荒木理恵子(あらき・りえこ)/株式会社ワーナーミュージック・ジャパン 邦楽統括事業本部 企業提携推進室 室長
広告代理店で音楽事業に関わった後、31歳でワーナーミュージック・ジャパンに入社。音楽ビジネスと企業プロモーションを橋渡しする役を担う。夏木マリさんが編集長を務める『NATSUKI ROCK-WHAT IS LUXURY?-』の立ち上げ・運営にも携わる。
■思いきった転職、その直後に妊娠が判明
念願かなっての転職。配属された部署は、音楽アーティストの育成や音楽制作に関わる、いわばレコード会社のコアな部分。楽曲制作に立ち会うとなれば、夜通しスタジオにこもることもある。ところが入社して間もなく、荒木さんの妊娠が判明する。
「転職とほぼ同時に結婚したのですが、これから!という時に妊娠がわかって、さすがに戸惑いましたね。とりあえず今できることを、とギリギリまで働きました」
大きなお腹を抱えてプロモーションビデオの撮影に立会い、出産後は子どもを保育園に預け、産後5ヶ月で仕事に復帰した。
■多忙な現場での挫折から、自分の強みを活かす仕事へ
妊娠・出産をパワフルに乗り切った荒木さんだが、子どもがいる環境で24時間体制の制作現場についていくのは、予想以上に厳しかった。体力も時間も、出産前のように融通がきかない。そんな時、上司から「荒木さんの強みは、音楽業界と企業の橋渡しをすること。その経験を活かしてほしい」と助言を受ける。
「ちょうどレコード会社が『CD販売だけじゃダメだ』となっていた頃。ライブイベントやアーティストと企業のコラボレーションなど、通常のレコード会社の枠を超えたビジネスを求められていた時期だったんです」
広告代理店時代に、さんざん経験した仕事。だが、それはレコード会社にとっては新たな試みだった。荒木さんは、社内で「自分にしかできない仕事」を見つけたのだ。
■誰かに求められている限り、その仕事は頑張れる
現在、荒木さんは同社に所属するさまざまなアーティストのタイアップビジネスを担当している。19時過ぎまで仕事をした後、4歳半になる子どもを保育園へ向かえに行く。夜、子どもが寝た後に仕事の続きを片付けて、うっかり徹夜することも。
「忙しくてもう無理かな、と思うことは、毎日のようにあります(笑)。そんな時は、誰かに必要とされている限りは頑張ろう、と考えるんです。結局は、仕事が好きなんでしょうね」
一方で、家族が増えてから仕事に対する姿勢に変化があったとも語る。
「自分にしかできない仕事を創り出したいと思いつつ、職場で私の代わりになる人はいる、とも思えるようになりました。『自分がいないとダメ』とすべてを抱え込むのではなく、任せるところは任せられる余裕が持てるようになりました」
理想の仕事に向かってまっすぐ突き進む姿勢はそのままに、出産を経て、いい意味で仕事と距離をとることも学んだ。荒木さんのキャリアは、まだまだ進化している。
(取材・文/編集部・田中)