記者は近視で普段はコンタクトレンズをしている。数年前から夕方や疲れた時に手元のプレスリリースが見えにくくなるということがたまに起こっていた。
これはいわゆる老眼かなと思いながらも、昼間は特に問題はなかったので夜だけ苦労しながら記事を書いていたのだが、いよいよ老眼鏡が必要かなと取材の合間にメガネ屋に走った次第である。
かといって、まだ45歳なので完全な老眼でもあるまいし、その辺の詳しいことを聞いてみようとあらかじめ取材を申し込んで、渋谷の眼鏡市場に行ってみた。
普段はコンタクトレンズなので、メガネ屋に行くことはない。様々なフレームが並んでいて、ファッションの一部としての眼鏡も多いことに驚いた。
フレームを選ぶのだが、いろいろと掛けてみた結果、オリジナルブランドだというNEO-TEXにした。
掛け心地がいいというよりも、「掛け心地がない」といった方が正解かもしれない。
なにせ軽くて、掛けた感じがしないのだ。
フレームはぐにゃぐにゃで、こんなのでいいのかと思っていたのだが、特殊強化シールドで作られていて柔らかすぎても大丈夫だとのこと。
また、軽さゆえにレンズを入れた時にずってしまうのを防止するために、ツルの先端には純チタン製のバランサーが付いているという念の入れよう。
ここらあたりまでは、選ぶ楽しさもあって余裕だった記者。
レンズもいろいろあって、昔とは違うなぁという印象。
そして、いよいよ視力測定。
あらかじめ、最近の状況を話しておいたので、それに沿って機械で測定する。
ちなみに、コンタクトレンズをしたまま測定するのが解せないのだがそういうものなのか。
スマホ老眼というポップが目に入り、いやな予感がするが、結果は…。
「まず、効き目は右目ですね。それはいいのですが、確かに近くが見えにくくなっているようです」
--今の時間でもですか?夜はそうだという認識はあるのですが…
「はい、昼でも見えにくくなっています」
(がーん、これはもう立派な老眼だ!)
と、心の中で叫ぶ。少しばかりショックではあったのだが、仕方がない。
--老眼鏡ですか?
「いえ、コンタクトレンズをした状態で遠くは見えていますから、近くを見やすくするだけで大丈夫ですよ。今のままで老眼鏡をすると遠くが見えなくなりますから」
--コンタクトレンズをしたままで眼鏡をかけるのですか?
「そちらの方が、眼鏡の掛け外しをせずに済みますし、レンズも軽くて済みます」
なるほど、それは全く想定外だった。眼鏡をするとコンタクトレンズをはずすものだとばかり思っていたのだが、そうでもないらしい。
ということで、レンズはi-relaxという人にもよるが、遠くを見るゾーンは度がほとんど入ってなくて、近くを見るゾーンは度が入っているいわばミックスレンズを選択することにした。
レンズの位置によって焦点が異なるので、記者の目の位置に対して正確にレンズの位置合わせが行われた。
異なる度数のレンズをミックスさせたレンズはすべてオーダーメイドなので、できるまでに約1週間。
その間、老眼という現実にショックを覚えながらも、いずれ通る道だと気持ちを切り替えることに成功し、改めて店舗を訪れた。
出来上がった記者の眼鏡は普通の若い人たちがするそれに見えた。
記者の眼鏡納品後に、株式会社メガネトップ 営業企画部 副部長の冨澤美奈さんと、テクニカルトレーニング部長の関東和彦さんに話を聞いた。
--そもそも、近視や遠視、老眼って何ですか?
「まず、正常に見えることを正視と言います。そして、網膜の前に像を結んでしまうのが近視、網膜の後ろに像を結んでしまうのが遠視です。これらは屈折異常と言います」
一眼レフカメラで例えると、イメージセンサーの前に像を結んだり、後ろに像を結んだりすることである。レンズの異常や、マウントの異常でセンサーまでの距離が合わなくなる状態とでも言おうか。
--では、老眼は違うのですか?
「老眼は、調節異常と言いまして、今記者さんがおっしゃったようなカメラの例えで言いますと、フォーカスリングの異常で近くのものにピントが合わなくなるということでしょうか」
--つまり、まったく別の異常ということですね?ではスマホ老眼というのはどういうことでしょうか?
