「私は日本の水道水を飲みたくありません」と語る東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎氏。東日本大震災と原発事故をきっかけに飲み水の安全性に関心が高まり、宅配水やミネラルウォーターの市場が伸びていることを背景に発足した“水と生活プロジェクト”が6月5日、『今から始める水の選び方セミナー』を開催しました。
水と生活プロジェクトは、藤田氏と水ジャーナリストの橋本淳司氏が参画して6月1日に発足したプロジェクト。自分に合った水の選び方を啓発する活動の一環として、第1回となるマスコミ向けのセミナーを開催しました。
まず藤田氏が『水をちゃんと選んでいますか? ~水と体の相性~』と題して講演。2011年から急激に宅配水やミネラルウォーターの市場が伸びている現状に触れ、飲み水の種類と選び方について解説しました。
同氏は飲み水を“水道水”“天然水”“RO水+ミネラル”の3種類に分類。日本の水道水は水源が汚染され塩素消毒が不可欠になっていること、「ナチュラルウォーター」「ナチュラルミネラルウォーター」と記載される国産の天然水は過熱殺菌が必要になっていることを問題として指摘します。水は加熱すると組成が変わって活性が失われ、酸素と炭酸ガスが失われるとのこと。このため、汚染されていない水源から取れた非加熱の天然水が最も体によいと主張します。
“RO水”は、圧力をかけた原水を半透膜でろ過する逆浸透現象(Reverse Osmosis)を利用して作る水のこと。不純物やウイルスなどを除去して、限りなく純水に近い水になるのが特徴。純水の摂取は体によくないため、カルシウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムの4種類のミネラルをバランスよく配合して軟水として飲める飲料水が流通しています。非加熱で適度にミネラルを含む“RO水+ミネラル”は、安全性と味の面で赤ちゃんから老人まで飲み水に向いていると解説しました。
続いてアクアソムリエの資格を持ち、ミネラルウォーター専門スクールのアクアデミア校長を務める山中亜希氏が登壇。『赤ちゃん・妊婦への水の影響』と題して講演しました。妊婦の羊水はほとんどが水分で、胎児の体重の90%が水分であること、赤ちゃんは新陳代謝が活発なことに触れ、水選びの重要さを解説。水源や保存方法が適切かどうかという安全性、体に合って定期的に摂取できる継続性、ミネラルバランスを水選びのポイントとして挙げました。
会場では水道水、天然水、RO水+ミネラルの3種類をブラインドで試飲する試みも。ABCと書かれたコップの水を飲んで、筆者がまろやかでおいしいと感じたAの水はRO水+ミネラルのものでした。筆者がRO水+ミネラルの水を飲んだのは今回が初めてでしたが、味がよくかつ安全性が高いのであれば、今後注目してみたいと思います。
水の安全性を考えるうえで、日本で一番気になるのは放射性物質が含まれているかどうか。藤田氏はRO水について「理論的に放射性物質を除去可能」としていますが、メーカー各社が除去した報告という報告があるものの、自身で検証したわけではないことから、放射性物質を除去できる可能性については明言を避けました。
一番安全でおいしい水は海外に水源を持つ非加熱の天然水、ということになりますが、その点について藤田氏に質疑応答で確認したところ、海外の天然水は硬度が高いものがあることについて注意を喚起。ミネラルが不足しがちな老人には硬水が向くものの、赤ちゃんには腎臓への負担が大きく、避けた方がよいとのこと。海外の天然水はミネラルの配合に応じて飲む人に合ったものを選択する必要がある一方、RO水+ミネラルはだれでも安全に飲めると結論づけました。
水と生活プロジェクトのウェブサイトでは、水の選び方に関する情報を発信。今回の「妊娠・育児と水」というテーマの情報に加えて、今後は「料理・飲料に合う水」「美容・ダイエットと水」「環境・災害と水」といったテーマでも情報を提供していく予定です。
水と生活プロジェクト
http://mizu-seikatsu.jp/
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