4月8日に20年ぶりとなる続編が公開となる『トレインスポッティング』。1996年に制作されたこの映画は、90年代カルチャーを代表する名作として、今も多くのファンに支持されています。
『トレインスポッティング』と言えば、忘れられないのがあの“トイレ”シーン。映画を象徴する場面と言っても過言では無いですよね。続編『T2 トレインスポッティング』にも印象的なトイレシーンが出てくるので、お楽しみに。
というわけで今回は『T2 トレインスポッティング』の公開を記念して、トイレ評論家のマリトモさんに注目の“トイレスポッティング”について教えていただきました!
Q:これまでマリトモさんが見てきた、個性的なトイレについて教えてください!
マリトモ:10年以上に渡って全国各地にある変わったトイレを取材してきましたが、その中でも特に印象に残っているトイレを何点かご紹介したいと思います。
(1)庭園トイレ
まずはじめに風情を感じるトイレでいうと、福井県・越前市にある『レスト有情』というレストランのトイレです。7つあるトイレがすべて異なる作りの庭園仕様になっていて、それぞれのコンセプトで『竹軒(ちくけん)』『緑陰(りょくいん)』といった名前がつけられており、松や竹が植えられ灯籠が置かれていて風情があるので、利用者がついつい長居しすぎるらしいです。
(2)花嫁トイレ
また東京にある『目黒雅叙園』は、トイレの中に川が流れていて、日本橋を渡った先にトイレがあります。 橋も壁も扉も全て朱塗りで螺鈿細工の模様が施され、天井には金箔で施された画が描かれていて、“昭和の竜宮城”と言われるのも納得の豪華ぶりです。
一般公開されていない旧館にある80年以上も前に作られたトイレは、4畳半もある和式便所で、目黒雅叙園の方いわく花嫁衣装を持ち上げるお付きの人と一緒に利用していたのではないかとの事です。
(3)滑空トイレ
つぎにアイデアに富んでいると思ったトイレは、『斑尾高原スキー場』にある男性用と女性用のそれぞれ一室にあるトイレで、長野五輪のスキージャンプ台からの風景を印刷したステッカーを四方八方、 さらに足下までもスキー板の写真を貼っていて、標高差136mの最大斜度37.5度をリアルに表現しているので、目の錯覚とはいえ、高所恐怖症の方は怖いかもしれません。
(4)ペーパートイレ
京都にある居酒屋『ももじろう』のトイレは、壁一面にトイレットペーパーが設置されていて、女性用トイレには80個のトイレットペーパーが目の前にあり、そのすべてが綺麗に三角織りされていてとにかく圧巻の光景。男性用は、両サイドの壁にトイレットペーパーがびっしりと設置されています。
(5)ケーキトイレ
また、昨年に大分で開催された『大分トイレンナーレ』という、トイレとアートの融合で町おこしをする活動で作られたトイレのひとつで、円形の公衆トイレの外観自体がホールケーキになっているんです。中はピンク一色で、イチゴやブルーベリーに練乳がたっぷりかかった美味しそうな写真が壁一面に広がっています。
(6)水族館トイレ
誰もがきっと驚愕してしまうトイレでいうと、兵庫県の明石市の海岸沿いにある『ヒポポパパ(旧店名:ムーミンパパ)』のトイレは、四方八方が水槽になっていて、いろんな魚や、スッポンモドキが泳いでいます。そのシチュエーションに圧倒されて、思わず鍵を掛け忘れる方が多いらしく、鍵のついた扉が二つ設置されています。
ただ、水圧でガラスが割れてしまったり、泳いでいる魚が死んでしまったりと、何度も失敗を繰り返した末にこのトイレが完成したそうで、総工費やメンテナンスを含め総額2000万円以上をかけて作られた渾身のトイレです。
(7)ガーデントイレ
千葉県の飯給(いたぶ)駅の横にある公衆トイレは、世界一広い屋外トイレとしてギネスに申請されそうです。200平米の敷地が柵に覆われていて、さらにその中にガラスに囲まれたトイレが草木の中にポツンとあります。
解放感があっていいのですが、あまりに広すぎる上に屋外なので、目の前には広大な自然が広がっていて、誰かに見られている感がハンパなくて、10年以上いろいろなトイレに座ってきた私も、用を足すのに10分くらいかかってしまいました。
(8)秘宝館トイレ
最後にご紹介するのは渋谷にあるバーのトイレで、度肝を抜かれるような男性用の和式と女性用の洋式には一度目の当たりにしたら絶対に忘れられない人形が施され、インパクトの強いオリジナル便器の座り心地の悪さと、流す際に一瞬戸惑ってしまう仕掛けがたまりません。
全国各地にある秘宝館が相次いで閉鎖されていく中で、トイレをはじめとした店内にあるオブジェを厳選して取り揃えたそうで、昭和のバブルを感じさせる異様な空間でのトイレタイムを存分に味わえるため、十数年に渡るトイレコレクションの中でも特にお気に入りのトイレです。
Q:逆に“普通”のトイレの特徴とは?
