今回はどらねこさんのブログ『とらねこ日誌』からご寄稿頂きました。
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■リンゴ農園に突撃(?)してリンゴ農家の本音を取材したよ(前編)
●■ 弘前市のリンゴ農家へ
最近なにかと話題の「奇跡のリンゴ」ですが、どらねこは映画化以前から興味を持って木村秋則さんの主張や栽培法などの情報を調べたりしておりましました。といっても、興味の対象は「宇宙人に会った」とか、「バクテリアのおかげか自然栽培のお米からは放射線が出ない」といったリンゴ栽培そのものではない部分についてのものでした。
映画化されるとなるとインパクトは大きいようで、普段は話題にならなかったリンゴの無農薬栽培についての話題をちらほら目にするようになりました。あくまで個人の成功例にとどまればよいのですが、映画を見たひとが、なんで危険な農薬を他の農家はやめないの?とか、木村さんの行う農法があたかも理想のように考える人が増えやしないか心配になってきました。
しかし、どらねこはリンゴについては素人です。これは一度リンゴ園を見学して本業の方からおはなしを伺うべきじゃあないか、と思っていたところ、快く見学を引き受けて下さるリンゴ農家の方が現れてくれました。折角の機会ですので、ご厚意に甘え、木村さんと同じ弘前市の岩木地域にあるHさんのリンゴ農園へとどらねこは取材に向かいました。
●■ まずは園内を見学
弘前市中心部から車で20分ほどの岩木山を仰ぎ見る絶好のロケーション。Hさんのリンゴ園を訪れての率直な感想です。思わず、映画の撮影に良さそうですよね、と口にしてしまいました。
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今日は草刈り作業の予定だというHさんに案内され農場見学。とはいえ、園内は綺麗に整備されております。
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パイプがたてられ、リンゴの樹を支えているのがわかると思います。この農場は「わい化栽培」というあまり大きく育ちにくい性質を持ったリンゴを栽培しており、幹があまり太くならないので倒れやすいため、パイプで支える必要があるそうです。
(従来の栽培法は丸葉栽培などと呼ばれます。普通のリンゴは樹高が高くなりやすく枝を広げるように剪定する事から、本数を植えるためには広い土地が必要で、高い場所のリンゴをせわしなければならないため、労力が大変であるとの事から、リンゴの生育を抑える性質のある台木に接ぎ木した、わい化栽培というものが導入されました。比較的少ない面積に多くの樹を植えることができること、収穫までの期間が短いこと、収穫が楽であるという期待から最近の主流になりつつあります。ところが、いざ育ててみると思ったよりも樹の勢いが良く、省力化に疑問があったり、安定して収穫できる時期が短いなど、色々と問題も見られるようになってきました。メリットはあるもののデメリットもあり、新しいことに挑戦することの難しさも感じる事例です。ちなみに、新わい化栽培という、台木をさらに工夫した新しい方法にチャレンジしている人もいるようです。)
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この何かの茎みたいなのはいったいなんでしょう? 中にはマメコバチという小さいハチが住んでまして、リンゴの受粉用に園内で飼っているとのことです。ミツバチに比べ受粉能力が高いそうで、このハチのお陰で、夜中まで大忙しだった受粉作業から解放されたそうです。冬はこの筒ごと冷蔵庫に入れておけば良いそうで、管理も楽なのだとか。
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まだ小さくてうぶ毛に覆われたリンゴの実です。受粉したリンゴの花は全て実らせると大きく育ちませんので、良さそうな実だけを残す摘果という作業が行われます。Hさんの畑のリンゴは摘果はほとんど終わっておりました。
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これは支柱とぶつかり樹がいたまないような工夫ですね。
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腐らん病に罹ったリンゴの樹です。この病気はValsa ceratosperma という真菌(カビのなかま)が原因であり、放置すると全体に広がってしまうおそろしいものです。根本的な解決策がないそうで、枝にでた場合には、根元からはさみで切りとり燃やしてしまうのですが、幹に出た場合にはこれ以上広がらないように次の写真のような対応を行っているそうです。
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これは、オムツのような高分子吸収体が入ったシートを巻き付けているそうなのですが、常に湿度を保った状態にすると、菌が弱り、症状が抑えられるのだそうです。こうしたおそろしい病気を流行させないために、予防作用のある薬剤を散布するのですが、予防接種と同じく集団できっちりと行う事がやはり大切なようです。例えば、青森県には「青森県りんご黒星病及びりんご腐らん病まん延防止条例」というものがあるのですが、放任状態になったリンゴ園が病気の発生源とならないように、放置されたリンゴの樹を自分たちの権限で伐採することができるようになっています。青森市では、平成23年度実績で、1.59haの伐採実績がありました。
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と、なんだか急に熱く語りだしてしまってすみませんでした。ええと、今度はリンゴをはぐくむ土壌です。Hさんの農園では下草は刈り込むぐらいで、根元だけ除草剤をつかっているとの事です。
肥料については化成肥料を撒くだけですが、同じ土地で数十年収穫を行っていても収量は安定しているとの事でした。
●■ 率直な感想は?
さて、園内散策も終わり、今日の目的でもある映画の事や所謂自然栽培にどんな考えを抱いているのかを伺う事にしました。
ど:映画が公開されテレビでも特集がくまれたりしてますが、以前と変わった事などはありますか?
Hさん:以前に、NHKスペシャルでも奇跡のリンゴが採り上げられた事があったのですが、それ以上に反響があるなぁ、と思います。やはり本業ですので気になりますからネットでキーワード検索などもするのですが、以前は批判的な意見は出てこなかったのですが、映画化後は賛否両論でてきますので、農家としてはありがたいです。個人的に検証して批判なりをしてくれる方がいるというのは嬉しいですね。
ど:リアルではどうでしょう?
Hさん:父親はアレは物語に過ぎない、といってますね。あと、友人などからは冗談めかしてなんでやらないのだ、といわれることなどもありますね。こまるのは年配の人などから、どうして無農薬で成功した人がいるのにオマエは挑戦しないのだといわれることでしょうか。
ど:やはりそうした話はあるのですね。
Hさん:そうですね、実情を知らない人に説明するのは大変ですね。ちょっと頭に来たときなどは一からしっかりと説明することもありますが。
ど:無農薬に挑戦しないのにはわけがあると?
Hさん:そうです。無農薬って実は農家にとっても魅力的なんですよ。農薬のコストもかかりますし、スケジュールもしっかり守らなければで手間もありますし、なくせるのならなくしたいですよ(笑)。
後編は木村さんの言動などに対する思いや、農薬やリンゴに対する誤解など、Hさんへのインタビューを盛りだくさんです。
執筆: この記事はどらねこさんのブログ『とらねこ日誌』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年06月25日時点のものです。
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