アルフォンス・ミュシャ(1860~1939年)は19世紀末を代表する画家で、アール・ヌーヴォー様式の巨匠として日本でも絶大な人気を獲得しています。アール・ヌーヴォーとは、19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパやアメリカで流行した「新しい芸術」と呼ばれる革新的な芸術運動のことで、主に草木などの植物模様や流れるような曲線が作品に多用されています。
学生時代には苦労を重ね、知名度が低かったミュシャ。「女神サラ」と称えられたフランスの大女優サラ・ベルナールの宣伝ポスターを作製したことがきっかけで、脚光を浴びるようになります。サラとの交流を通し、芸術表現にますます磨きをかけ、ミュシャは自身の様式を確立してゆくのです。
グラフィックアーティストとしての他に、油彩画家、デザイナーとしての顔を持ち、シェイクスピア劇などのための舞台衣装やアクセサリー、キャンディーボックスのデザインも手がけました。
2013年3月9日(土)~5月19日(日)、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーにて「ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り」が開催されます。
本展のみどころは、連作として人気の高い「四芸術」シリーズ。本邦初公開となります。世界でも希少なシルクサテンに印刷されたこの絵画は「ダンス」「絵画」「詩」「音楽」の4枚から構成されるもので、当時の印刷技術の高さがうかがえます。シリーズの下絵も同時に公開となりますので、構想の過程も垣間見ることができる貴重な機会です。
これまでのミュシャ展では世紀末のパリ時代の作品や活動に焦点をおいたものや、作家の年代を追って構成されたものがほとんどでした。しかし今回はミュシャ財団全面協力のもと、作品だけでなく、ミュシャの芸術理念、コンセプト、思想などを考察する斬新な美術展となります。
今春は、今まで見たことのない新たなミュシャ像に出会う体験ができそうですね。
[ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り]
(文/六島京)