5日未明、たつき監督が「すこし寝たので、息抜きにアニメ作りました」と発表したアニメ『けものフレンズ』の12.1話「ばすてき」。突然の発表に「息抜き」どころかリピートが止まらないフレンズも多いことでしょう。
“ジャパリバス”の壊れたタイヤを発見したフレンズが、「ばすてき」な乗り物を使って交換用の捜索に向かうという2分45秒のショートストーリー。コノハ博士、ミミ助手、アライさん、フェネックが登場するスピンオフのような作品となっています。
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さて、アニメの中で重要なカギを握る存在として登場した“ジャパリバス”。現実にも人間がバスという“檻”に入って動物に近づく展示方法が存在しますが、実はコレ、日本で初めて誕生した仕組みなんです。
ガジェット通信でたびたびお世話になっている動物行動学者の新宅広二先生に、今回は“サファリバス”の凄さを解説してもらいました!
サファリバス、装備がハンパないぞ!
新宅:「近代の世界の動物園は、1828年開園のロンドン動物園がモデルとされています。日本も1882年に上野動物園が開園し、世界的にも動物園の歴史が古い国です。特に敗戦後の焼け野原や家族を失った多くの子供たちを癒すために、全国に公立の動物園を建設した点は、欧米の歴史と比べると存在意義が大きく異なります。日本は梅雨や猛暑、雪や乾燥という激しい季節変化に加えて、狭く限られた国土です。その環境で世界中の野生動物の長寿飼育や希少動物の繁殖に成功しているという点で、実は飼育技術が非常に高いと言えるのです」
そんな日本で生まれた傑作の展示方法が“サファリバス”。1964年に多摩動物公園が“ライオンバス”として世界ではじめて考案したサファリ形式の観覧用バスです。
新宅:「一見、サファリバスの外装はデコトラ程度の改造と思われがちですが、実は装甲車並の装備に強化されているとんでもない特殊車両です。防弾ガラス2枚重ねの窓に、天井はライオンが4頭(1トン)まで乗っても問題無い強度に補強。タイヤはライオンに噛まれてもパンクしないチューブレスや対猛獣用装甲ホイールが装着されています。車内は不燃素材が使用されているので、火災で猛獣のいる場所に飛び出す事態は発生しません。非常扉も通常のバスとは異なり、開閉方向などが対猛獣用として工夫されています。万一途中で故障して動けなくなっても、列車のように救助車両が牽引できるようになっています。無線装備はもちろん、アンモニア銃なども装備されています」
多摩動物公園の安全対策がスゴイ!
新宅:「多摩動物公園のように建物の中から乗車する場合は、すき間からライオンが入り込まないように、入り口とバスのすき間が2~3cmしかありません。その車庫に着艦するドラテクはハンパないです。ちなみに、ドライバーは多摩動物公園の飼育係ではなく、京王バスの職員です。車庫入れでタイヤのすき間から下をくぐってライオンが入らないように、車庫の通路にはライオンが苦手な水が張ってあり、確認ミラーもあらゆるところに設置されて死角がありません」
世界最古にして最高峰を誇る多摩動物公園のライオンバスですが、残念ながら現在は耐震工事のために運休中。しかしながら、各地のサファリパークで運行するサファリバスもそれぞれに特色があります。
新宅:「動物の模様やデザインは園ごとに特色があり、給餌体験装置もバスごとに異なるので比較すると面白いです。富士サファリパークの“ジャングルバス”には、車検を通して公道を走れる車両もあります。まれにあの動物型にデコレーションされたバスが東名高速を走っているのを見かけることができます。とにかく、このサファリバスのスペックは、乗り物オタクの心もつかむスゴイ特殊車両なのです。動物園やサファリパークに行った際には、動物だけでなく、“ジャパリバス”にも負けない“サファリバス”をマニアックに楽しんで欲しいですね」
新宅広二(しんたく・こうじ)プロフィール
動物行動学者、監修業。
大学院修了後、多摩動物公園、上野動物園勤務経験のほか、大学・専門学校で20年以上教鞭をとる。哺乳類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫など400種類以上の野生動物の飼育技術や生態を修得。狩猟免許も持ち国内外でのフィールドワークもこなす。監修業では英国BBC作品ほかネイチャードキュメンタリーの監修や日本語制作を数多く手がけている。
最新の著書『しくじり動物大集合』(永岡書店)が3月15日に発売。動物の欠点をイラストで説明した読み物。『けものフレンズ』に登場する動物の知られざる生態も多数登場している。
※トップ画像は『ニコニコ動画』より引用
http://www.nicovideo.jp/watch/sm30968065[リンク]
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