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それでもやっぱり耐えてほしい、「映画の耐えられない長さ」。

2013/10/29 14:30 投稿

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それでもやっぱり耐えてほしい、「映画の耐えられない長さ」。

今回は(チェコ好き)さんのブログ『(チェコ好き)の日記』からご寄稿いただきました。

■それでもやっぱり耐えてほしい、「映画の耐えられない長さ」。
ブロガーのイケダハヤトさんによる、こんな記事を読みました。

「映画の耐えられない長さ:上映中にスマホをいじる人たち」 2013年10月21日 『ihayato.書店』

http://www.ikedahayato.com/index.php/archives/28078

一般的な映画は、だいたいどれも2時間前後の長さがあります。家でDVDを観るなら話は別ですが、映画館で映画を観るとなると、その2時間を、じーっと席に座って過ごさなければいけません。ポップコーンを食べるくらいはアリだけど、隣の人と話したりしてはいけないし、基本的に真っ暗なので本は読めないし、周りの人の迷惑になるのでスマホをいじるなんてもってのほか。だけど、その「2時間の拘束」に耐えられず、上映中にスマホをいじってしまう人がいる、というのがイケダさんの記事の内容です。

実はこれに対して、私もけっこう前ですが、同じようなことをブログに書いています。

「僕は映画が見れない|メディアの未来と、映画祭と」 2012年12月04日 『(チェコ好き)の日記』

http://aniram-czech.hatenablog.com/entry/2012/12/04/074938

そこはやっぱりマナーですから、退屈だろうが何だろうが、大人なんだから体を縛り付けてでもスマホいじるのはやめようよ、と言いたいところなんですが、気持ちがわかるかわからないかと言ったら、ちょっとわかるんですよね。これが。

映画館では上映が始まったら絶対スマホなんていじらない私ですが、家でDVDを観るときは、合間にスマホをちょこちょこ操作したり、ご飯を食べたり、紅茶を淹れに行ったり、ちょこまかちょこまか動いています。2時間の拘束がキツイ、耐えられない、っていう気持ちは、ぶっちゃけるとすごいわかるんです。

イケダさんの記事にあるように、最近の私たちは何でも「まとめ」を欲しがります。

「時間を有効に使うためのiPhoneアプリまとめ」、「仕事の結果を左右する5つのルール」、「早起きをするためのライフハックまとめ」。

ネットにはこんなタイトルの記事があふれていて、私自身もそういうタイトルのエントリを書くことがあります。そして、これからも書くでしょう。だって、やっぱり何か書くからには、たくさんの人に目を通して欲しいもの。そういうタイトルをつけるとブックマークをたくさんつけてもらえるし、twitterでも拡散されやすいし、「タイトルが大切だ」って、有名なブログ本にはみーんな書いてある。

でもたまに、「この状況ってちょっとシュールだよな~」と思うんですよね。

最近はもう「まとめのまとめ」とかすらも登場していますけど、そのうち「まとめのまとめのまとめ」とか「まとめのまとめのまとめのまとめ」とか出てくるんでしょうか。もうまとめすぎてゲシュタルト崩壊です。

私たちのなかの誰かが、最新iPhoneアプリをダウンロードして、それまで20分かかっていた作業が10分でできるようになったとします。これはすばらしいことです。

で、その空いた10分で何をするのかといえば、また新たなiPhoneアプリをダウンロードしています。10分かかっていた作業を、5分で行えるようにするために。これを俗に「生産性の向上」といいます。

その生産性とやらを、私たちは向上して、向上して、向上して、どこまでいくんでしょう。

その向上した結果によって、睡眠時間が長くなったり、美味しい食事をゆっくり楽しめるようになったり、南の島のビーチで昼寝できるようになったり、映画を2時間じーっと座って見られるようになったりするといいのですが。

しかし、事態は必ずしもそういう方向に向かっているとは思えないときがあって、そういうとき、「みんな、ミヒャエル・エンデの『モモ』をもっかい読み直した方がいいよ」と、1人要らぬ心配をしてしまいます。

★★★

話は変わりますが、アンドレイ・タルコフスキーという、ロシア人の映画監督がいます。

私が愛して止まない映画監督のうちの、1人です。

タルコフスキーは、ロシア(ソ連)からイタリアへ亡命し、最後はパリで亡くなっています。

彼は本当は、ロシアにずっと帰りたかったのだけれど、彼が作る映画はソ連当局のお気に召さなかったようで、国内では上映禁止処分。祖国に帰りたいという思いと、自由に映画を撮りたいという思いとで板挟みになった結果、タルコフスキーが最終的に選んだ道は、後者でした。

その身を引き裂かれるような思いを、彼は『ノスタルジア』という、ひっっじょーに美しい映画で表現しています。

『ノスタルジア』に登場に登場する映像は、初めて見る風景なのに、なぜか懐かしい。どこかで見たような気がする。それは幼い頃だったかもしれないし、夢のなかだったかもしれない。どうしてこの人は、私の頭のなかを覗きこんだような映像を撮れるんだろう?

『ノスタルジア』は、いつ観ても、何回見ても、本当に不思議な作品です。

「Nostalghia -Andrei Tarkovsky (1983)」 『YouTube』

(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)

http://youtu.be/qgm-qHUlv34

この映画は126分あるんですけれど、もうよっぽどの映画好きじゃなきゃ、この映画を最初から最後まで通して観られないのかなぁ。

「THE☆芸術系映画」って感じなので、私ですらちょっとウトウトしちゃう映画ではあるんだけど、ウトウトしながらでもいいんですって。暗闇のなかでウトウトしながら観ると、自分の夢と『ノスタルジア』の映像が混ざって、どっちがどっちだかわからなくなる。映画が終わって場内が明るくなるとはっと目が覚めるんだけれど、一瞬自分がどこにいるのかわからなくなる。時間の感覚がつかめなくなって、足元がフラフラする。

あの感覚を、映画がそんなに好きじゃない人にも、タルコフスキーなんて初めて聞いたって人にも、味わってみて欲しいのに。

「まとめ」とか「要約」は、あくまで本物に触れるためのキッカケを作るものであって、それ自体がコンテンツとして成立してしまうのは、ちょっとない。イケてない。いただけない。

映画は今後どうなるんだろう? 2時間の映画なんて誰も観られなくなって、1時間になったり、30分になったり、映画館なんて潰れて「15分ずつ配信」とかになるのかな。

もしそうなるとしたら、私にその動きを止めることはできないけれど、映画を愛する者として、せめて最後まで抵抗しよう。

時代遅れでも何でもいい。

映画くらい、2時間きっちり観ようぜよ!
(自戒をこめて)

執筆: この記事は(チェコ好き)さんのブログ『(チェコ好き)の日記』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年10月28日時点のものです。

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