2012年10月5日より、好評放映中のアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』。原作ファンが非常にコアな作品なだけに、テレビアニメ化には当初不安の声も少なくなかった。しかし、放送が始まるとその心配は一掃、現在の「Part2」に至るまで非常に高い評価を得ている。その立役者の一つとも言えるのが、楽曲の格好良さでは無いだろうか。「Part1」のオープニングテーマ「ジョジョ ~その血の運命(さだめ)~」は、作品が濃縮された歌詞とクールな楽曲、そして何より歌う富永TOMMY弘明の力強い歌声が非常にマッチし、iTunesでも上位にランクインするなど話題を呼んだ。
今回、アニメ専門チャンネルアニマックスが提供する音楽番組「STUDIO MUSIX」に出演する、富永TOMMY弘明にアニソンにチャレンジしての感想や、『ジョジョ』の世界感に感じることなどについて話を聞いた。
——今回、はじめての『STUDIO MUSIX』出演ですが、意気込みをお聞かせ願えますか。
富永:やっぱりこの楽曲、『ジョジョ』に。『ジョジョ 〜その血の運命(さだめ)〜』に出会いまして、メディアであるとか多くの人に聞いていただけるチャンスが増えたということで、今以上に自分の気持であるとか、何に向かって行こうか、というのを改めてしっかりしていこうかなと思ったりしています。
——MCの喜屋武ちあきさんとの絡みがあると思うんですが、どんな感じになると思われますか?
富永:僕自身、音楽的にはソウルフルであったり、ロック寄りな現場が多いので、アニメのアーティストの方との接点があまりありませんでした。ですから、現場に入らないとわからないですね。(笑)タレントというのはその場の状況で空気を変えていく存在だと思うので、僕もその状況にいい意味で巻き込まれつつ、僕なりのスパイラルが出せればいいかなと思います。難しいと思いますけどね(笑)。
——『ジョジョ ~その血の運命(さだめ)~』は初めてのアニソンということですが、歌われてみてどうですか?
富永:いわゆるど真ん中のアニソンということで言いますとはじめてですね。アニソンの捉え方にもよると思うんですけど、僕的な世代で言うといわゆるアニメの中で流行ったということで言うと『いなかっぺ大将』であったりとか『宇宙戦艦ヤマト』であるとか、『タイムボカン』だったりとかですね。コミカルなものであったりとか、人生をどうやって生きていくかみたいなことであったり、SFチックであったり、とにかくその世界観が如実に出たものだなという意識はあって、まさか自分がそういうことを歌うことになるとは思っていなかったというのが正直なところです。アニメが持っている力を改めて感じさせられる、テーマ性であるとか、キャラクターの強さであるとか、そこに起こっている色々なおもしろいこととか、すごいこととかが歌詞の中に盛り込まれていたり、奇跡的なことすらもそこにあるかのごとく歌っていく、というのにワクワクしますね。
——特に今回は『ジョジョ』という作品でしたが、ファンからの反響はどうでしたか?
富永:たとえば会場に行ってもそうですし、個人的なTwitterやFacebookみたいなSNSでもそうですけど、僕自身の名前というのがなかなか知られていなくても「『ジョジョ』の人」ということで反響がとてもありまして、幸いな事に応援や良かった、という反応を頂くことが多くて、とても嬉しいです。正直嬉しいです(笑)。
——『ジョジョ』を歌ってからこれまでと変わったこととかありますか?
富永:「富永TOMMY弘明、あ、『ジョジョ』の!」という、とても強い作品と出会えたということで僕の名前であるとか、僕の歌を実際に聞いていただけるチャンスが増えたなといのはやっぱり変わった所だと思います。自分から発信していて、なかなか思った通りに伝わっているのかな、というのもありましたけど、「TOMMYさんちょっと今度歌ってくださいよ」とか「歌いましょうよ」とか反応がありました。それが、俺は1人じゃないなっていう感じはとてもしましたね。
——『ジョジョ』の曲をはじめて聞いた時の曲に対する印象はどうでしたか?
富永:曲は、やっぱりお仕事として頂いたというのもあるんですけど、難しい曲だなというのが正直なところでした。田中公平先生が仮のメロディを歌われて、その段階からこれはなんかすごいな、と。展開もそうですし、スピード感だとか、公平先生から、気迫みたいなものが伝わってきて「これはがんばらないと」「気迫に押されちゃダメだ」とそんな風に思いました。
——完成したものはすごくかっこいい曲ですよね!
