飼い猫が突然姿を消したら、何をすべきでしょうか。失望が深く、どうして いいのかわからない方がほとんどなのではないでしょうか。どれほどの失望に苛まれるか筆者も身をもって実感しています。しかし悲嘆に暮れて何もしないの は、飼い猫を野良猫にすることでもあるのです。2011年4月、筆者の飼い猫も失踪しました。その後五日目で保護に成功しました。猫を探すために何をすべきか、捜索の経験から得たコツを記したいと思います。
●1.足で探す
とにかく探すことです。家の周囲を隈なく探して、もしも姿が見えなければ、どこにいるのか見当をつける必要があります。持参物は、懐中電灯、地図、保護の為の好物やマタタビ、ビラなどが望ましいでしょう。焦らずに、猫の居場所を見極めるために近隣を観察することです。迷った猫は環境的な制限からその地域を出られなくなっている可能性があります。ただし、若い雄猫は繁殖のために遠くへ移動している可能性もあります。
塀へ飛び乗ってパトロールするのは若い猫です。体力がある分生存率も高いはずです。一方、老齢の猫の場合は体力も運動神経も落ちています。車の下や物陰にかくれながら、少しずつ移動します。体力が心配ですが、その分行動範囲が狭いので探しやすいとも言えます。
つまり、若い猫なら高いところ、老齢の猫は地面に近いところを探すのが適していると言えます。また、老いた猫は人の少ない夜の時間に長い距離を移動します。若い猫なら昼間も活動的かもしれません。
探す環境もさまざまです。都市部は目撃情報が得やすいでしょう。人口の少ない地域の場合では目撃証言の確率が減りますが、その分猫にとって隠れ場所が多いはずです。昔からある住宅街、新興住宅街、田畑の多い土地…地域の特徴によって、効果的な捜索の仕方は異なります。しかし、猫のいそうな地域には特徴があります。まず、自宅の近所です。そして、自宅の近所に似た環境である場所。加えて、野良猫のいる地域。そうしたポイントを特定しましょう。
時間帯を問わず探して歩くことが理想です。可能性やヒントを見つけるためにも最初の数日は体力と時間の許す限り、探して歩くのが一番です。近所の雰囲気や人の活動も猫の行動を左右させるものです。しかし、いつどこで見つかるかは見つかってみなければわかりません。「足と目で探す」ことが大事です。
●2.記録をつける
ノー トでもSNSサービスでもいいので、猫の失踪に気づいた時間を記録しましょう。自分の起こした行動や気付いたことを記していきます。探すために何をしたか、天気や近所の様子はどうだったか? といったことで構いません。記録すると、自然に「していないこと」が見えてきます。
筆者の場合、まずは捜索用にツイッターのアカウントを取得しました。猫がいないということは非日常の事態です。近所からの目撃情報なくして発見することは困難です。しかし、まずは探し手が捜索状況を把握することが第一です。猫を捜索している仲間とSNSでつながると、同じ悩みを共有したり、ヒントを交換しあうことができます。これは何より精神的な強みになります。
更に大事なのが地図を広げることです。広範な地図である必要はありません。まずは半径100-200メートルほどでいいでしょう。ただし、雄は雌の13倍の範囲で行動するといいます。若い雄猫の場合は300-500メートルほどの範囲が妥当かもしれません。いなくなってから時間が経っているなら、その時間に従って範囲を広げる必要があるでしょう。
広げた地図から猫のいそうな地域を推理します。探した地域に印をつけ、気付いたことと日付を記します。例えば、ビラの配布を断られた、野良猫を見かけた、といったことなど、何でもいいのです。ビラを断られるという事は猫を好きでない人がその地域にいる証拠です。アクションから得られたリアクションを記録することが、猫の居場所の推測や、ヒントの抽出を可能とします。暑いときは涼しいところ、寒いときは暖かいところ…いつでも、彼らは彼らにとって居心地のいい場所をみつけるのが得意です。そうした考察と推理を俯瞰的に行うためにも、記録は肝心です。
●3.ビラを渡す・近所の人に尋ねる
ビラは意外と作成に時間がかかるものです。焦らず、捜索の合間に息抜きしながら作業をすすめるのがいいでしょう。業者に依頼される方もありますが、刷る部数はそれほど重要ではありません。枚数に頼るのはツイッターの【拡散】に頼るのと同じで、最後の手段です。極端な例ですが、北海道の猫が沖縄に移動することはありえません。狭い範囲でのポスティングは有効かと思われます。しかし、熱心に眺めてくれる人は少数ではないでしょうか。ツイッターの拡散や膨大な枚数のビラから迷子猫の存在を知った人が、頭の片隅にいれておいてくれる確率はそう高くないはずです。
都会では特に「ビラを貼る」ことに慎重さが求められます。そのため、貼り付けを無闇に行う前に、捜索範囲の限定をしておくことが重要です。いきなり探偵社や印刷会社に依頼する必要はありません。ビラの数に比例して、重要度の低い情報として埋没してしまう可能性もあります。貼る箇所を最小限に押さえ、足で探し、聞き込みをする。近所の人に声がけをして、そのときにビラを笑顔で渡すのがいいでしょう。意識してもらえる確率が上がります。もちろん、断ったり、苦い顔をされたりと、マイナスな反応をする人も多くいます。しかし、その反応も、猫の居場所を消去法的に特定するためのヒントになりえます。焦りや不安にかられていても、人々に対して敬意と礼儀を払い、注意深さをもって接することが大切です。
