今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
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■経済の教室(現実編3) 円はどのぐらい安くなるか?(中部大学教授 武田邦彦)
今回は「基礎編」と「現実編」が一緒になっています。日銀方針がでて、株価が変動し、円が安くなっています。このことは私たち株や為替に関係の無い人まで、雇用、給与に大きな影響をもたらしますので、整理を急いでいます。
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国が異なれば通貨が違います。この制度は不合理に見えて、メリットがあり、むしろEUのようにユーロという同じ通貨を使うと問題が起こります。このことは数回後に整理をします。
日本とアメリカでは、日本が円、アメリカがドルですから、日本で100円でパンを買うことができ、アメリカでは同じパンが1ドルなら、1ドル=100円となります。この簡単な事を「購買力平価」という難しい用語を使いますが、内容は「同じ物を買う比率で円とドルが決まる」ということです。
現実には物価というのは複数の商品が対象になりますし、輸出するとき、消費者物価、卸売物価などさまざまなものがありますから、一様ではありません。それに投機的な動きがありますので、ややこしいのです。その関係を野村證券がまとめているのをお借りして下に示しました。
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「基本的には同じ物を買うのに、円はいくら、ドルはいくらで買える」ということですので、「消費者物価と輸出物価」の中間になっています。昔は消費者物価でも輸出物価でも、1ドルと300円ぐらいが同じ物だったのですが、今では1ドルと100円が同じぐらいです。
円とドルの関係はなにか投機市場や政治で決まるように思っている人がおられますが、現実には「大枠で物価ベース」であることがわかります。その意味では日本とアメリカの基礎的な力(ファンダメンタルズ)で決まるということが言えます。
最近では「企業物価と輸出物価」の間ぐらいなのですが、これは通貨の発行量など他の面の影響があるようです。
もう一つの決定要因は、「金利」です。アメリカの金利が10%で、日本が0%とすると、しばらくお金を使わなければドルで持っていてアメリカに預けていると得になるのでドルの価値が少し上がります。これまでは常にアメリカの金利が高かったので、(アメリカの金利―日本の金利)が一つの要因でした。これも野村證券のグラフを借用します。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://px1img.getnews.jp/img/archives/3107.jpg
2007年から数年間ですから、購買力平価(物価基準)よりも細かい比較になっていることに注意する必要がありますが、細かくはこのような金利差でも決まると言うことです。
さらには、ドルというお札の刷る量と円の量にもよります。今回の日銀のように135兆円のお札を270兆円に増やし、もし物もなにも変わらなければ物価は2倍になりますから、1ドル80円だったのが、1ドル160円になるということになります。
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ここまでがやや基礎編的ですが、すでにある程度の答えが含まれています。まずはアメリカの物価が変わらずに日本の物価だけが2%上昇して「インフレターゲット」が成功したとすると、1ドル80円の為替相場は、80円の1.02倍ですから、82円ぐらいになるということになります。
すでに円ドル相場は95円を突破する勢いですから、到底、物価だけの計算では説明できない数字になっています。でも、これ以上踏みこむと、経済学では説明できず、「異論が多い領域」に突入します。
つまり、円ドルは大きく言えば物価の変化によることは原理的にも歴史的にすでに示されていますが、それは10円、20円の変化では無く、100円単位の変化であること、普通のビジネスなどで問題にする1円2円という円ドルの変化はなにが原因しているかはハッキリしていないということになります。
そして、このぐらいハッキリした変化でも、将来は「1ドルは50円になる」という経済学者と、「1ドルが200円近くになる」という人がいるのでさらにややこしくなります。つまり円ドルの変化が小さくてもビジネスに大きな影響をもたらすのに、円ドルの変化は小さな原因でも大きく変化するというやっかいなものであることだけはわかります。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年04月10日時点のものです。
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