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きっと、誰かに会える旅。和歌山・熊野古道、世界遺産追加登録ルートをめぐる

2016/12/01 19:30 投稿

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こんなにぎやかな街中で、どうして自分はさみしいんだろう。ふと、そんな感覚にとらわれることはないだろうか。

そんな時はぜひ、本州のいちばん南・和歌山に来てみてほしい。中でも田辺市をはじめとする熊野地域は、千年以上も昔から、日本各地の人々が憧れ、目指す場所でありつづけてきた。

●和歌山県田辺市の地図:http://goo.gl/mSD7wP[リンク]

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それもそのはず。熊野の神秘的な山々と海は、古くから「きっと別の世界に繋がっている」と信じられてきた、遠いどこかへの扉なのだ。

また熊野の神は、歌人・和泉式部の夢の中で、「自分は“塵にまじわる神”だ。ほこりまみれで暮らし、誰も拒まない」という和歌を詠んだという。そのため古来から、貧しい庶民や、身体障がい者、女人禁制の寺社も多かった時代の女性など、他の寺社への旅がむずかしかった人々も熊野を目指した。

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「もっと強くなりたい」「もっと遠くに行きたい」……千年を超え、さまざまな人の想いを乗せてきた熊野の時の流れ。そこに身を浸せばきっと、何か大切なことを思い出せるはずだ。熊野は今や世界遺産となり、日本だけでなく世界中の人々を呼び集めている。

きっと、誰かに会える旅。そんな熊野古道の魅力を、今回は、2016年10月に世界遺産に追加登録されたばかりの場所を中心に5か所お届けしよう。

【1】人生のターニングポイントを見守る地、鬪雞神社

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新大阪から特急くろしおで一直線、JR紀伊田辺駅より徒歩約5分。熊野古道歩きのスタート地点は、古くからこの場所、鬪雞神社(とうけいじんじゃ)だ。

●和歌山県田辺市へのアクセス:http://www.city.tanabe.lg.jp/subindex/koutsu.html[リンク]
●鬪雞神社:http://www.tanabe-kanko.jp/midokoro/jinja/toukei/[リンク]
●車椅子の場合:参拝客用駐車場からスロープあり。境内は砂利敷きの平地、階段なし

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変わった名前には由来がある。今から約900年前、熊野三山をまとめていた人物・湛増(たんぞう)が、「お前は源氏と平氏とどっちの味方につくんだ」と言われ、こんなことをしたというのだ。

「じゃあ赤と白のニワトリを戦わせてどっちが勝つかで決めようかな」

要するに、「鬪雞=闘鶏」。闘うニワトリ神社、ってことだ。今からすると「なぜチキン」と思わなくもない決め方だが、おかげで勝者側(源氏)につけたらしいので結果オーライなのかもしれない。この故事から、人生のターニングポイントを迎えた人がお参りすることもよくあるそうだ。

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鬪雞神社に来たら、「梛の木(なぎのき)」の落ち葉を拾うのもいいだろう。この葉は「災いをなぎ払う」というところから、旅の安全のお守りとされてきた。また、実が並んでふたつなること、葉がちぎれにくいことから、縁結びや夫婦円満のお守りともいわれている。ということで、ちぎって取ってもしょうがないので、頂くなら木から取らずに落ち葉を拾おう

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周辺のおすすめスポットとしては、闘鶏まんじゅうで知られる「菓匠二宮」、シフォンケーキの美味しい古民家カフェ&ゲストハウスの「ICHIE」、ウツボ唐揚げや名物あがら丼が楽しめる「銀ちろ」などがある。また、近くの田辺市観光センターでは、ボランティアガイドによる1時間前後の無料案内を提供している(※団体有料)。

●菓匠二宮:http://www.amato-ninomiya.com/[リンク]
●ICHIE:https://www.facebook.com/ICHIE-1273265476035719/[リンク]
●銀ちろ:http://www.ginchiro.jp/[リンク]
●田辺観光協会:http://www.tanabe-kanko.jp/[リンク]

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透き通る美しい海が広がる、扇ヶ浜公園も徒歩範囲だ。

【2】遠い海を目指して、長尾坂~潮見峠

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お参りを済ませたら、さっそくの古道歩きだ。長尾坂(http://www.tanabe-kanko.jp/midokoro/kumanokodo/nagaosaka/)~潮見峠ルートは、その名の通り、遠くにきらめく海をのぞむ“潮見峠”を目指す道のりである。行ってのお楽しみに、峠からの写真は控えるが、ぜひとも双眼鏡を持っていくことをお勧めする。

道沿いの見どころは、なんとものんびりした名前の「ひるね茶屋」や、伝説の大樹「捻木の杉(http://www.tanabe-kanko.jp/midokoro/kumanokodo/nejiki/)」などだろう。ひるね茶屋のご主人が植えた木々に咲く花も美しく、例年2~3月に梅、4月上旬に桃の盛りを迎える。

