今回は奥村徹(大阪弁護士会)さんのブログ『奥村徹弁護士の見解』からご寄稿いただきました。
■「少女たちが、全裸で四肢を切断され(両手は手首より先が、両足は膝より先が切断されている)、その切断部分に包帯が巻かれた状態で、首輪をつけられ、四つんばいなどの姿勢をとらされている絵」は児童ポルノではない。
「児童ポルノ」というのは法律用語ですから、誤解がないように、誤解を招かないように使いましょう。
実在の児童を描写したもので無い限り、児童ポルノではありません。児童=自然人ですから。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第2条(定義)
1 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
判例もたくさんあります
「[児童ポルノ・児童買春] 「児童は実在することを要する」」 2005年03月02日 『奥村徹弁護士の見解』
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050302#1109754922
「現在、実写ではない児童ポルノは違法とされていません」「日本でもやがて違法とされるでしょう」っていうのは、現時点では日本では合法ということだから、説得力を減殺します。
適用されっこない法律なんか持ち出さないで、もっとどぎつい言葉で攻撃すれば?
「森美術館における「会田誠展」の性暴力展示に抗議を | 森美術館への抗議文」 『ポルノ被害と性暴力を考える会』http://paps-jp.org/action/mori-art-museum/group-statement/
この「犬」シリーズで描かれている少女たちは、全裸で四肢を切断され(両手は手首より先が、両足は膝より先が切断されている)、その切断部分に包帯が巻かれた状態で、首輪をつけられ、四つんばいなどの姿勢をとらされ、作品名もずばり「犬」となっています。さらに、これらの作品の中で少女は微笑んでおり、このような性的拷問を楽しんでいるように、あたかもそれが自分にふさわしい扱いであるかのように描かれています。またこの「犬」シリーズ以外でも、少女が食べ物として体を開かれ、焼かれているもの、大量の少女ないし女性がジューサーの中でつぶされているもの、などが多数展示されています。
これらはまず第一に、作画によるあからさまな児童ポルノであり、少女に対する性的虐待、商業的性搾取です。日本の児童ポルノ禁止法においては現在、実写ではない児童ポルノは違法とされていませんが、カナダ、EU諸国、オーストラリアなどの主要先進国においてはすべて、これらは違法な児童ポルノとして処罰の対象になっています。日本でもやがて違法とされるでしょう。このようなものを貴美術館は堂々と公開しており、これは少女に対する性的搾取に積極的に関与するものです。
立法段階では、児童には非実在も含むと思ってた関係者もいたみたいだね。いまだに。
こんなのは警察に通報しておけばいい。売ってるのは有償頒布罪。「少女の局部をあからさまに描写しているもの」は冒頭の主張でいえば、「児童ポルノだ」って言い切らないと。
第五に、作品の中には、少女の局部をあからさまに描写しているものもあり、これは刑法のわいせつ物頒布罪ないしわいせつ物陳列罪にあたる可能性があります。これらの作品は18禁部屋として特設コーナーに入ってはいますが、広く公開されていることに何ら変わりはありません。また18禁コーナー以外でもキングギドラの頭部が女性の局部に挿入されている作品などがあり、子どもでも鑑賞することのできる状態で展示されており、これは青少年健全育成条例違反にあたる可能性があります。また、「犬」シリーズを含む諸作品は、森美術館の正式のホームページに掲載されており、それは何らゾーニングされておらず、子どもでも簡単にアクセスできるものです。
東京都の条例では、不健全図書も、知事が指定しないと制約を受けないようです。知事に上申するのが先ですね。
『東京都青少年の健全な育成に関する条例』http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012150001.html
(不健全な図書類等の指定)
第八条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。
一 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
三 販売され、又は頒布されているがん具類で、その構造又は機能が東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
四 販売され、又は頒布されている刃物で、その構造又は機能が東京都規則で定める基準に該当し、青少年又はその他の者の生命又は身体に対し、危険又は被害を誘発するおそれがあると認められるもの
2 前項の指定は、指定するものの名称、指定の理由その他必要な事項を告示することによつてこれを行わなければならない。
3 知事は、前二項の規定により指定したときは、直ちに関係者にこの旨を周知しなければならない。
(平一三条例三〇・平一六条例四三・平二二条例九七・一部改正)
(指定図書類の販売等の制限)
第九条 図書類の販売又は貸付けを業とする者及びその代理人、使用人その他の従業者並びに営業に関して図書類を頒布する者及びその代理人、使用人その他の従業者(以下「図書類販売業者等」という。)は、前条第一項第一号又は第二号の規定により知事が指定した図書類(以下「指定図書類」という。)を青少年に販売し、頒布し、又は貸し付けてはならない。
