今回ご紹介するのはコメディ。何も考えずに笑えて、スカッとします。
この映画、一番の魅力はキャスティングの妙。『英国王のスピーチ』の国王役や、『シングルマン』の大学教授役など、渋めの英国紳士役のイメージが強いコリン・ファースと、底抜けに明るいイメージのハリウッド女優、キャメロン・ディアス。ちょっと意外な組み合わせの2人ですが、そのイメージギャップがこのストーリーをよりいっそう面白くしています。
コリン・ファースが演じるのは、冴えない美術鑑定士のハリー。横暴な雇い主であり億万長者でもあるメディア王のシャバンダーの鼻をあかすため、印象派のモネの贋作をだまして売りつけ、一攫千金を狙う計画を立てた彼は、作戦のパートナーにテキサスのカウガール、PJを迎えます。
キャメロン・ディアスが演じるPJを田舎の娘とどこかバカにしているハリーですが、計画はハリーの思うように進まず、シャバンダーがPJに夢中になるなど、ハリーは予想外の展開に振り回されることに......。
主導権を握っているようで、周囲に振り回されっぱなしのコリン・ファースのドタバタぶりがおかしくて。ズボンがビリッと破けてパンツ姿になる(!?)というカラダを張ったシーンがあったり、下ネタが飛び出したりと、こんなベタなお笑い路線も行けるんだ! という驚きがありました。パンツ姿で廊下にたたずみ、おろおろするコリン・ファース......。いたたまれない感じが、おかしさを倍増しています。
シャバンダーを演じるアラン・リックマンも嫌味なメディア王を好演。イギリスの演技派俳優のイメージがありますが、彼もほぼ全裸で登場していたりと、かなりのはじけっぷりです。
もちろんキャメロン・ディアスも安定感のあるコメディエンヌぶりを存分に発揮。彼女が登場するだけで、明るく華やかになるのはさすが! です。
この作品、もともとは、1966年にマイケル・ケイン、シャーリー・マクレーンが出演した『泥棒貴族』のリメイクで、脚本を担当したのはコーエン兄弟。
『ファーゴ』や『ノーカントリー』のちょっと不条理なサスペンスや『バーン・アフター・リーディング』のクセのあるコメディのイメージがありますが、今回の作品はそのあたりのひねりのきいた「らしさ」はかなり薄まっているので、クセの強さを求める人には物足りないかも。でも、コーエン作品の特徴でもある、登場人物のキャラの濃さは健在。いい意味でシンプルに楽しめる作品です。
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『モネ・ゲーム』[公式サイト]
監督:マイケル・ホフマン
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:コリン・ファース、キャメロン・ディアス、アラン・リックマン、スタンリー・トゥッチ
原題:GAMBIT
5月17日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
(C)2012 Gambit Pictures Limited
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(文/ミヤモトヒロミ)