今回は『NETOKARU』からご寄稿いただきました。
■じん(自然の敵P)1万4千字ロングインタビュー・音楽を使って物語を伝えたい(4)
●「アメリカ」のような楽しさも追求したい
─それは非常に面白いですね。ボーカロイドって最初期の頃は「これはソフトウェアなんだけれども、初音ミクみたいなキャラクターこそが重要なんだ、この娘が歌っているという体で曲を作るんだ」という人が多かった気がするんですけど、じんさんはもうIAなり、ミクなりっていうキャラクターのことはほとんど重視していない。
じん: そうですね。全く関係ないです。もちろんそれぞれのキャラクターを見て「ああ、かわいいなあ」みたいな気持ちはありますけど、だからといってこれらのキャラクターがどんな感情で歌っているという作り方はしないですね。カゲロウプロジェクト以外の曲は別なんですけど、カゲロウプロジェクトに関してはむしろ歌い手の感情を載せた歌にしたくないからボーカロイドを使っているわけで、だからボーカロイドを人間らしい感情を出すように使ったりもしない。
―「メロディを担当する音色なんだけれども、歌も歌える」みたいなものであってほしいという感じですかね。
じん: そういうシンセサイザーだと思ってます。そのほうが皆さんが聴いた時にストレスがないと思うんですよ。思うというか、そうであったらいいなという気持ちなんですけど。「ああ、これは人間が言っているわけじゃない。ボーカロイドが言ってることなんだ」って思えると、すごくフィクションらしくなると思うんですよね。
―「これはお話なんですよ」って強く意識させたいということですね。
じん: そうですね。僕の話に関しては俯瞰で見てもらいたいシーンばっかりなので、そういう視点で聴いてもらえればいいなと。
―それは「カゲロウプロジェクトに関しては」というお話ですけど、IAのオムニバスみたいに自分のプロジェクトと離れて作るボーカロイドの曲についてはどうですか?
じん: それは、その都度で自分の好きなことをやろうって思ってます。まあ今回だったら「アニバーサリーっぽい感じで」みたいな気持ちで。結果的にすごいバカみたいな曲になったんですけどね。何も気にしない感じで「イエー! サイコー!」みたいな(笑)。もう本当に意図とか何もなしで作って、何も考えてない曲ができましたっていうことですね。
―パーティーチューン的な感じですかね。
じん: そうですね。とにかく「We are all right!」とか叫ぶ曲になりましたって僕が積極的に推して、いろいろと説得してこれを収録曲にしてもらった(笑)。でも、満場一致でこれに決まったんですけどね。「アメリカ」っていうタイトルもデモの段階で「なんかアメリカっぽいからアメリカで」って仮タイトルにしてたら、そのまま決まっちゃったし。
―一般的なボカロPのイメージって、やっぱりDTM的なものが多いせいもありますけど、曲調がロック的なものでもそこまで大胆な作り方にならない感じがするんですよね。でもじんさんはそういう、いい意味でのロックスピリッツみたいなものを、ちゃんと入れてますよね。それはやっぱり、カゲロウプロジェクトが緻密に組み立てるものだからこそ、そうでないものをやりたくなるということなんでしょうかね。
じん: そうですね、「やりたいから、作っているもの」と「好きだから作っているもの」の二種類があるんだと思います。
―もちろん、ストーリーがあるものを音楽的に嫌いなわけじゃないんですよね。
じん: そうですね。むしろ、さほど興味のないジャンルの曲でも、ストーリーを入れて、ほかの曲とも関わり合って共通するキャラクターが出てくるようにして、動画が付いていく中で、どんどん好きになっていくんですよ。まあ、カゲロウプロジェクト以外でやっているものの場合は、音楽単体で好きっていう意味で違いがあるんですよね。全然違うものなんですけれども、最終的にはそれぞれ楽しいので、僕としてはどっちも全力でやりたいんです。だから「アメリカ」とか、去年出した「ワールド・コーリング」みたいな曲は、「どうしてこんな曲にしたんですか?」って聞かれたら単に「好きだからです」って答えるようなものなんです。そうやってミュージシャンである自分と、ちょっとプロデューサー的にものを考える自分を分業して楽しくやっていけたらいいなあと思ってます。
じん(自然の敵P)
2011年より動画サイトへ投稿を始め、2013年現在で関連動画累計2000万再生を突破。 1stアルバム「メカクシティデイズ」はオリコンウィークリーチャート初登場6位、1stシングル 「チルドレンレコード」で同チャートで初登場3位、「第27回日本ゴールドディスク大賞」ベスト5ニュー・アーティストを受賞! 本人執筆による小説「カゲロウデイズ」は2巻トータル70万部を突破、マルチクリエイターとして活動中。
●関連動画
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm20035012?via=thumb_watch
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://www.nicovideo.jp/watch/1361442713?via=thumb_watch
<取材・構成:さやわか>
執筆: この記事は『NETOKARU』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年03月21日時点のものです。
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