「老眼という症状について全般的に言えることは、ピントの調節ができにくくなるということなんです。調節をしているのは筋肉ですから、筋肉の衰えと言ってもいいかもしれません。人間の目というのは近くのものを見るときにパワーを必要とします。遠くを見るときにはいわば楽な状態なんです」
「それで、スマホは指で操作するためにどうしても近くになりますよね。しかもスクロールしたり、動画を見たりしてその都度、視線やピントが目まぐるしく変わります。これで目が疲れない方がおかしいですよね。しかも、紙に印字された文字よりも液晶の細かいドットの方がおよそ倍疲れると言われています」
「ですから、若い人でも、極端な話ですが子供さんでも目が疲れやすくなり、近い場所を見るときにものすごいパワーを使っていますから、ふとスマホから目を離した時に遠くのものを見るために筋肉が緩まなくて、ピントが一瞬合わなくなるのです。これがスマホ老眼です」
「一方、加齢とともに筋肉の働きそのものが落ちてきて、もはやパワーを必要とする近くのものにピントが合わせられなくなります。これが老眼です」
--では、老眼鏡と遠近両用それに、今回作っていただいたレンズはどう違うのですか?
「老眼鏡は近くのものを見るためだけにありますので、その都度つけ外しをしなければなりません。面倒なのもありますが、他から見て老眼なのがバレバレというのを嫌う方には不向きですね」
「遠近両用と一口に言いましても、遠近以外に中近、近々と大きく分けて3種類あります。つけっぱなしでいいという利点はありますが、見え方にひずみが出ますので、車の運転には不向きであったり、違和感を覚えたりとこれも良し悪しです」
「今回お作りしたi-relaxは、遠くを見るときには裸眼に近い状態で、近くを見る状態では徐々に度が入っていきますから目線も動きも自然で老眼だということは他人にはわかりません。いわば、目の調節力をサポートする近くのものを見やすくするための”ちかラク”レンズだと言えます」
「記者さんの場合は、老眼が入ったことで若干ですがコンタクトレンズが合わなくなってきていると思いますので、コンタクトレンズの方をきっちり合わせればお作りしたメガネでもっと楽に見えるようになると思いますよ」
--しかしスマホ老眼にしても、老眼にしても気が付かない人とか、私のようにコンタクトレンズの上から眼鏡をかけるという発想がない人も多いのではないでしょうか?
「そうですね。スマホ老眼は、普通に近視の眼鏡を作りに来られて測定してみたらそうだったという方が多いです。老眼の方は実は自覚されていても特に女性の方は老眼だということを認めたくないという方が多いのではないかと思います。お気持ちはわかりますが、加齢とともに筋力が落ちるのと同様ですからこれは仕方がありません。ですので、まわりからもわからないレンズを提供して精神的な苦痛を少しでも和らげていただければと思っています」
--見え方の実際に不安のある方も多いのではないかと思うのですが?
「そういう場合は、店舗にお越しいただければ無料で測定して合うレンズの状態をその場で試していただけますので、納得してお決めいただければと思います」
最後に今話題のブルーライトカットについてだが、記者の眼鏡にはブルーライトカット処理をしてもらっている。
写真は、iPadミニの画面にカラーチャートを表示して、フレームを境に上がレンズを通して、下が素通しで撮影したものである。ホワイトバランスを4100ケルビンに手動調節して撮影した。
若干だが上の方にブラウンが掛かっているのがお分かりだろうか。
青色の光は波長が短いので、目の中で乱反射しやすく結果的に目が疲れるということだった。このレンズは、ブルーライトを吸収する方式で加工してあるという。
昼間は取材に出かけて写真を撮り、話を聞き、夜は写真を選択加工して、PCに向かって記事を書くという生活を繰り返している記者だが、メガネのおかげで手元の資料を見ながらPCでの記事原稿を書くのが楽になった。
スマホ老眼でも老眼でも、もし変だなと思ったら無料で確認してくれるということなので、試しに行ってみてはいかがだろうか。
※写真はすべて記者撮影
―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
コメント
コメントを書く