2 図書類の販売又は貸付けを業とする者及び営業に関して図書類を頒布する者は、指定図書類を陳列するとき(自動販売機等により図書類を販売し、又は貸し付ける場合を除く。以下この条において同じ。)は、青少年が閲覧できないように東京都規則で定める方法により包装しなければならない。
3 図書類販売業者等は、指定図書類を陳列するときは、東京都規則で定めるところにより当該指定図書類を他の図書類と明確に区分し、営業の場所の容易に監視することのできる場所に置かなければならない。
4 何人も、青少年に指定図書類を閲覧させ、又は観覧させないように努めなければならない。
(平四条例一九・平一三条例三〇・平一六条例四三・平二二条例九七・一部改正)
(表示図書類の販売等の制限)
第九条の二 図書類の発行を業とする者(以下「図書類発行業者」という。)は、図書類の発行、販売若しくは貸付けを業とする者により構成する団体で倫理綱領等により自主規制を行うもの(以下「自主規制団体」という。)又は自らが、次の各号に掲げる基準に照らし、それぞれ当該各号に定める内容に該当すると認める図書類に、青少年が閲覧し、又は観覧することが適当でない旨の表示をするように努めなければならない。
一 第八条第一項第一号の東京都規則で定める基準 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
二 第八条第一項第二号の東京都規則で定める基準 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
2 図書類販売業者等は、前項に定める表示をした図書類(指定図書類を除く。以下「表示図書類」という。)を青少年に販売し、頒布し、又は貸し付けないように努めなければならない。
3 図書類発行業者は、表示図書類について、青少年が閲覧できないように東京都規則で定める方法により包装するように努めなければならない。
4 図書類販売業者等は、表示図書類を陳列するとき(自動販売機等により図書類を販売し、又は貸し付ける場合を除く。)は、東京都規則で定めるところにより当該表示図書類を他の図書類と明確に区分し、営業の場所の容易に監視することのできる場所に置くように努めなければならない。
5 何人も、青少年に表示図書類を閲覧させ、又は観覧させないように努めなければならない。
(平一六条例四三・全改、平二二条例九七・一部改正)
(表示図書類に関する勧告等)
第九条の三 知事は、指定図書類のうち定期的に刊行されるものについて、当該指定の日以後直近の時期に発行されるものから表示図書類とするように自主規制団体又は図書類発行業者に勧告することができる。
2 知事は、図書類発行業者であつて、その発行する図書類が第八条第一項第一号又は第二号の規定による指定(以下この条において「不健全指定」という。)を受けた日から起算して過去一年間にこの項の規定による勧告を受けていない場合にあつては当該過去一年間に、過去一年間にこの項の規定による勧告を受けている場合にあつては当該勧告を受けた日(当該勧告を受けた日が二以上あるときは、最後に当該勧告を受けた日)の翌日までの間に、不健全指定を六回受けたもの又はその属する自主規制団体に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
3 知事は、前項の勧告を受けた図書類発行業者の発行する図書類が、同項の勧告を行つた日の翌日から起算して六月以内に不健全指定を受けた場合は、その旨を公表することができる。
4 知事は、前項の規定による公表をしようとする場合は、第二項の勧告を受けた者に対し、意見を述べ、証拠を提示する機会を与えなければならない。
5 知事は、表示図書類について、前条第二項から第四項までの規定が遵守されていないと認めるときは、図書類販売業者等又は図書類発行業者に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
(平一六条例四三・追加、平二二条例九七・一部改正)
(東京都青少年健全育成協力員)
第九条の四 知事は、都民の協力を得て、第九条及び第九条の二の規定による指定図書類及び表示図書類の陳列がより適切に行われるように、知事が定めるところにより、東京都青少年健全育成協力員を置くことができる。
(平一六条例四三・追加)
(指定映画の観覧の制限)
第十条 興行場において、第八条第一項第一号又は第二号の規定により知事が指定した映画(以下「指定映画」という。)を上映するときは、当該興行場を経営する者及びその代理人、使用人その他の従業者は、これを青少年に観覧させてはならない。
2 何人も、青少年に指定映画を観覧させないように努めなければならない。
(平一六条例四三・平二二条例九七・一部改正)
(指定演劇等の観覧の制限)
第十一条 興行場において、第八条第一項第一号又は第二号の規定により知事が指定した演劇、演芸又は見せもの(以下「指定演劇等」という。)を上演し、又は観覧に供するときは、当該興行場を経営する者及びその代理人、使用人その他の従業者は、これを青少年に観覧させてはならない。
(平一六条例四三・平二二条例九七・一部改正)
(観覧等の制限の掲示)
第十二条 指定映画または指定演劇等を上映し、上演し、または観覧に供している興行場を経営する者は、当該興行場の入口の見やすいところに、東京都規則で定める様式による掲示をしておかなければならない。
御主張に口をはさむつもりはありませんし、そういう御主張の存在を否定するつもりはありませんが、法律を持ち出すんなら、専門家に添削してもらった方がいいですね。説得力が減りますやん。
執筆: この記事は奥村徹(大阪弁護士会)さんのブログ『奥村徹弁護士の見解』からご寄稿いただきました。
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