ネット選挙運動解禁を目指す公職選挙法改正の与野党話し合いがおこなわれています。
しかしその協議の中で大きな対立があり、ついに決裂。全面解禁は夢となり消えてしまいました。
報道によれば
「選挙運動のメール送信を第三者には認めない」「与党案を今国会に提出する方針を固めた」
とのことなんですが、はじめてこの話題に触れる方のために説明します。
まず「第三者」とはなにか。この法律改正にあたって登場する人物は3つ。
「政党」
「候補者本人」
「第三者(それ以外、つまり一般人)」
つまり第三者というのは政党でも候補者自身でもない、それ以外の一般の人たち、簡単に言えば「投票する人たち」であり「わたしたちみんな」ということです。政党や候補者については解禁になるけど、投票する側は全面解禁にならないという不思議な結果となってしまいました。
次に「与党案」について。与党案と野党案の細かい部分はおいといて、大きな違いは「一般人に対してネット選挙を全面解禁してるかどうか」です。
これまでは自民党、みんなの党、民主党などなどほとんどの政党が「すべて自由にできるようにしていこう」「基本、全面解禁だよね」ということで協議が進んでいたのですが、唯一公明党だけが「一般人の表現に制約を加えたい」と主張しはじめたのです。
具体的に言うと「政党と立候補者以外のすべての人のメールによる選挙運動に制限を加えたい」とのこと。
もともと自民党は全面解禁に近い考え方だったのですが、公明党が反対。というわけで、自民+公明の「与党」としては、全面解禁をおこなわないという内容の「与党案」が提出されることになってしまいました。
罰則もありますから、私たちは選挙期間中メールをする際には公職選挙法違反にならないか注意しなくちゃいけなくなる、ということになります。友達にメールするときも含めて、すべてのメールについて。違反すれば罰則です。なんでこんな面倒なことになっちゃったのか不思議ですが、その方向で話が進んで、国会にその法案が提出されるとのことです。
メールを出す際に気をつけなくてはならないという点も面倒ではありますが、それによって「ネット選挙解禁」全体が萎縮してしまわないかというところも心配です。メールに比べるとウェブのきまりは緩いのですが、メールでダメといわれたらウェブもダメなような気がしてきますよね。それで怖いから選挙について触れるのをやめとこうという人も出てくるのではないでしょうか。せっかく全面解禁して自由に選挙運動をしよう、自由に語ろうという機運が高まっているのに逆向きになってしまいます。
また、ウェブとメールの境界線もあいまいです。
PCメール、携帯メールなどは「メール」。LINEやTwitter、Facebook、ブログは「ウェブ」
なんだそうです。
Twitterなどのソーシャル系サービスからはしょっちゅうメールが届きますけども、それらも含めてすべて「ウェブ」だということです。
この区分、「ウェブ」か「メール」かはそもそもどうでもよくって、要するにそのサービスが監視下にあって公的にコントロールできる状態にあるかどうかというのが大きいのではないかと推測されます。メール配信を止めるのは本人を捕まえない限り難しいですが、LINEやTwitter、Facebookはアカウントを停止すればいいだけだから簡単、という発想なのではないでしょうか。
IT音痴の人たちが決めたのが見え見えの法案でちょっと悲しくなってくる内容ですが近々成立することになりそうです。
ネット選挙運動、全面解禁のチャンスでしたがたいへん残念な結果となってしまいました。
●関連するニュース
ネット選挙解禁、公選法改正の与党案提出へ : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130221-OYT1T01254.htm
自公、ネット選挙で与党案を提出へ 全党共同提出を断念 :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2102X_R20C13A2PP8000/
ここに注目! 「ネット選挙運動解禁?」 | おはよう日本 「ここに注目!」 | 解説委員室ブログ:NHK
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/146010.html
※写真(By iskws) http://www.flickr.com/photos/iskws/2076198944/
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