世界中で活躍する現代アーティストの村上隆さん。カニエ・ウエスト、ゆずなどミュージシャンのアートワークを手がけたり、ルイ・ヴィトンとのコラボを発表するなど、アートを超えたコラボが常に高い注目を集めています。
そんな村上さんが、今度は何と実写映画を初監督。映画『めめめのくらげ』がいよいよ4月26日より全国ロードショーとなります。
『めめめのくらげ』は、父を失くし引越し・転校でナーバスとなっている少年が、ある日“くらげ坊”という不思議な生き物と出会う事からはじまる物語。構想10余年。当初フルCGアニメーションの予定だった作品を、震災後の日本を描きたいという気持ちから「実写+CG」という独特の手法で完成させています。
誰もが子どもの頃に見ていた心弾む夢を具現化した世界は、大人が観るとどこか懐かしく、色々な事を考えさせられる刺激を与えてくれます。初めての監督業でも、そのインスピレーションと創造力はとどまるところを知らず、既に『めめめのくらげ2』の製作もスタートしているという村上さんに、お話を伺ってきました。
――本作は子供を主人公に、美しい自然と可愛い“ふれんど”達というポップな一面がありながら、ストーリー自体は大人も考えさせられる深い内容となっていますね。
村上隆(以下、村上):子供に一番に観て欲しいという気持ちはありながら、音楽が子供には難しい構成になっていたり、可愛いキャラクターが沢山出てきたと思えば思わぬ展開を見せたりと、アニメを実写にした感じが妙な感じを醸し出していますよね。
――それは監督があえて狙ったポイントなのでしょうか?
村上:映画を作る時に、一つは最後に主人公が激昂して感情を爆発させるという流れを決めました。観客に一緒に泣いて欲しかったんですよね。それからストーリーを膨らませて、当初はもっと悲しい物語だったんですけど、脚本つめていく過程で、泣いたまま尾をひいてしまうのは良くないのでは無いかと考えてハッピーエンドに。でも、主人公達が絶望のふちに立たされて、さめざめと泣いてしまうというシーンは絶対に入れたかった。そこで涙を流して「自分は何で泣いたのかな?」って考えた時に、映画をまた追体験出来るという構造にしたかったんですね。
――どこか懐かしさを感じる風景だったり、大人の中にこそ涙を流してしまう人が多そうですね。
村上:そうですね、特に35歳以上の方がお子さんと一緒に観てくれると嬉しいです。35歳から40歳くらいの僕のアンチがいっぱいるクラスタにもぜひ観て欲しいですね(笑)どんな意見が来るのが楽しみです。
――そういった、主にインターネット上でのアンチの意見もどんと来いというスタンスなのでしょうか?
村上:決して楽しみにしているわけでは無くて、Twitterを始めた時は、批判的な意見を浴びせてくるユーザーをブロックする事もありました。でも最近は悪口を言われたらリツイートしています。確かに良い事言ってる時もあるんですよね。そうやって、悪口をリツイートすると、悪口にまた悪口が加わって相乗効果で、何で自分が日本で嫌われているか分かったりするんで。リサーチには役立っています。
――映画が公開されると、また活発に意見が届きそうですね。
村上:散々ネガティブな事言われると思うんですけど、それはそれで2以降に活かしたいですね。ネガティブなことをネガティブに思うんじゃなくて、自分の作品の受け皿があるところに、どういう風に球を投げるかを考えたいんです。
――監督は、子供の頃に見た『ウルトラマン』『悪魔くん』『河童の三平』と言った作品が「正直に僕ら子供にこの世の“ドグマ”を語ってくれた」とおっしゃっていますが、本作にもそういった作品から受けた影響が反映されているのでしょうか。
村上:それらの自分の心に残っている作品は「自分の人生をコンプリートしていない大人」たちが脚本や美術や怪獣デザインに入っていて。そもそも人生を整理整頓出来ない人が芸術家になるんですよ。音楽家とかアーティストってよく社会的な問題を起こしたりしているじゃないですか。そういう人達は社会に順応出来ない為に、その中でも何とか頑張ろうとそれぞれの“芸”に精進するんですよね。
そんな人たちが生み出した作品が今も心に残っていて、自分も同じ穴のむじなだと思うから、世の中を斜めに見てのメッセージを正直に語る事で、今の子供たちの中にも救われる子がいるかなと。彼らはきっと悩んでいるはずなんですよね「皆がワーワー言ってる時に楽しめない」とか。僕自身がそうだったので。そういう子たちにとっての福音というか「ひねくれてて良かったんだ」と思えるような作品でありたいと思います。
――実写映画の中にも影響を多く受けた作品はあるのでしょうか?
