今回はtokunoribenさんのブログ『拝徳』からご寄稿いただきました。
■バカや低学歴の世界が可視化されたんじゃなくて自分がそういう底辺層と同じ世界におちたんだろ。
最近インターネット界隈では、冷蔵庫に入った写真をTwitterやFacebookにアップロードしたのを契機として炎上事件が相次いでいる。
こういう炎上事件を見るたびにいつも僕は本当に醜いな、こうはならないように気をつけようって強く思う。
冷蔵庫に入った人がじゃなくて、それをインターネット上で叩いているような人種に。
昔、大学でブログの炎上についてレポートをかいたことがあるんだけど、そのときに面白いなって思ったのが、
ネットの炎上はいつも被害者不在で第三者が引き起こしてる、ということ。
今回のだって、冷蔵庫に人が入ったら衛生面で問題があるかもしれないし、ぶっちゃけ個別包装されてるからおそらく衛生的に問題ないんだろうけど、
じゃあ店員が入った冷蔵庫と入ってない冷蔵庫だったらどっちか選べっていわれたら、まぁ入ってない方を選ぶと思うし、その事実を知らない人がアイスを買ってたとして、これは店員がはいってた冷蔵庫で冷やされたアイスでしたといわれて気分を悪くして怒る人はいるかも知れない。
そういう被害者、店舗で実際に買いました、そのお店使いました人が、多少声を荒げて感情的になって法的措置も辞さないっていうのはわからんでもない。
でも、あなたは別にその店でアイス買った訳でもなんでもなくない??つかなんか被害うけたんでしたっけ??
日本は法治国家だから、脱法行為や違法行為があるんだとしたら当然法に照らしあわせて罰せられる。
被害者がいて、加害者がいる。甲が乙に対してあれこれをした。その結果甲はこういう罪を犯した事になり、甲をなんとかの罰に処す。
で、乙ってここで具体的にいうと誰よ? あとそれと君はなに? ここのどこにでてくるわけ? 全然関係ないよね? なにしてんのここで?
冷蔵庫に入ったらいけない事くらい常識だろ!とかいうけれど、冷蔵庫にはいっては行けない。罰を与えるって法律や規定はどこにも書いていない。
それに常識っつったって、じゃあなに、どこかアフリカとかアジアとかの奥地で適当に現地人が二重音声で
現地人「この辺りではエアコンは貴重だからね。こうやって仕事が終わったら冷蔵庫に入ってみんなで涼むんだ。」
とかいってテロップつけてとかワイプで芸能人の驚いた顔写してイモトあたりが「本当だー!すげー涼しいー!」とかいって笑ってたら、世界珍百景さもありなんだけど、そういうの見たらどうするのイモトとか現地人にも切れちゃうわけ? 罰をうけるべしとか言うわけ?
結局、ネットの炎上って、被害者でも加害者でもなんでもない第三者が頼んでもいないのに勝手に自分の中の正義感に基づいて、安全圏から一方的に罵詈雑言を浴びせる、ただの私刑なんだよね。
いってる本人はさぞかし正義のヒーロー気取りなんだろうけど、そんなもの正義のヒーローでも何でもないよ。ただの処刑人。
向こうが逆らえないのをいいことに問答無用に打ちのめせる悪人をみつけると嬉しそうに殴りかかってるだけ。
こういうのってお国柄がでるよね。
例えばアメコミヒーローは意外なほど法律を重視していて、バットマンやスパイダーマンなんかは基本的に悪人を警察に突き出して司法の手に判断をゆだねるんだけど、
日本のヒーローはほとんどの場合犯罪者を自分で裁く、すなわち私刑を行うんだよね。
は? なに? アーンパンチ? おまえそれ正義の名を借りたただの暴力だろ。傷害罪で訴えられたら負けるから。
その上、ネット炎上の処刑人が悪質なのが、たとえ1発1発が軽いとしてもそれが無限に積み重なっていくということ。
人は1発殴られたくらいで死ぬことは少ない。でも100人から1発ずつ殴られたら死ぬかもしれない。でもその場合、殴った100人のうち、「自分が殺した」と自覚する人は少ない。
言葉の暴力だって同じ。1回言われた程度だったらただの小言なのかもしれないけれど、100人、いやもっとたくさんの人に死ね死ね詫びろ詫びろいわれ続けたら、心がポッキリ折れて逝ってしまうかもしれない。
ついこの間もそうやって、どこかの議員が死んでしまったよね。でも、みんな自分が殺したと思ってない。むしろ自分はちょっとお灸を添えて懲らしめてやったくらいにしか思ってない。ひどい話だ。
そして皆こういう炎上事件を見ては、やれバカ発見器だの、バカや低学歴の世界が可視化されたとかって言って片付けるけれど、これもまた滑稽な話だ。
じゃあそもそもその炎上の発端となったバカや低学歴の底辺層とやらが使ってるのと同じウェブサービスを使っては、そういう輩が跋扈する店で飲み食いして買い物しているあんたはいったいなんなんだ?
可視化された?
違うよ。今の自分の世界がその世界までおちたんだろうよ。
自分は気がついていないのかもしれないけれど。
執筆: この記事はtokunoribenさんのブログ『拝徳』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年08月20日時点のものです。
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