今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
■マスコミは「権力者」か? 食品偽装という問題で考える(中部大学教授 武田邦彦)
マスコミは第四の権力と呼ばれるし、現在ではむしろ「政党も変えることができる権力」とも言われる。でも、本当にマスコミは「頭脳のついた権力」なのだろうか?
ホテルのレストランの食品偽装がさかんに報道されている。11月2日の新聞には「仕入れ値2500円のアフリカ産ロブスターを、仕入れ値4000円ほどの伊勢海老と称して調理して売っていた」というニュースが一面に載っていた。そこにはなぜアフリカ産のロブスターを使ったかというホテル側の言い分が詳しく書かれていて、鍵かっこもつけずに「誤表示」という見出しをつけていた。
立派な詐欺である。詐欺というのは民法で「他人を欺き錯誤に陥れること」で、刑法では「他人を欺いて錯誤に陥れ、財物を交付させること」であり、いずれも詐欺にあたる。社会常識でも2500円のものを4000円と偽って売れば、詐欺に決まっている。
昔だったら「化繊を絹といって騙す」、「駅から5分と言って実は10分」などが多かった。すべてはっきりした詐欺罪だ。こんなことが横行したら社会生活ができなくなる。事実、「なにを見て買ったらわからない」と困っている主婦も多い。
食品偽装のことも重要だが、ここでは新聞が「誤表示」という言葉を使うことについて取り上げたい。
人の家に無断で入って金銭を盗んだ窃盗犯が「お借りするつもりでした」と言って頭を下げ「借用です。窃盗ではありません」といえば、新聞やテレビは「借用」と書くのだろうか? 間違いなく「窃盗」と書くし、その窃盗犯が「なぜ、無断で借用するに至ったか」ということを事細かに言っても「窃盗は窃盗だ」と言って切り捨てるだろう。
でも、なぜ、ホテルのレストランが詐欺をしたときには、その言い分に紙面を割き、詐欺した当人が使った単語「誤表記」をそのまま使うのだろうか? 新聞の言い訳は「本人が使っているから」というのだろうが、それならなぜ窃盗犯の時には本人の言い分を聞かないのだろうか?
私はマスコミは「第四の権力」などといわれるが、実は「弱い者いじめをする社会の害毒」と思う。これは日常的なことから、政治的・社会的なことまで、「強いものには逆らわず、弱い者はかさにかかってバッシングする」ということで、かつ「頭脳で判断して書くのではなく、雰囲気で強いほうにつく」ということだと思う。
小さな会社が不祥事を起こすと徹底的に罵倒する新聞記者が、東電には「教えてください」といい、一流ホテルでは「誤表記」と書く。もう少し職業人としての倫理と、日本人としての誠実さを持ってもらいたいものだ。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年11月05日時点のものです。
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