。(実際にそういう声も相談に上ってくる)
育ち盛りで可能性のある若者が、知識のない指導者によって無理な運動を強いられ体を壊す事例もある。
特待生として入学した生徒が芽が出ずに、退学を強いられる問題も起きている。
野球でも度々問題となったが、人材を求める企業などとの癒着も未だに多く存在している。
部活動をなくすべきではない。しかし、現状の大人の建前と利益によって児童生徒が被害を受ける状態は改善されなければならない。
そして出来るならば部活動のメリットをより大きなものにするべきだろう。
部活動が生徒の教育に成果を生んでいるのならば、それを教育活動として認め労働としての対応をしていくべきなのだ。
運動部の指導を運動の素人である教員に任せず適切な指導者を雇い雇用を増やすべきであるし、
生徒には虐待にならない程度の活動時間の規制を設けるべきだ。
少なくとも自民党と日本ユニセフには、存在していない児童への性的被害を問題視するよりも、現実に存在している過酷な部活動を問題にしてほしいところだ。
画像:『足成』
http://www.ashinari.com/2012/04/11-360667.php
転載元:こちらは匿名投稿『はてな匿名ダイアリー』からの転載です。
転載記事は2013年11月27日時点のものです。
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