今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
■【除染】なぜ除染は失敗したのか?(中部大学教授 武田邦彦)
福島を中心として「除染」がうまくいかないから止めた方が良いという意見が出ている。そしてそれがさらに進んで、「除染など最初から意味が無かった」ということまで言われている。
なにが除染の失敗だったのだろうか? 私が2011年の4月に除染を呼び掛けた時の発言と比較しながら、その原因を探り、今後のことを考えて見たいと思う。
当時、私は主として次のようなことを言っていた。
1)「除染」というと判りにくいので、「除洗」という言葉を使うが、本当は「汚染」を「除去する」という意味だ、
2)セシウムなどは土と親和性があり、水に若干溶けるので2011年の梅雨のシーズンまでにある程度は済ませる必要がある、
3)かなり大規模な活動なので、自衛隊の全力出動や電力の共同体などが参加する必要があるだろう、
4)除染に失敗すれば、福島の約3分の1から立ち去るか、被曝を覚悟して居住するかの判断が求められる。
除染というのは最初からこのようなもので、それが「非現実的」かどうかより、まずは「何が必要か」を示した。このことは国会の委員会などでもほぼ同じ内容のことを言った。
最初の頃は「身の回りの放射性物質を取り去る」ということで、家の中をぬれ雑巾で拭いたり、高圧洗浄水で洗うことをしてもらったが、これは「汚染物質を移動する」という緊急のもので、国家規模でやる除染ではない。
しかし、現実に除染が始まったのは半年も過ぎた後で、それも下請けの業者をつかって少しずつやるという意味も無い除染だった。
そのころには土の中に約5ミリメートルぐらい、コンクリートでは0.5ミリぐらい潜り込んでいて、除染は難しくなっていたし、山野からの放射性物質の再飛散や移動も防ぐことができなかった。
そして現在でも政府は除染を本格的に進める方針はなく、もう一つの方針、つまり「被曝を覚悟する」という方向に舵を切っている。その方がお金もかからず、被爆の被害は住民が負うことになるからだ。「1年100ミリまで大丈夫」という御用学者をある程度そろえれば除染はしなくても良い。
ところで、事故後、2年半を経て、最初の選択、つまり「除染か退避か被曝か」を決意する時期と思う。現在に至っては除染はかなり困難だから、部分的に除染するか、あるいは退避するのが望ましい。
とにかく、被曝による健康被害は医学的によくわかっていないので、1年1ミリと決めてきたのだから、それをオーバーする地域は退避することが必要だ。
これほど明白なことが紛れるのは、論理をしっかりして議論をすることがまだ日本ではなかなか無理だからと考えられる。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年09月26日時点のものです。
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