マリトモ:白の和式で銀色のペーパーホルダーは昔からの定番で、シンプルな組み合わせが懐かしくもあり何となく安心します。
普通のトイレでも張り紙ひとつで一気に面白さが増します。
張り紙を書いた主は至って真剣そのものなんでしょうが、空回り振りが垣間みれてツボにはまってしまう張り紙が結構あるんですよ。
Q:マリトモさんがここまでトイレにハマったきっかけは何ですか?
マリトモさん:子どもの頃からトイレの夢を頻繁に見ることが多く、何故なんだろう?と不思議に感じていました。大人になってから、転職をする度に面接の前に緊張してなのか、訪れた会社のトイレで無意識に大の方をするようになりまして(笑)。
その結果、大をした企業からは内定をいただけたので、「もしかしたらトイレで運がつくのかもしれない!」と次第に思うようになり、トイレ空間に対してどんどん関心が高まっていきました。
今から10年以上前に立ち寄った伊勢湾岸自動車道にある刈谷パーキングエリアの『デラックストイレ』を目の当たりにした際に、誰もが気持ちよく利用できる最新の設備や清潔さに加えて、広々とした豪華な仕様に感銘を受けました。
そのことがきっかけとなり、日本のトイレ空間への取り組みや付加価値について再確信し、「いつか一冊の本にまとめられるかもしれない!」と思い立ち、トイレに対してこれまで以上に熱を入れるようになりました。
なかでも日本各所にある一風変わったトイレに興味があるのですが、お店のトイレにはメッセージ性が込められていたり、地域によって特色があったり、施設やお店の取り組みであったりと経済状況なども明確に反映されているので、様々なトイレを取材していると常に新しい発見があって非常に面白いです。
トイレという場所は、老若男女の誰もが一日に何度も利用する場所で、忙しないこの世の中で唯一ひとりきりになれる空間でありながら、排泄という本能を満たすことができる、いわば“究極のプライベート空間”だと思っています。
Q:映画『トレイン・スポッティング』には印象的なトイレシーンが出てきますが、あの描き方についてはいかがですか?
マリトモ:劇中ではまるでトラウマになりそうな強烈なトイレが登場しますが、トレインスポッティングを語る上でも欠かせない重要なシーンで、嫌でも頭から離れない生々しい描写がたまりませんね(笑)。それに海外のトイレで言うと決して珍しくないレベルかもしれません。
世界で一番清潔で綺麗なトイレと言われている日本にも、実は似たようなトイレが存在しました。千葉県市川市にあったゲームセンターのトイレは、あえて廃墟のような汚さを細部にわたって演出するという逆転の発想には脱帽でした。そういった遊び心のあるトイレが好きです。
Q:『トレインスポッティング』はイギリスの魅力全開の作品ですが、イギリス気分を味わえるトイレってありますか?
イギリスといえば、ロンドンにある「sketch」というお店のトイレがすごく素敵なんです。縦長の卵の形をしたカプセル仕様で、それがいくつもあって異次元な空間がたまりません。
Pod life #selfie? #handsup #guiltyascharged #pod #sketchlondon #regram @charlottiefarts
sketchさん(@sketchlondon)がシェアした投稿 – 2017 1月 30 10:15午前 PST
Q:20年ぶりに『トレインスポッティング』の続編『T2 トレインスポッティング』が公開となります。この20年間のトイレ界の変化について教えてください。
マリトモ:かつてのバブル期には、オリジナル便器を搭載していたり音楽がなったり稼働したりと度肝を抜かさせるような仕掛けが施されたトイレがゴロゴロしていました。でもお店のトイレは修理等のメンテナンス費用が意外とかかるため、通常のトイレでも維持していくことが大変なんです。
バブルがはじけた後はそういったトイレが徐々に姿を消していってしまったので、長年に渡って撮りためていた変わり種のトイレコレクションが現状存在しないために本に掲載することができなかったんです。変わったトイレほど姿を消してしまう確率が高いため、もっと早くからトイレハンティングをしておけばよかったと後悔しています。
昨今の日本では温水洗浄便座をはじめ、誰にでも使いやすい多機能トイレがスタンダードになっていますが、使い易さは勿論のこと、そこに遊び心のあるプラスアルファの何かがあると利用者もトイレでのひとときを楽しめると思います。
【マリトモさんプロフィール】
大阪生まれのフリーランスライター。
映像製作プロダクションのアシスタントディレクターとして従事した後、Webサイトの企画・ディレクションやマーケティング、デザイン業務のほか、ライター、カメラマンとしても活動すること16年。
そのかたわら、トイレ空間に興味を抱き続け、10年以上の歳月をかけて全国各地に点在する300カ所以上のトイレを独自取材。
現在は“トイレハンター” や“トイレ評論家” として各メディアにて活躍中。
著書に『ニッポンのトイレほか』も好評発売中!
https://www.amazon.co.jp/dp/4757222521 [リンク]
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