村上:スピルバーグのUFO映画ですかね。『未知との遭遇』とか『E.T.』とか。影響を受けたというよりは、スピルバーグは、スピルバーグの宇宙人へのこだわりって、ほぼ宗教ですよね(笑)。何度も何度も繰り返される宇宙人へのこだわりを、大予算を使って作り続けている姿勢が『A,I』 の頃から病的になってきて、感動しています。
現代人ってなかなか宗教を持つことが難しいと思うんです。一言でいうと古臭くて、科学がリンクしていないので信じられない。そんな現代人への新しい信心が宇宙人、というのが、アメリカ的でね。
――『めめめのくらげ』の“くらげ坊”も日常の中に突如として現れる異質ですが、監督自身は子供の頃に不思議な体験をした経験はあるのでしょうか?
村上:そんな感じで、高校生の時にUFOにハマって、当時住んでいたマンションの7階から写真を撮りまくっていた事がありましたね。「絶対にUFOだ!」って2年くらい凝っていたんですけど、ある日友人に「あれ羽田空港の方向だから飛行機じゃないの」って言われてガクっと(笑)。
――そういった、監督の興味のある事への真っ直ぐなチャレンジが、初監督となった本作にもこめられているのではないでしょうか。実際に、新しい挑戦に対して不安を感じたりすることは無いのですか?
村上:映画を撮りはじめた時はすごく楽しかったんですけど、仕上げの段階では色々と悩むことも多く。そして、公開前の今は不安な気持ちでいっぱいです。ミキシングが終わって映画が全て完成した直後は胸張ってどうだ!って感じだったんですけど。
ストーリーも映像もCGも音楽も全て自分でこだわったから、受験の時みたいに、頑張ったんだけど受かってなかったらどうしようみたいな。毎日嫌な夢を見てます。今朝の夢もすごくリアルで、劇場に僕がいて「良い映画だったな~」って思ったのに、パっと周りを見渡したらお客さんがいなくてガラガラで……。ガバって起きてすごい汗、みたいな。
――監督が全身全霊で作った映画だからこその不安を感じてしまうというわけですね。
村上:この作品は小規模な映画ですが、音楽もしっかりと作り、CGも破格の力の入れ方をしています。なので劇場で大きなスクリーンで観ていただくと、その映像をフルに感じる事が出来ると思うんですね。そして、いつか飛行機の中でも多くの人に観てもらえる、そんな作品になって欲しいというのも夢の一つです。
――どうもありがとうございました!
『めめめのくらげ』ストーリー
主人公の小学生、正志(まさし)は、引っ越してきた新しい家に、見慣れない段ボールを見つけた。中から出てきたのはくらげの様な不思議な生き物。どこか愛くるしいその生き物を“くらげ坊”と名付け、次第に仲良くなっていく。リュックにくらげ坊を連れて転校先の学校に行くと、他の生徒も、大人には見えない不思議な生物=“ふれんど”を連れていた。いったい誰が何のために。そしてふれんどとは何なのか―。
4月26日(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズ他 全国順次ロードショー
原案・監督・キャラクターデザイン:村上隆
出演:末岡拓人、浅見姫香、窪田正孝、染谷将太、黒沢あすか、津田寛治、鶴田真由、斎藤工
制作:カイカイキキ
「めめめ音頭」も公開中!
「めめめ音頭」は、映画『めめめのくらげ』の監督、村上隆が作詞作曲した、へんてこな音頭。かわいいキャラクター達と一緒に、みんなで「めめめ音頭」を踊っちゃおう♪ヽ('∀') メ('∀')メ('∀')ノ
めめめ~の めめめのめ~♪
https://www.youtube.com/watch?v=1wnXV4uaoVg
企画・原案・監修 ・EP:村上隆 (カイカイキキ)
演出・絵コンテ:森江康太 (トランジスタ・スタジオ)
アニメーションプロデューサー:宮下善成 (トランジスタ・スタジオ)
キャラクターデザイン:TNSK
振り付け:振付稼業air:man
編集:李英美
モーションキャプチャーアクター:KYO-KA
アニメーション制作:トランジスタ・スタジオ
音楽:「めめめ音頭」(作詞・作曲:村上隆)
編曲:CHRYSANTHEMUM BRIDGE
音楽プロデューサー:稲葉貢一 (TOY'S FACTORY)
歌:松本拓海, 矢部光祐, 橋本智哉, 小野伶広, 佐藤斗逢
毛利恋子, 小泉颯野, 堀口果鈴, 吉岡愛実, 藤井杏奈
作曲と録音のお手伝い:中川孝
録音のお手伝い:塩崎遵
歌の収録スタジオ:スタジオシャーマニカ
歌から楽曲への変換:メロウトーンミュージック
仕上げの録音スタジオ:アーティストゥリー・メディア
ミキサー:佐藤忠治, C.A.S. (アーティストゥリー・メディア)
サウンドエディター:高野寿夫 (アーティストゥリー・メディア)
マネジメント:渡辺直翔 (カイカイキキ)
製作:カイカイキキ
(C)Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
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