今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■ネット議論とバーチャロン
あれは初代バーチャロンがゲームセンターに登場して間もない頃。1995年頃。バーチャロンというのはそれぞれ特徴を持ったロボットを操って3D空間で対戦するゲームだ。当時はまだポリゴンによる3Dゲームというのが珍しかったように思う。初代バーチャファイターが出たのも同じ頃(1993年)。
機体はそれぞれ特徴を持ってるので、人気のある機体もあれば、不人気なものもある。癖があって扱いにくい機体は当然のことながら不人気。それぞれの機体にあった戦術などが研究されるに連れて、さまざまな機体を使う人が増えていったけれど、初期の頃はかなり明確に人気・不人気がわかれていたと思う。
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ベルグドルという機体がある。頭部にロケットランチャーを装備した不恰好な機体。アンバランスでちょっと攻撃を受けるとすぐに転倒してしまう。移動速度も俊敏さに欠けた。はっきり言って弱い(笑)。
ところが上手な人が操作するとこれが一転するんだよね。ロケットランチャーの他にナパーム弾の武器があり、これは障害物を貫通して物陰からも攻撃できる(実際には上空に投げてそれが地表に着弾してるんだと思うが)。なので自分は物陰に隠れて、そこからナパーム弾を撃ってると、相手はなかなか反撃できない。
もちろんそんな単純な話ではなくて、当然相手は回りこんで攻撃しようとしてくる。たいていの機体はベルグドルよりも俊敏に動けるので、速度だけなら相手に回りこまれてしまう。上手に相手の動きを読んで、自分はさらなる物陰に入らなくてはならない。上手な人はそれが上手い。
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ある時ゲームセンターでこのベルグドルと対戦している人がいた。対戦者もそこそこ上手で、他の機体を使っていてた。ところがどうしてもベルグドルに勝てない。対戦者はこれがどうにも信じられずかなり熱くなっていた。100円玉を積み上げ、何度も何度も対戦。もう体中から「こんなはずがない」と言う言葉がにじみ出ている状態(笑)。
実際、横で見ていたけど、これはむかつくだろうな、という戦い方。上述のようにとにかく物陰に隠れる。決してベルグドル側からは積極的に攻撃してこない。そして僅かな隙をついてナパームを撃ってくる。相手が「このままでは時間切れで負けてしまう」と、焦って近寄ろうとすると、さらに後退しつつまたナパーム。
いやホント、俺もこの時まで「なんでこんな弱っちい機体が存在するんだろう」と思ってたので、こういう戦い方をすればベルグドルは強いんだと初めて知った次第。
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そのうちその対戦者は怒りのあまり筐体バンバン叩き始めた。まあ今ならマナー違反だろう(いや、当時もマナー違反ではあったのだが)。それでも対戦はやめず、ベルグドルもずっと同じ戦法。苦し紛れに対戦者もベルグドルを選んで戦ってみるものの、当然のことながらそんな付け焼刃では、勝負にならない。結局その対戦者は一度も勝てなかった。
物陰に隠れてないで出てこい!と、きっと心のなかで何度も叫び続けていただろう。でもベルグドルというのは、そういう戦い方をする機体なのだ。前述のように機動性がイマイチなので、敵に真正面から姿を見せて戦うと、相当不利。敵の攻撃を避けられない。
物陰に隠れるにしても移動速度は速くないので、相手の動きを読んで盲点を突かないと、逃げ続けるのも困難。ようするに同じぐらいのレベルのプレイヤー同士が戦ったら、ベルグドルの方がやっぱかなり不利な機体だと思う。そのベルグドルの上手な人は他の機体で戦いを極めたので、わざわざ不利な機体を選んで戦っていたのだろう。
同じように癖があって不人気な機体としてバルバスバウというのがあった。これはベルグドルよりもさらに操作性が悪い。しかしこれも上手い人が操作すると勝てない…。バルバスバウは近接戦が絶望的なので、戦う側はなんとか近接戦に持ち込もうとする。バルバスバウは走破させじと浮遊機雷をばら撒きつつ逃げまわる。
ようやく追い詰めたと思ったら上空から強力なレーザー攻撃がやってくる。バルバスバウは両腕を切り離してファンネルみたいにそこからレーザーを撃てるのだ(ただしこの状態だと本体に両腕がないので、無防備になる)。「ここでこの攻撃が来るか!」というぐらい意表を突かないと。攻撃される側からすると「ああ、しまった、わかってたはずなのに」とレーザーの連射を浴びながら、悔しさにのたうち回るわけですな(笑)。
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総じて癖のある不人気な機体の使い手は、ムカつく戦い方をする人が多い。まあそうでないとそういう機体は勝てないわけで。なので連敗する方は「こんな(弱いはずの)機体になぜ勝てないんだ」という気持ちも相まって、かなり苛立つわけですな。
で、苛立ち始めると相手のプレイスタイルが、もう何もかも卑怯に見えてくる(笑)。そんな卑怯な戦法を使わずにどうどうと勝負しろ!みたいな。双方ともゲーム機として決められたルールにのっとって戦ってるだけのはずなのに、「こういう戦い方はダメだ」とか「この戦法はマナー違反だ」とか、勝手に自分ルールを追加すると、ね。
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ちなみに俺はViperを使っていた。非常に機動性が良く武器もホーミング性能が高い。まあ素人好みの機体かもしれない。その代わり装甲がとても弱い。ジャブ程度の攻撃が致命傷になったりする。つまりすべての攻撃を避けなければならない。「(弱い装甲も)当たらなければ、どうということはない」を強制される機体(笑)。とにかく一度たりともミスが許されないというか、ぴょんぴょん跳びまわって徹底的に敵の攻撃を避けつつ、チクチクと細かい攻撃を積み重ねていくしかない。
ライデンという機体は強力なビーム砲を装備している。装甲も厚い。ただその分移動速度は劣る。だからこの機体は多少攻撃を食らっても、それ以上に強力な攻撃を相手に浴びせればOKという戦い方になる。
それぞれ機体の性質にあった戦い方があるわけで、どういう戦い方が王道でどういう戦い方が卑怯だというわけではない。有利な戦いに持ち込むところからが実力のうちなわけで、自分に不利な戦いをされたからといって、相手を罵ってはいけない。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年03月11日時点のものです。
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