今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■ネットはいつから儲けて成功しなければならなくなったのか
「池田信夫@ikedanob」 2012年12月27日 『twitter』
http://twitter.com/ikedanob/status/284300523446861825ちゃんと原稿料払ってるから。ほとんどのネットメディアは原稿料払ってない。 RT @xxx: なぜガジェット通信@hiroyuki_niが黒字でアゴラが@ikedanob赤字なんだろう。人件費ってことだけなのかな?
パソコン通信の頃はユーザーがNIFTYとかのプロバイダに一方的に金を払ってたと思うんだよね。お金を払って自分の意見を言う場を確保していたわけだ。
インターネットが普及し始めた頃も、自分が利用しているISPが提供するホームページを自分の意見の発表場に使っていたと思う。あるいは有料レンタルサーバを借りるとか。つまり発表する側(ユーザー)がお金を払うのが当然だった。
そのうち幸か不幸か広告モデルができて、ブログとかは無料になった。さらにユーザーがアフィリエイトなどで逆にお金を得ることができるようになった。
* * *
それはそれで素晴らしいことだし、ネットが既存のメディアを置き換えていくという大きな流れの中で、ネットで金を儲けるモデルの確立も必要なことだ。
野球をするのにプレーする側がお金を払うのがアマチュアで、逆にお金をもらうのがプロ。両者は目的が全然違う。
でもなんか最近は、日本社会もギスギスしてきて、とにかく儲けて成功しなければ敗者なんだ、みたいな風潮はどうなのかね。もちろん儲けることを目指してるのに儲けられなければ敗者だろうけど、そもそも儲けることを目指してない人間だっているよね。
草野球を楽しんでいるところに、一流のプロ野球選手がやってきて、「俺は成功者だ、お前たちは敗北者だ」とかい言われたら、何じゃそりゃ?と思うよねぇ(笑)。
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現在のパソコン文化は1975年のホームブリューコンピュータクラブを源流とすると言っていい。Home Brewとは自家醸造(酒)という意味。ソフトはもちろんハードも手作りの時代。
ポピュラーエレクトロニクス誌で発表されたMITS社のAltair8800。初のホビー用のコンピュータ。そのユーザーたちは、なにもそれで金を儲けようとしたわけではない。ラジコン飛行機で遊ぶのと同様、それで楽しみたかったわけだ。
一方日本でもTK-80というマイコンキットがNECから1976年に発表されている。アキバのBIT-INNに朝から行ってプログラムしていたものだ。マシンは早い者勝ちなので、早く行かないと取られてしまう(笑)。その後第一次マイコンブームとともにマイコンクラブが全国にできた。
ただ第一次マイコンブームはあくまで濃い趣味であって、広く一般に普及するのはPC-8801とかが登場した第二次マイコンブーム以降ですな(エニックスやスクエアが登場したのもこの頃)。
ある意味、趣味でプログラムを作っていたのが第一次マイコンブームで、お金を儲けるためにプログラムを作るようになったのが第二次マイコンブームといえるかもしれない。
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でもその時でもプログラミングは金儲けが目的ではないという人たちがいた。その代表がGNUプロジェクトを興したリチャード・スールマンですな。
第二次マイコンブームで金のためにプログラミングしてた人たちは、その後の寡占化、具体的にはMicrosoftとの戦いに破れて力を失ってしまった。その状態でソフトウェアが完全な暗黒時代にならなかったのはGNUプロジェクトがあったからだろう。Microsoftに唯一対抗できたのは、金を目的としない彼らだった。
金を目的にするなら、生き残る最後の一人(ソフトウェアならMicrosoftのビル・ゲイツ)になる覚悟が必要。中途半端な覚悟の人間はふるい落とされる。でもそれだけが選択肢じゃないと思うけどね。ホビーからパソコンがここまで発達したように、プロ野球よりも草野球の方が、未来の可能性を秘めてる可能性はある。大型コンピュータの人たちはマイコンブームの黎明期「なんだそのおもちゃは」と馬鹿にしてた(そういう人ばかりではないけれど)よね。
もちろんビル・ゲイツのように時代の流れを嗅ぎ取り、したたかに成功を目指すのもいいと思うけど。ホームブリューコンピュータクラブでビル・ゲイツは自分が作ったBASICが勝手にコピーされているのに激怒した。当時はまだプログラムに関する権利がどう扱われるべきかは固まっていなかった。
* * *
商業的な成功を目指すなら、グローバル化時代、最終的に世界一になることを前提にしなければ、敗者になってしまう。そういう覚悟がある人間は目指せばいいけど、そこまでの覚悟がない人間まで、これが正しい道だというのは、うまくいかないと思うけどね。
インターネットからして、発端はアメリカの国防総省の研究のようだけど、別に短期的な(商業なり軍事なり)の成功を目指して研究開発したわけではないだろう。むしろ実験的に作ってみたら便利だったからみんな使うようになったのだろう。近視眼的な成功を目指していたら、インターネットのようなものは研究開発できなかっただろう。
1980年代、日本は欧米の猿真似だという批判から、基礎研究(必ずしも商業的な成功を念頭に置かない)を重視しようという流れがあったはずなのに、なんかいつの間にかどっか行っちゃったね。事業仕分けなんかもろに「金儲けにつながらないものはやめろ」と。
そういうのが日本の弱さかもね。つまり本当に猿真似して目先の利益を手っ取り早く上げるしか能がなかった。たまたま歴史の流れでそうだったわけではなくて日本人の本質だったわけだ。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
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