5月22日にスイス・ジュネーブで行われた国連拷問禁止委員会の日本に対する審査で上田秀明人権人道大使が日本の刑事司法の前時代性をモーリシャス共和国のドマー委員から指摘され、有効な反論が出来ずに逆切れして"shut up!"(黙れ!)と激しい口調で連呼したとされる事件。インターネット上では猪瀬直樹東京都知事のオリンピック招致に絡むイスタンブール攻撃や橋下徹大阪市長の“慰安婦”および“風俗”発言に続いてまたも日本の要人が外交上の失態かと騒動になっていますが、日本の一般紙では東京新聞が6月5日付の特報面で報じた程度に留まっています。
当の日本ではそれほど話題になっていない上田大使の“shut up!”連呼が海外で広まっている理由は、国連が拷問禁止委員会の一部始終を公式映像として配信しているからでした。下記リンク先の映像の3番目が問題のシーンです。
UN Treaty Body Webcast - CAT 50th session: Japan
http://www.treatybodywebcast.org/cat-50th-session-japan/
また、上田大使の逆切れが委員の失笑を買った理由についてはドマー委員の「日本の刑事司法は自白への依存が強すぎる。これではまるで中世ではないか?」と言う指摘に対し、上田大使が「日本の司法制度は中世のものではない」と反論したかったところ「中世」(middle ages)の部分を「中年」(middle age)と言い間違ったのが原因ではないかという説も出ています。どちらにせよ、かねてからの懸案である取り調べの全面可視化は一向に進まず、拷問禁止条約批准当初から一貫して廃止を求められている代用監獄(代用刑事施設)も依然として維持され続けているなど日本の人権状況は上田大使が強弁して失笑を買った「世界最先端の人権先進国」にはほど遠い状況と言わざるを得ません。政府はこの事件を単なる“外交上の失態”で終わらせるのではなく、警察・検察や法務官僚の抵抗に遭っても公務員の人権侵害を無くす決意のもと堂々と「世界最先端の人権先進国」と言えるような刑事司法制度の確立に向け努力して欲しいものです。
参考: 【コラム】上田人権人道大使の発言に見る、日本の人権外交の基本姿勢という問題の核心(T完全版) - Togetterまとめ http://togetter.com/li/513931
画像:国連拷問禁止委員会の公式配信映像より転写
※この記事はガジェ通ウェブライターの「84oca」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
■関連記事
児童ポルノ禁止法改正案附則2条の「調査」は初めから表現規制の実施が前提だった! 山田太郎参院議員が衝撃の解説
公開から13年を経てもなお不定期で注目を集める教育改革国民会議『子どもへの方策』
ブロマガ会員ならもっと楽しめる!
- 会員限定の新着記事が読み放題!※1
- 動画や生放送などの追加コンテンツが見放題!※2
-
- ※1、入会月以降の記事が対象になります。
- ※2、チャンネルによって、見放題になるコンテンツは異なります。
ガジェ通
ガジェット通信編集部
月額:¥550 (税込)