「YON-KA」は、国内では青山にディスティネーションスパがあるほか、高級ホテルのスパディレクションで知られています。植物療法に基づいた確かな製品はヘアメイクさんや女優などにファンが多く、女性誌などの有名人によるお気に入りコスメ紹介では常連のブランドです。
YONとKAはそれぞれ「陰」と「陽」を表し、「YON-KA」というブランドネームは、「再生」を意味しています。まさに、心身の陰陽バランスを整える「界 スパ」のコンセプトそのもの。ストレス過多ならば鎮静、エネルギー不足ならば活性をというように、訪れた人の状態にあわせて「調和」をもたらすトリートメントが特徴です。
日本には古くから温泉地に長逗留して体を癒す、湯治の考え方があり、人間と植物の本来備わっている治癒力に着目した「YON-KA」のトリートメントとの相性はぴったりといえるでしょう。ラベンダー・サイプレス・タイム・ローズマリー・ゼラニウムの5種類のハーブから抽出された精油の調合は、「YON-KA」"5つの宝"とされ、スパ・トリートメントの要となっています。植物のもたらす効果に着目し、治療目的の商品開発から生まれたスキンケアブランドの威力は、ぜひここで試したいものです。
セラピストによる入念なカウンセリングのあと、私が選んだのは「木香湯治」のメニュー。箱根の山にもあるシダーウッドやブナ、サイプレスの精油を使ったスパメニューで、心身の疲れやコリ、睡眠不足に心当たりのある人におすすめです。足先から頭のてっぺんまでオールハンドで余すこと無くマッサージされると、肌の透明感アップや小顔効果も期待できそう。
治療目的で開発された製品とセラピストによる卓越したオールハンドの施術での2時間は、森林浴をしている気分でリラックスできます。体も心もほどけるひとときです。「肌にあわせた化粧水を入れたルカスプレーをたっぷりとお顔にふきかけて栄養分を肌にしっかりと浸透させるんですよ」というのはセラピストの前田さん。「YON-KA」ファンが高じてセラピストになったというご本人のお肌はつやつや、もっちり美肌で見とれてしまいます。ベッドにうつぶせになり、人肌にあたためられたセラピストの手が背中に触れた瞬間が緊張を解く合図。目を閉じて、鳥のさえずりが響く森林のなかへ−−。
「界 箱根」の泉質は、「ナトリウムー塩化物泉」。保温効果があり、温泉に浸かったあとは湯冷めしにくく温かいのが特徴です。ゆるんで開いた毛穴に「YON-KA」のナチュラルな製品がじわじわと浸透していく間、うとうととすると、ふっと目が覚めた瞬間に心地よい潤いが全身にわたって広がっていました。この、記憶をなくす時間はもったいないのだけど、いいトリートメントにつきものなので、しょうがありません。体と顔、頭、全身にわたって手が施されたあとは放心状態になりますが、香草オイルをしっかりと体内に浸透させるために、お部屋で読書でもしながらディナーの時間を待ちましょう。
昔の人は、泉質で湯治場を探し、ゆっくりと温泉に入って体を休めることで、自然治癒力を高めていましたが、現在ではそのような余裕を持って温泉に行くのはなかなか難しいものです。長逗留するのは難しいかもしれませんが、ぜひ、2泊3日、自分へのご褒美に人の手に体をゆだねる時間を過ごしてみてはいかがでしょう。新緑の季節、箱根の森はさわやかな薫風をともなって、何かと疲れた心身を癒し、再生へと導いてくれるはずです。
そうそう、私はといえば、1泊2日のお手軽湯治ではありましたが、「界 スパ」のあと、春の乾燥でガサガサになった全身の肌が驚くほど滑らかになり、「ふっくら」とした肌の感覚を初めて体験しました。次は、一生懸命働いたあとに、倒れ込むように駆け込んで箱根の森のなかにある別世界を、もう1度味わいたいものです。
(取材・文/朝比奈千鶴)