TVアニメシリーズ、実写映画化もされた大ヒット漫画「GANTZ」がフル3DCGアニメーション映画『GANTZ:O(ガンツ:オー)』となり、いよいよ10月15日より公開となります。
本作の基となるのは、原作の中でも特に人気の高い「大阪篇」。高校生の加藤勝を主人公に、曲者ぞろいの大阪チームとの遭遇や妖怪型星人軍団との戦闘を描いています。今回ガジェット通信では「GANTZ」原作の奥浩哉先生にインタビューを敢行。「人生の宝物になった」と話す作品の魅力や、先生が影響を受けた映画まで、色々とお話を伺ってきました。
―フル3DCGの『GANTZ :O』、大興奮で拝見させていただきました! 完成した映画をご覧になって、率直な感想を教えてください。
奥先生:漫画と違って映画なので、音楽が入った分、ものすごく良くなっていましたね。ラッシュ(撮影状態を確認する為のフィルム)を観た時にもすごいと思いましが、それよりもさらに完成度が高くなっていました。企画が立ち上がったのが数年前だったので、僕の中ではこれでようやく念願が叶ったという感じで。一生の宝物になりました。
―まだ日本ではフル3DCGの作品は珍しいと思います。どういうきっかけでこの企画はスタートしたのでしょうか?
奥先生:実はこの企画、5、6年前に始まっていたものなんですよ。最初に2、3分のパイロットフィルムを見せてもらったんですが、その出来がすごく良くて。「今の日本のCGスタッフでもここまでできるんだ」と。ちょうど「GANTZ」の実写映画が出来た直後だったんですけど、「これはもう実写版を超えてるな」と思いました。それで、「是非やってほしい」ってお願いしたんです。僕が思い描いた「GANTZ」の世界がよりきれいな形で動いているんですから、期待は大きかったですね。
―先生から「やってほしい」とお願いされるとは素晴らしいフィルムだったのですね。そこから具体的に動き出したと。
奥先生:当初は誰が監督になるかわからない状態で。紆余曲折あってパイロット版を作った川村泰さんが監督をやることになったのですが、僕は打ち合わせもしていなかったけれど、このパイロット版を作った方なら間違いはないだろうと思って、お任せしました。
―制作開始にあたり、先生からお願いや要望を出した事はありましたか?
奥先生:制作にあたってひとつだけ僕のほうからお願いしたのは、モブ(※群衆などたくさんの人)とかメインの人物じゃない人もリアルにしてほしいということですね。騒ぎの中、携帯で写真を撮っている人とか、漫画の中でも気にしてリアルに描いているんですよ。その部分は映画でも踏襲してほしかったので、モブも手を抜かないで、メインキャラ並みに描いてほしいとは伝えました。モブが手抜きされているのを観ると「お金がないんだな」と感じてしまいますからね。
―確かに先生の描く漫画って、本当に細部まで細かく描かれていますよね。映画でのこだわりもさすがです。ファン人気の高い「大阪編」が映画化されているわけですが、ストーリーについてはお任せだったのですか?
奥先生:話の内容に関してはまったくないですね。完全にお任せです。スタッフの方からデザインのリファイン(再デザイン)をお願いされたので、メカデザインはいくつか見直しました。「Xガン」と「Xショットガン」と「Yガン」と「Zガン」は全部新しくしています。それと、ガンツバイクと巨大ロボの必殺技。フル3DCG用にディティールを増やして、デザインを原作よりも格好良くしました。
―今回、本編の主人公の玄野ではなく加藤が主人公です。奥先生は加藤のほうが好きだと以前おっしゃっていましたが、どんなところが好きですか?
奥先生:加藤ってある種、僕の思い描いている理想の青年みたいなところがあるんです。正義感が強くて、弱い者に優しくて、苦労しているというヒーローなんですね。そこに、僕は憧れてしまう。玄野はもうちょっと等身大に近いで、ごく普通の高校生。加藤はこういう人がいたらいいなって感じの理想像ですね。
―映画では漫画の「大阪編」に登場するキャラクターが数人いなくなっていましたが、その点は気になりませんでしたか?
奥先生:映画になるとしたら、削られるのはしょうがないだろうなと思っていました。映画はマンガよりももっと大勢の人に観られるものですから。それに僕自身、映画を観ていて全然気にならなかったんです。僕は結構自分で描いたものを忘れてしまうほうなので、「あ、そういえば桑原いたんだ」とか、能面とか般若とかもいたなみたいな感じで。あとでもう一回自分でマンガを読み返してみたら、なんか面白いじゃないかとか自分で思ったりしました(笑)。
―映画の中で特に気に入っているシーンはありますか?