筆者の場合、向こう三軒の界隈には一枚もビラを貼りませんでした。何より、その界隈に猫がいるなら自力で戻ってくるか、見つけ出すかできている可能性が高いからです。
●4.各機関への連絡
保健所、警察署、愛護センターへの連絡は速やかにしましょう。
「警察」
遺失物として届けます。ほかの機関は時間が限られていますが、警察署への連絡は24時間対応してもらえます。110番ではなく警察署の番号を確認して連絡するか、近所の交番に届け出るのがいいでしょう。
「保健所」
市区町村ごとに分かれている機関です。ペットの失踪届として届け出ます。保護してくれている人から連絡があれば、教えてもらえます。筆者は区境に住んでいるため、隣接している2つの区に連絡しました。
「動物管理センター」
都道府県ごとに分かれている機関です。東京の場合は「東京都動物愛護相談センター」( 03-3302-3507 )があります。2.3日に一度連絡しましょう。定期的に連絡すると整理番号がふられます。
「清掃局」
猫が区道や市道で事故死した場合、近隣の人から連絡があると、役所の土木課や清掃事務所などで遺体を回収します。自治体によって異なるでしょう。まずは問い合わせてみることです。区によっては業者が代行して行っているケースもあります。ほとんどの場合、日時や場所の記録だけしか残してもらえず、猫の特徴までは記されないようです。最悪のケースだとしても、事実の把握に近づくために連絡する価値はあります。
探す時間が長引く場合は、かかりつけの獣医師・動物愛護団体等にも、相談をおすすめします。
総じて、連絡するときのコツは、冷静にわかりやすく話すことです。必ず猫の特徴を聞かれますから、いなくなったと思われる日時、状況、猫の特徴をメモした上で連絡しましょう。例え「承知している」と思っていても、話すとなると咄嗟に言葉が思いつかない場合もあります。場合によってはネガティブなことや、逆にポジティブなことを言われるかもしれません。それらはすべてヒントとして受け止めましょう。見つかったら改めて報告の連絡をする旨を伝えておくと相手の印象も変わります.。
また、ネットに迷子猫の登録サイトや、猫の探し方を記したサイトも活用するといいでしょう。
ネコジルシ「迷子猫掲示板」http://www.neko-jirushi.com/maigo/
獣医師広報板「迷子猫・保護猫掲示板」 http://www.vets.ne.jp/bbs/c_6102.cgi
猫専用ポータル「迷子猫の探し方」 http://www.nekobaka.com/~ne-help/maigo.2.html
●保護するときは…
猫を保護するときの要点はいくつかあります。
静かに近づきましょう。呼びかけはしない方がいいようです。不安や警戒心から逃げられる可能性もあります。飼い主だからといって焦ってはなりません。筆者の場合は、正面に回りこみ、エサを置いてから一旦離れました。餌に近づいたところを抱きしめて保護しました。ただ、若い猫では保護が難しい可能性もあります。その場合はマタタビや高級な好物でおびき寄せるのが有効かもしれません。ご自身の猫の性格や年齢からどうするのがいいか、あらかじめ考えておくことをお勧めします。
せっかく目撃しても逃げられてしまう場合もあるでしょう。その場合は、目撃情報を得たこと、再会したことを励みにするのがいいでしょう。探すべき地域が特定されたのですから、探す労力がそれだけ割かれて、手段も限られたはずです。一度や二度逃げられても諦めないことが肝心です。けして「嫌われた」などという感傷を抱かず冷静に対処しましょう。
筆者が見つけ出した過程を簡単に記します。2011.4/10 午前1-3時頃不明になりました。近隣を時間帯を変えて捜しているうちに、夜中、ある地域で自分の猫らしき鳴き声が聞こえました。翌日、その地域に重点を置いて数枚のビラ貼りをしました。4/14 午前7時半頃150メートル内のアパート付近住民より情報がありました。駆けつけて、保護に至りました。
鳴き声が聞こえた夜、その場で必死に探したものの、ついに姿は見えなかったのです。しかし、そこで落胆して諦めていたら再会はありえませんでした。鳴き声が、猫のくれた唯一の手がかりでした。
焦らずに、まずは猫ともう一度会うための準備をすることが大切ではないでしょうか。猫の捜索にあたり、必ずつきまとう感情があります。「恥ずかしい」というものです。それならば、恥ずかしくない方策をとればいいはず。例えすぐには見つからなくても、できることはたくさんあります。
※この記事は筆者の執筆した「にゃんこ捜索マニュアル」の内容を要約したものです。
http://p.booklog.jp/book/25002
※この記事はガジェ通ウェブライターの「小雨」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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