今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
■TPP12 どうせ、「日本は植民地」という見方から見ると(中部大学教授 武田邦彦)
TPPは適切か?という疑問が多く出されている。その基準の一つは「独立国の日本が主権の一部を制限されるのではないか?」という懸念もある。でも、日本は独立しているのだろうか?
TPPでも、原発でも「行動に全責任を持つ大人ではなく、部分的に文句を言っている子供のような意見」が多いのも現実に独立していないからとも考えられる。具体的には、日本が独立状態とは言えない状態は次の通り。
1. 自分の国の軍隊よりはるかに強力な軍隊が70年も駐留している。独立国であって、同盟を結んでいる場合でも、自分の国に同盟軍の軍隊が自分の軍隊より強力だという国はあったのか、歴史を思い起こしても思い出さない。
ましてアメリカにはグアム、サイパンなどの日本に近い軍事基地があるし、首都東京にアメリカ第一軍司令部があるなどということは私には信じられない。
インドがイギリスの植民地だった時より、駐日アメリカ軍は強い。
2. アメリカ人が自動車を買いたいと思えば、自分がお金(日本円)を持っていなくても注文できる。注文してから白い紙にドルを印刷するとおかねを作ることができる。
やがて日本人が作った自動車ができると、印刷したばかりのドル札を日本人に渡せばよい。日本人は自分で製造した自動車をアメリカ人に渡してドルを日本に持ってくる。
でも日本ではドルは使えないので、鉄鉱石と石油を買って残った約半分のドル札でアメリカ国債を買ったり、海外の資産を買ったりする。かくして日本の対外純資産(貸越)は300兆円となり世界でだんぜん、トップだ。
インドがイギリスの植民地だった時に、イギリスはインドに対してポンド(イギリスの通貨)で支払った。インドではポンドが使えないので、インド人は綿織物をイギリスから買って、残ったポンドをロンドン銀行に預けたが、独立した時には目減りしていてないも同然だった。
3. TPPはアメリカ大統領の選挙資金稼ぎ、秘密保護法はアメリカの圧力、小泉純一郎首相の郵政などもアメリカの差し金と言われ、田中角栄総理大臣がロッキード事件で挙げられたのはアメリカの許可を得ずに日中国交回復をしたからだ、小沢一郎が・・・と日本の総理大臣や政府はアメリカにはむかうと、直ちに総理を追われるか暗殺されると信じている日本人が多い。
これほど大っぴらに長い間、日本はアメリカのいうことを聞かなければならないと思われるなら、それは植民地状態である。「日本は独立国だから、そんなことは言うな!」という人もいないし、逆にまことしやかに「アメリカに言われたら抵抗できない」という指導層の人が多い。
「日本はアメリカの植民地状態にある」というのが正しいだろう。つまり先日の一票の格差の最高裁判決で「違憲」と「違憲状態」を区別していることから言えば、「植民地」ではなく「植民地状態」というのが正確で、そうなるとTPPで主権が危ういといってももともと主権がないのだから意味もない。
だからと言ってやけになっているわけではなく、まず「日本は独立すべきか」から初めて「独立した時にはどのような国を目指すのか」をはっきりし、その上で「日本が望む自由な国際貿易とはなにか」を考えていきたい。
このような直接的な植民地状態でなくても、「心理的植民地状態」も併存する。たとえば、茶髪はアメリカ人コンプレックスの表れと思うし、日本人の電気消費量がアメリカ人の2分の1でも節電していないとバッシングするなどは「日本人はアメリカ人の召使い」と考えているからだろう。
地球温暖化でも、アメリカが言い出して、アメリカはCO2を削減していない。もしこれが日本国内のことだったら、多くの日本人は激しく非難するだろう。でもなにしろ宗主国のことだから、アメリカは非難しない。むしろ、アメリカがCO2の削減をしない状態で日本だけが苦労していることを指摘する私の方に批判が集中する。アメリカの手先が多い。
この問題、つまり「日本人は自らの誇りを捨てたのではないか?」についてはまた別の機会に分析をしてみたいと思う。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年11月26日時点のものです。
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