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人気SFシリーズのリブート第3作目となる『スター・トレック BEYOND』が現在公開中です。

宇宙の最果てにある未知の領域を探索する過程で、惑星連邦の存在意義の真価を問う新たな謎の敵と遭遇するジェームズ・T・カークと、彼の率いる「U.S.S.エンタープライズ号」のクルーたちの戦いを描いた本作。『ワイルド・スピード』シリーズの世界的大ヒットでジャスティン・リン監督がメガホンをとり、スタトレ史上最高のストーリー・映像を作り上げています。

今回ガジェット通信では、ジャスティン・リン監督にインタビューを敢行! 本作について、インディーズ映画出身ならではの作品作りへの想いなど色々とお話を伺ってきました。

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―世界的に多くのファンを抱え、50年の歴史を持つ『スター・トレック』ですが、監督は子供時代に『スター・トレック』をどう観ていたのでしょうか?

ジャスティン・リン監督:私は8歳の時に(台湾から)アメリカに移住したのですが、世界を半分渡ってとても寂しい気持ちでいました。その時にアメリカで『スター・トレック』のドラマ再放送をしていて、伝統的では“無い”家族の形を感じる事が出来たんです。共通の経験を通して絆を深めていく所に魅力を感じました。私は移民として非常に影響を受けました。

―では監督にとって『スター・トレック』は心の支え的な要素もあったのですか?

ジャスティン・リン監督:はい、とても大きな存在でした。ドラマ『スター・トレック』は当時のアメリカにとって先見性が非常に高かったと思います。有色人種もいますし、スールーはアジア人だからいるのでは無くて、乗組員だからいるわけです。そういった人種の多様性を当時にやっていたという事はすごいですよね。

―『スター・トレック』って、あらゆるコンテンツの中で最もファンが濃いのでは無いかと思うのですが、“トレッキー”つまり、『スター・トレック』オタクの……

ジャスティン・リン監督:「オタク」ね! その日本語分かるよ(笑)。

―嬉しいです(笑)。そんな『スター・トレック』オタク達のプレッシャーはありませんでしたか?

ジャスティン・リン監督:もちろんありました。特に私は『ワイルド・スピード』シリーズを手掛けていたので、『スター・トレック』ファンは「どうなるんだろう?」と思った人も多いと思います。でも私は、素晴らしい『スター・トレック』という作品だとしても、昔と同じ事をしては意味が無いと思っているんですね。同じ事を繰り返しては失礼かなと。私自身もチャレンジが無いとつまらない。私は今、おかげ様で作品を選べる状態にありますが、この『スター・トレック』は自分の個人的なチャレンジだったわけです。『スター・トレック』らしさというミッションをクリアしつつ、50周年という事もありますし、さらなる高みに持って行くことが自分の役割かなと思っています。

―製作総指揮のJ・Jエイブラムスからの要望はあったのでしょうか?

ジャスティン・リン監督:「とにかく思い切りやれ」とだけ言われました。シリーズ物の映画というのは“料理人”の様なものなんですよね。材料は同じなのだけど、自分の好きな様に作るといった感じで。だから私はこれから別の人が作る『スター・トレック』もとても楽しみで。

でも実は、2009年にJ・Jが『スター・トレック』をリブートすると聞いた時に、私は「不可能だ」と思ったんですね。もともとある作品があれだけ面白いのに新しく良い作品を作るのは難しいと。しかしJ・Jは素晴らしいキャストとスタッフを見つけてきて新しい作品を作った。そういったJ・Jに信頼して『スター・トレック』を任されたという事は本当に嬉しく有り難いです。

―『スター・トレック BEYOND』のキャラクター達はどれもとても個性的で魅力的で、全員が目立っていました。ズバリ魅力的なキャラクター描写の秘訣は?

ジャスティン・リン監督:私は映画を作る時、キャラクターと俳優さんを何よりも優先させたいと思っています。撮影前や撮影中には、俳優さんと何十時間もお話をして、キャラクターの背景や人物像を作りあげていきます。俳優はキャラクターのセリフを観客に運ぶだけの役割では無くて、深く理解した上で演じる事が必要だと思うんです。

―監督は映画監督としてのキャリアをインディーズ映画(『阿呆遊戯 ブルース・リーを探せ!』)からスタートしていますが、そういったインディーズシーンで映画を作る事と、『スター・トレック』というビックバジェットで映画を作る事の違いや、意外な共通点といったものはあるのでしょうか?

ジャスティン・リン監督:インディーズ映画というのは「商業的にあなたは信用されていないから」撮るものです。お金が無いけど情熱はあったり、企画や脚本に賛同して人が集まってくれる。本来ならばどんな映画もそういった気持ちで作るべきだと思っています。私はビックバジェットの作品を手掛ける際もインディーズ映画を作る様な情熱を持つ事を心がけています。私は10年かけて『スター・トレック BEYOND』を任せられるスタッフを集めたんですね。キャストも、脚本を書いてくれたサイモン・ペグにしても、皆非常に強い愛情をこの作品に注いでいる。なので、実はインディーズ映画に近い作り方をしているのだと思います。どの映画もそうあるべきだと思いますが、ハリウッド映画にはそうでは無い汚染された部分がある事も確かです。でも私は幸運な事に自分らしい映画作りを続けられています。

―10年かけてスタッフを集められたというのは驚きです。

ジャスティン・リン監督:例えば撮影監督なんて『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(2006年)の時に出会った方ですしね。僕は現場で一緒に映画を作ったスタッフやキャストと親しくなる事が多いのですが、特に『ワイルド・スピード』シリーズには8年携わっていたので、友達がたくさんいます。映画というのは非常に緊張感のある中で作るので、仲良くなるんです。僕には今7歳の子供がいるのですが、彼は現場で私の家族の様なスタッフ達に囲まれて育って来ました。

―こうして最強に最高な『スタートレック BEYOND』という作品を撮られて、きっと日本でもたくさんの人が観て興奮する事と思います。今後、監督はどの様な作品作りをしていくのか、ヴィジョンはありますか?

ジャスティン・リン監督:実は、ロサンゼルスで起きた「L.A. RIOTS」という暴動についての作品作りを進めていました。自分にとってとても情熱をかけたプロジェクトだったのですが、本作の撮影の為断念しました。それが『スター・トレック』を撮る代償だと思っています。なので、今後もバジェット的に小さい映画も作っていきたいと思っていますし、自分が選択した物を大切にしていきたいんですね。これまでの10年間はとても楽しい映画生活でしたが、これからの10年間はもっと楽しいものになると思っています。

―今日は貴重なお話をどうもありがとうございました!

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