富永:自分の気持ちとしてやっぱりせっかく頂いたものをどれだけこう、いい意味で返していけるか、というか。頂いただけじゃなくて、チャンスを与えられたものですから、なんらか報いたいというのは正直ありますよね。そういう意味で力強い作品に出会えたから、運良くいい結果というものが残せたんじゃないかなという風には思います。
——レコーディングのときの苦労話などはありますか?
富永:自分で練習して、こうだろうなと思ったら、その思いはちゃんと持っていかなくちゃいけないと思うんです。頑なで強い気持ちで行ったつもりだったんですけど、収録の時に「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」というアドバイスがあったりすると、「じゃあちょっとまてよ」と(笑)。そこで思いの修正みたいなものをするのが、強い作品なだけにすごく大変だったかなというのはありますね。
でもやっぱり、さっきも言ったように、作品を作られた方のことを尊重しつつ、それに応える中で自分らしさと魅力をどう積み重ねていくかというところの駆け引きというか、勝負というか。そういう気持ちで真剣勝負みたいなところだったんですけど、「へへへ」と苦笑いしながら本心は「クッ……」みたいな、どうしてやろうか、みたいな。それがいい意味でいい緊張感になったと思いますし、思い込みが激しいところをちょっとほぐしていただいたというようなところもあると思いますね。
——『ジョジョ』という作品で、プレッシャーみたいなものもありましたか?
富永:正直なところ、『ジョジョ』をシリーズ全部を読んでいたわけではなかったんです。歌うにあたって読み返してみたんですが、やっぱりどんなにすごいものでも、自分の関心がそれほどではないものと、関心を向けようとしたときとでやっぱり違いっていうのが出てきて。改めて『ジョジョ』を見た時にエネルギーの強さみたいなものを感じました。『ジョジョ』という作品が持っているポテンシャルというか、エネルギーというか。多分そういうことを加味して、富永TOMMY弘明って言う奴に対して歌わせてみようというのもあったと思います。自分も強い感じの歌い方を自分の売りとしてきたので、それが縁で出会ったんだな、というふうに思います。
——田中公平先生や『ジョジョ』の作者:荒木飛呂彦先生から歌に対するコメントはいただいてますか?
富永:荒木先生からはまだ頂いていないんですけど、公平先生は、仮歌や打ち合わせとかで、「この音出る?」という音域的なところから、どういう声質か、どういうものだったらTOMMYは反応してくれるか、というところからご一緒していました。そうやって自分の手の内を曝け出しながらやっていくのでちょっとした緊張感はありました。公平先生はとても優しい方なんですけど、音楽の話になると真剣で集中される方です。でもやっぱりそれに負けないようにしなきゃっていうところはありましたね。
——TOMMYさんは負けず嫌いなんですか?
富永:そんなことはないですけど(笑)。やっぱり相手の真剣さによるというか、負けず嫌いというよりも、真剣さに対しては応えなきゃという思いみたいな。ちょっと馬鹿正直というか、あまり機転が効かないというか(笑)。
——作品ではどの辺りが好きですか?
富永:奇妙奇天烈というか。身体の気功や波動であるとか、ちょっとある意味スピリチュアルな部分を、肉体のフィジカルなものに転換してそれを操って相手の悪意であるとか、何かしらの挑戦に対して打ち克っていくみたいな、ミラクルを起こしていくみたいなところがいいですね。また、人間が枝のようにずーっと幹を伝って広がっていって、人類になっていったものの叙事詩というか、壮大な物語のある部分を切り取ったすごく大きいテーマだなというのがありまして。その中で、細かいところを切り取って技にしていったりとか。「生きていく」っていうすごく単純なことです。
生まれた、出会った、そして関係ができていったことで何かが起きて、っていうそれがある種の因果であったり、巡っていくという、それこそ人生みたいなところがうまいと思いました。そして世代を超えてどんどんつながっていくというところの壮大さみたいな、昔こどもの時に宇宙を見てどこまでつながっているんだろうみたいな壮大さを思うようなストーリーだなと。そして時代性みたいなものも捉えられていて、最初の頃は18世紀ぐらいから始まって超現代に至るまで、そして各地でっていうのがすごいなと。
ひとつひとつのセリフも、テンポみたいなものがある意味すごくヒップホップだったりしますよね。言葉を紡いでいって、ある種無機質な言葉すらもその情熱でもって何かパワーに変えていくみたいな、例えば「無駄無駄無駄無駄無駄」みたいな。無駄って言ってしまえばそうですけど、「駄駄駄駄駄」っていうことで増幅感であるとか、迫ってくる感じというか。言葉自体のテンポ感でやられてしまうみたいな音楽的なところもあったりしますね。
——オープニング、動画と一緒になったものをご覧になった感想はどうですか?