奥先生:アクションシーンは全部完璧で好きなんですけど、ほかにも杏の出てくるシーンが気に入っていますね。杏と加藤がしゃべって歩いているだけの何気ないシーンですけど、あそこが一番好きです。歩き方がすごく可愛いくて。モーションアクターさんが本当に可愛い動きをしていて。あれはモーションキャプチャーじゃなきゃ出せなかった可愛さだと思います。手で描いても絶対にああいうふうにならない。
―本作は、モーションキャプチャーの動きも見所の一つですよね。
奥先生:制作にはフェイシャルキャプチャー(パフォーマンスキャプチャー)を使っていると聞きました。これは、映画『アバター』で開発された技術で、それをそのまま使っているらしいです。その技術がすごく活きていて、加藤や全部のキャラの微妙な表情がよく出ているんです。だから、人間っぽくて、感情移入がしやすい。3DCGにありがちな“お人形感”がだいぶ減っているなと思いました。
―原作の「大阪編」についてお話を伺います。あの物語の舞台や設定はどの様に思いついたのですか?
奥先生:大阪編は「少年誌っぽくしよう」と思ったんです。強い敵と強い味方がどんどん出てきて、戦い合うみたいな感じにしようって。それで、ヒエラルキーを作ろうと思い、「何回もクリアしている」ような強い奴がどんどん出てくるんですね。それでまた強い敵が出て来て、戦い合ってみたいなノリを目指したんです。それを実験的にやっていったら、わりと人気が出てしまって。ただ、長く描いていくと強い敵がどんどんインフレしていくんですね。話もどんどん長くなっていくし、キャラも増えていくし、こいつとこいつの戦いも描かなきゃいけないってなっていくし。そうしたらすごく長くなってしまって。こんなに何巻も描く予定じゃなかったんですよ(笑)。
―原作ではこの後に「カタストロフィ編」がやってきますが、大阪編の時点ですでに意識はしていたのでしょうか?
奥先生:はい。カタストロフィ編のほうが先に思い浮かんでいました。ガンツの玉がアメリカにもイギリスにもイスラエルとかにも、それこそ世界中にあるってイメージを考えていたんです。でもいきなり世界に舞台を移すのは急なので、その前に一本、クッションを置こうと。じゃあ、日本の中だとどこがいいだろう、と考えて、大阪が浮かびました。道頓堀って舞台としてちょうどいいんですよね。それで、大阪に行って少し写真を撮って描きはじめたのを覚えています。
―いつか「カタストロフィ編」や他のストーリーのフル3DCGも観れますかね……?
奥先生:ファンの方からはよく「『GANTZ:O』のクオリティで一話目から全部作り直してほしい」と言われます。それをやってくれたら僕もうれしいけど、でも、そんなことしたらたぶんハリウッドの大作並みにお金がかかっちゃう。「カタストロフィ編」だけでも、全部やろうと思ったら300億円ぐらいかかるんじゃないですか(笑)。
―私も一ファンなのですが、「GANTZ」という漫画って本当に今まで見た事の無い設定やストーリーの連続で。そもそもどんな事から着想を得られたのでしょうか?
奥先生:僕は映画が大好きなのですが、ハリウッド映画やアニメを観倒して、そのうえで「全部観てきた中で、まだ誰もやってないことをやろう」とは思ってるんです。いままで観てきたものは前提としてあるけれど、それを描くのではなくて、まだ誰もやっていないものを自分で描いている感じ。色々な映画が積み重なって描くものが生まれているということはあるのかもしれませんが、僕の意識としては、いままで観たことのないものをデザインして出しているという感じですね。
同じ様に、そういうものを欲している、僕みたいな人たちって全世界にいると思うんですよね。「GANTZ」はそういう人たちに響いているんだろうなぁと思います。海外のアメコミ好きとかが読んでくれていたら嬉しいです。後は若い人に観てもらいたいですね。「まだ誰も観たことがない」という刺激に飢えている人たちに。
―先生が子供の頃や思春期の頃に観て影響を受けた作品は何でしょうか?
奥先生:本当にたくさんあるのですが、子供の頃からホラー映画を観る事が多かったので、『ゾンビ』(『ドラキュラ』……本当に吸血鬼がいると思ってましたからね。後は『遊星からの物体X』は今観ても新鮮に面白い所がすごく好きです。ここ最近では、『ゼロ・グラビティ』の長まわしのカメラワークで、本当に自分がそこにいる様な息苦しい描写は新しいし素晴らしいと思いました。
―最後に先生にお会いする事があったら、絶対に聞こうと思っていた事を質問させていただきます。「GANTZ」には、『GANTZ:O』に登場する杏にレイカ、そして原作には多恵ちゃんに岸本……とたくさんの魅力的な女性キャラクターが登場しますが、奥先生が思う“GANTZのヒロイン”というのは誰ですか?
奥先生:少年漫画「GANTZ」としてのヒロインはレイカなのだと思います。でも僕が一番ヒロインだなと思っているのは多恵ちゃんですね。玄野がごく普通の高校生で成長していく姿が見えるのと一緒で、多恵ちゃんもどんどん成長していって、玄野の支えとなるというのは、自分で描いたキャラクターながらすごく良いキャラクターだなと思っています。
―今日は貴重なお話をどうもありがとうございました!
(C)奥浩哉/集英社・「GANTZ:O」製作委員会
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http://otajo.jp/63653
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