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※この記事は国際情報サイト『Foresight』より転載させていただいたものです。 http://www.fsight.jp

 最近、中国の微博(ウェイボー)について、日本社会にもその存在が認知されてきたと感じる。

 中国の微博はこの3年で中国人の言論空間を一気に変えた。誰も微博を無視できないし、誰もが微博に夢中になった。その状況はいまも続いている。「飽きた」という人もいるが、中国人にとっておそらく初めて党や政府から切り離された「個」が意見や情報を公表し、交流できるようになったのは動かしがたい事実である。

 そもそも微博とは何ですか? と日本人から聞かれることも多かった。微博は言葉上は「微子」=ミニ、「博客」=ブログという二つの言葉をかけあわせたもので、日本でも「ミニブログ」と訳されることが多かった。一方、私などはいつも「中国版ツイッター」という表記を使ってきた。微博は実際のところ、ブログかツイッターかと聞かれれば、よりツイッターに近いからだ。

 ただ、ツイッターも微博も140文字だが、中国語では字数が3分の2ぐらいに減るとも言われているので、日本語では200文字ぐらいに相当するのだろうか。ツイッターよりもそれなりにまとまった一つの考えを書くこともできる。

  こんなことを考えているのは、最近、日本で立て続けに中国の微博について本が出されたからだ。

 李小牧+蔡成平「微博の衝撃」(阪急コミュニケーションズ)がこの12月に出版された。今年春には山本達郎「中国版ツイッターウェイボーを攻略せよ!」(ワニブックス)も出た。また、今年秋に出版された古畑康雄「網民の反乱」(勉誠出版)も、主題は中国のネット全般だが、微博についても紙幅を割いている。

 考えてみればこれらの作者は全員が知り合いだ。李小牧さんは私が編集長の中国語ウエブでコラムを書いているし、蔡成平さんは私の会社の部下でもある。山本達郎さんからは取材を受けた。古畑さんも同業者で前から知っている。それは私自身ももこの微博をめぐる世界に身を置いているからで、個人でも微博を細々と(フォロワーまだ3千人)やっているし、会社のアカウントはフォロワーが100万人を超えた。

 2011年に微博はほとんど野放図だった。何を流してもだいたいそのままだった。だが2012年に入ると、管理の方法が急激に洗練されてきて、そもそも胡錦濤とか習近平とか、そういった言葉はほとんど入力できない。画面に入れようとしても出てこないのである。

 こんな規制の方法があるのかと笑ってしまった。そのかわり、「胡・錦・濤」という風に打ったりすれば入る。また、どうも各微博会社は社内に膨大な検閲チームを抱えており、まずい内容があったりすると、どんどん削除していく。

 不愉快ではあるが、これは決して悪いともいえないこともある。当局の目に触れる前に削っていってくれるので、その発言は「なかったこと」にされるわけである。これは一義的には各企業の自己防衛なのだが、二義的には発信者であるユーザーも守っていることになる。それがいいことかどうかは別にして、中国の微博ユーザーは発言が消されると「被和諧された」と半ば楽しみながら受け止めている。「被和諧」とは、胡錦濤の看板政策だった和諧社会を皮肉った流行語で「当局に丸め込まれた」「当局のコントロールに置かれた」というような意味で、そこにはあまりリスクを冒しているとか当局と戦っているという緊張感は感じられない。

 その意味では、2011年は暴れ馬のように中国社会を騒がせた微博が、2012年は「被和諧」のプロセスに入ったということも言えるだろう。ただ、今年導入されると騒がれた実名制が結局は有名無実化したように、当局と微博ユーザーとの攻防はまだまだ決着がついていない。

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