富永:やっぱり「うおおおおおおお!」ってなりますよね。自分のイメージの中でそんなに極彩色でなかったものが鮮やかな色彩感覚と流動的な画と、先端性と、ちょっと尖った部分であるとか、そういったものが有機的に融合されたものが自分の声と相まって、自分の声という波動と画の持っているエネルギーが混然一体となったとき「おっ、やったかな」って思いましたね。
——それは今までの人生でなかなか得られない体験だったのではないでしょうか?
富永:なかなかやっぱり得られないですね。VJの方と元々ある動画を一緒に流すということはありましたが、やっぱりランダムであったりあえて意図するものと外したりという空間プロデュースみたいなものは何度か経験したことがあるんですが、やっぱりテーマをもったビジュアルと、そこに向かっていくみたいなことはなかなかないですね。
——原作を読んで頭のなかにイメージがあると思うんですが、それが絵になるとまた違いますよね。
富永:そうですね、やっぱり自分の中でこうかな、って思うものと実際にものすごいセンスを持った再構築というか、作家の方がこうだよっていうものとのギャップで優れたものを見ちゃうと、なるほど、みたいな。自分の思っていたものより数段鮮やかなものであったり、にじみ出たものがないとか、ちゃんとイメージを明確にしてくれたものはなるほどと思いますよね。
——結構発見があった感じですか?
富永:そうですね。気がついた細かいところは時間の経過で忘れちゃうところもあります。『ジョジョ』は漫画としても、純文学的というよりもやっぱりエンターテイメントの漫画として一瞬、一瞬ハッとさせられて、その時々をちゃんと楽しませてくれる展開をしているのがやっぱりすごいなと思ったりしますけどね。飽きさせないというか。
——アニメ本編は観られていますか?
富永:観ています。最近は女性が出てきたりとか、大人の展開になってきた部分がありますよね。今までは牧歌的なところが多かったのが、現代に近づいてきたということは、より現実的であるんではないかとか。同時代性というか、記憶みたいなものとか、そこにある社会的な風俗というか、社会的な雰囲気であるとかそういったものがのしかかってきて、ちょっとすたノスタルジーとか懐古趣味的なところとか。この雰囲気好きだよねとか、アーリーアメリカンが好きだとか、フューチャーライクなSFチックなものが好きだったりとか、その時代、時代のことを匂わせてくれるとか。
——これからライブの収録をされるということですが、TommyさんのバンドBLUFFが演奏をするということで意気込みはどうですか?
富永:今回、ジョジョという作品関しては富永TOMMY弘明ということで個人の名前でさせてもらっていますけど、やっぱりBLUFFというバンドが音楽活動のメインを占めているので、彼らといっしょにやっていたことで田中公平先生ともお知り合いになれたというのも大きいんです。BLUFFのメンバーが公平先生と同じ事務所にいて、その関係でライブをやったことがあったんですけど、そのときに覚えていてくださったらしく、「TOMMY歌ってみない?」って。やっぱりBLUFFで一緒に出来るというのは嬉しいですよね。たとえ同じグループでやっていてボーカルだけ別の、のど自慢大会みたいな感じでやるよりはなんかやっぱり楽しいじゃないですか。気心知れた連中であることと、やっぱりそのとっても演奏能力も高い人たちなので、かなり迫力のあるライブになるんじゃないかなと思っています。
——今後のライブの予定をお願いします。
富永:僕自身は割りとR&Bやソウルフルなもののカバーをやったりするライブが多いんですけど、そういうのは都内のちっちゃい50〜60人ぐらいのライブハウスみたいなところでやってます。おおよそ年間50本ぐらい、週1弱ぐらいのペースなので頻度は高いですね。都内中心ですが、呼ばれれば遠征もしています。ジョジョそのものを歌うことはできないんですが、何年も続けてきた洋楽を歌っていますね。BLUFFとしては、毎年4月ぐらいにツアーをやっているんですが、今年はメンバーがちょっとケガしちゃっていて今年のツアーは残念ながら未定です。
——読者にメッセージをお願いします。
富永:ずっと話してきましたが、『ジョジョ』は本当に素晴らしい作品ですし、テレビアニメの記念すべき第1弾のオープニングテーマを歌わせていただいたということで、ぜひぜひ作品ともども愛されるようなつもりで歌いましたし、作りましたので愛していっていただきたいなと思います。
——ありがとうございました!
BLUFF公式サイト
http://bluff.jp.net/
STUDIO MUSIX公式サイト
http://www.animax.co.jp/special/studiomusix/
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