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雨でもがっかりしないでほしい。「お滝さん」の愛称で知られる小さな滝は、雨の日にだけ現れる秘密の滝だ。

熊野古道 長尾坂~潮見峠

●詳細:http://www.tanabe-kanko.jp/midokoro/kumanokodo/nagaosaka[リンク]
●Googleマップ:https://goo.gl/vDIOsm[リンク]
●長尾坂登り口~潮見峠まで 徒歩約2時間10分(6.5km/片道)
※ひるね茶屋まで約3kmで引き返しても、海をのぞむ景色が楽しめます。

●車椅子の場合:長尾坂入口から捻木の杉付近まで一般車両通行可、駐車場なし。
引き返し困難のため、捻木の杉からは、潮見峠を正面に見て右側へ降りていくこと。

【3】川の流れに耳を澄ませて、北郡越

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続いては、北郡越(ほくそぎごえ)。渓流沿いのこの道は、目にも耳にも美しい。

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10世紀ごろから皇族が歩いたというこの道は、江戸時代にはすでに「古道」と呼ばれていたという、古道中の古道である。

熊野古道 北郡越

●詳細:http://www.tb-kumano.jp/kodowalk/course/inabane-takijiri/[リンク]
●Googleマップ:https://goo.gl/mX91N5[リンク]
●のごし橋~北郡バス停まで 徒歩約50分(2.6km/片道)※一般車両通行不可

【4】冒険気分、赤木越

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昔の人はこんなとこから、階段を発明したのかな。千年前からの人の足跡を、冒険気分でたどるルートが赤木越だ。

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廃墟好きにはたまらない、柿原茶屋跡。こいのぼりやハンガー、表紙がやや恐い国語の教科書などが遺されていた。

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何かの動物のすみかや、ちっちゃなキノコも道端に。

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足元は、ふっかふかの天然ウッドチップだ。雲の上を歩くみたいに気持ちいい。

熊野古道 赤木越

●詳細:http://www.tb-kumano.jp/kodowalk/course/akagi-dainichigoe/[リンク]
●Googleマップ:https://goo.gl/8sjVPG[リンク]
●赤木越分岐~湯の峰温泉まで 徒歩約2時間(5.9km/片道)※一般車両通行不可

【5】旅の終わりに 熊野本宮大社

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そしてやっぱり、旅の終わりは、2004年に世界遺産となった熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)だろう。

●熊野本宮大社:http://www.hongutaisha.jp/[リンク]
●車椅子の場合:車椅子専用通路あり、社務所に要問合せ

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熊野本宮大社前には、大鳥居を眺めながら、地元食材のランチやこだわりのコーヒー・自家製スイーツなどを楽しめる“ガラス屋・茶房 靖(http://www.sei-glassabou.jp/)”もある。隣の工房でつくられた食器がまた、料理をおいしく引き立ててくれる。

●ガラス屋・茶房 靖:http://www.sei-glassabou.jp/[リンク]

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旅の疲れは、川湯温泉で癒せる。その名の通り「川原を掘ると湯が出る」温泉だ。掘るのが大変だという方は、山水館 川湯みどりやをはじめとした周囲の宿に、川沿いの露天風呂がある。「でも掘りたければスコップを貸しますよ」とみどりやのご主人が言うので、冗談かと思ったが、本当に貸してくれた(そして本当に温泉を掘り当てた)。

●山水館 川湯みどりや:http://www.kawayu-midoriya.jp/[リンク]

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山、海、温泉、紀州梅。みかん、熊野牛、寺社仏閣。熊野の魅力はたくさんあるが、いちばんはきっと、“誰かに会える”ことだと思う。

今回の旅でも、ボランティアガイドや語り部の皆さん、宿・食事処の皆さんに本当によくして頂いた。「お会計はラッキーセブンです」と言った土産物屋さん、「昔はダンスホールがあってね……」「お父さん、今の人はディスコっていうのよ」的なダブルボケの夫婦漫才を見せてくれた味光路の居酒屋さんのご夫婦など、また会いに行きたくなる。

●紀州田辺 味光路:http://www.ajikoji.jp/[リンク]

なにより、昔の人たちの歩いた古道を辿れるのだ。「異世界に続く」という信仰、「他界観」があった熊野の道を、奈良、平安、江戸、それぞれの時代の人たちはどんな想いで歩いたのだろうか。「もう現世やだ」とか、「亡くした家族にひとめ逢いたい」とか、案外今と変わらないのかもしれない。目に見えない先祖を思うと、独りじゃない気になってくる。

人ごみが寂しいなら、和歌山の大自然へ。
世界遺産・熊野古道は、今も静かにあなたを待っている。

※2016年12月4日、世界遺産追加登録地をめぐるラジオウォークを開催。
詳細はこちらから:http://minakata.org/cnts/news/index.cgi?c=i161121[リンク]

●田辺観光協会:http://www.tanabe-kanko.jp/[リンク]
●取材日:2016年11月上旬
●写真・文:牧村朝子

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 牧村 朝子) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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