アンジェリーナ・ジョリーの初監督作品が公開されます。先日発表された、米フォーブス誌の「この1年で最も稼いだハリウッド女優」で1位を獲得したアンジー。超セレブなハリウッドスターの顔を持つ一方で、2001年から国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使となり、現在は特使として世界各地で人道支援活動を続けています。そんな彼女が取り上げたテーマは、第2次世界大戦以降のヨーロッパで最も悲惨な争いとなった「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争」。
ハリウッド女優がキャリアのひとつとして映画も撮ってみたんじゃないの? なんてイジワルな観方をしようとしても、思わず黙ってしまう、とても重たい内容。自分の影響力を知っているからこそ、目を背けたくなるような難しい問題に光を当てて、彼女なりの平和活動を進めているのかもしれません。
セルビア系ボスニア人の警官ダニエルとムスリム系ボスニア人の画家アイラは、紛争により、恋人同士から敵味方という立場になってしまう。ムスリム系の女性たちはセルビア軍にとらえられ、兵士たちの宿舎で働かされ、日常的にレイプを受ける。将校であるダニエルは、自分の特権を利用してアイラを助けようとするが......。
民族同士の根の深い争いは、簡単に善悪で語れるものではなく、どちらの側にも葛藤がある。ついこの間まで、ご近所の知り合いだった相手に銃を向けなければならない、という心理状態は、想像するだけで胃がキリキリしてきます。
兵士たちの葛藤だけでなく、この映画で特に強烈な印象を残すのが女性たちの扱われ方。これまでの戦争映画ではあまり取り上げられることのなかった部分だと思います。アンジーは、この映画だけでなく今年6月には国連安保理でも「世界は紛争地帯でのレイプを深刻かつ優先すべき問題と捉えるべき」と演説したのだそう。
信念をもって進化し続けるアンジーの姿は、カフェグローブ世代にも刺激をくれそう。テーマは重たいけれど、強くオススメしたい作品です。
なんだか終始真面目な話になりましたが、セルビア系の将校、ダニエルを演じた俳優さんがダニエル・クレイグ似でカッコよくて、そこもポイント大です。ぜひ彼の姿をスクリーンで観てください!
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『最愛の大地』[公式サイト]
監督・脚本:アンジェリーナ・ジョリー
出演:ザーナ・マリアノヴィッチ、ゴラン・コスティック
原題:In the Land of Blood and Honey
8月10日(土)より、新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
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(文/ミヤモトヒロミ)