昨年から確認されていた風疹の流行は今年に入ってさらに勢いを増し、半年足らずで感染者が1万人を突破しており神奈川県や大阪府が相次いで「非常事態」「緊急事態」を宣言するまでの状況に至っています。東京都では昨年7月に福祉保健局が注意喚起を行ったのに続いて今年3月にはなお感染の拡大が続いているとして緊急対策の実施と国への緊急提案を行いましたが、感染者数の報告はなお高い水準を維持しており、予断を許さない状況が続いています。
そんな中、2020東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が国際オリンピック委員会(IOC)に提出した基本計画書(申請ファイル)の27ページにある以下の記述がこうした事実に反する記述を行っているとして『Twitter』上を中心に批判が相次いでいます。
感染症対策日本では、高い公衆衛生が実現されているため、最近10年間において疫学的な問題は生じていない。
日本における感染症対策は、検疫法・感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」という。)を中心に実施している。水際対策として、検疫法に基づき、国が検疫を実施し、感染症の侵入を防止している。また、感染症法に基づき、国及び地方自治体が感染症の発生状況を把握し、国民に情報提供するとともに、感染症患者に対する医療体制を整備している。
※文中の強調部分は筆者による
しかし、東京都保健福祉局が最初に風疹の流行に関する注意喚起を実施したのは昨年のことであり、申請ファイルの作成時にその事実を認識していなかったか軽視していたとすればそれは招致委員会の極めて重大な失態です。世界的に見て風疹は「アジア、とりわけ日本の深刻な風土病」と認識されており、例えば米国では「風疹ワクチンを2回接種していること」が永住権の申請条件の一つとされているぐらいに風疹の流入を警戒しているのです。こうした事実をよそに、招致委員会が「最近10年間において疫学的な問題は生じていない」とする記述の正確性には疑問符を付けざるを得ません。
ストップ風疹 赤ちゃんを守れ(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/stopfushin/
画像:2020東京オリンピック・パラリンピック招致委員会『申請ファイル』27ページ
http://tokyo2020.jp/jp/plan/applicant/dl/TOKYO2020_all_jp.pdf
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