2023年6月にフランス・カンヌで開催された「Cannes Lions 2023」。ユーザー体験やビジネスにおける慣習に変化を与えた作品に贈られる「Experience」部門において、ユーザーのブランド体験を斬新な形でアップデートした作品を評価する「Brand Experience & Activation Lions」、クリエイティブを駆使してビジネスのあり方を変えた作品を評価する「Creative Business Transformation Lions」、販売という観点において新たな道を指し示した作品を評価する「Creative Commerce Lions」、新規性のあるクリエイティブで話題を生み出した作品を評価する「Innovation」、モバイルデバイスのポテンシャルを最大限に引き出した作品を評価する「Mobile」の5つの賞におけるグランプリをご紹介します。

Brand Experience & Activation Lions

「FIFA 23 x Ted Lasso」(EA Sports & Apple)

Congratulations to @apple and @EASPORTS | Grand Prix winners in the Brand Experience & Activation Lions for ‘FIFA 23 X Ted Lasso’.
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— LIONS | The Home of Creativity (@Cannes_Lions) June 22, 2023

2020年から合計3シーズンApple TV+で放映されたドラマ「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく(以下テッド・ラッソ)」は、エミー賞やゴールデン・グローブ賞などさまざまなコンテンツの祭典で賞を獲得した大人気コンテンツです。イギリスでサッカーコーチとして奮闘する主人公テッド・ラッソと彼のチームの成長を中心に描かれる同作品は、サッカーファンのみならず多くのファンを抱えています。そんなテッド・ラッソに登場する架空のチームを、EA Sportsが販売する大人気サッカーゲームFIFA 23に公式タイアップとして登場させた2社合同の事例がグランプリを受賞しました。

熱狂的なFIFA 23のファンが広告目的でタイアップしていると感じてしまうとゲーム内コンテンツとして受け入れられなくなってしまうため、FIFA 23内でテッド・ラッソのプロモーションを彷彿とさせる発言は一切せず、純粋なチームとして登場させました。結果的にFIFA 23内に登場する全700チーム中17番目にプレイされる人気コンテンツとなり、メディア費を一切使うことなく2,000以上もの記事が掲載され、ローンチ後最初の30日間だけで驚異の130億インプレッションという爆発的な話題を獲得しました。

Creative Business Transformation Lions

「ADLAM – An Alphabet to Preserve a Culture」(Microsoft)

「Craft」部門のDesign Lionsでもグランプリを獲得したマイクロソフトの「ADLAM – An Alphabet to Preserve a Culture」が、「Experience」部門のCreative Business Transformation Lionsでグランプリの座に輝きました。

西アフリカ全体に居住するフラニ族は、世界最大級の遊牧民族として知られています。彼らが母国語とするプラール語はその独特な文化を後世へと伝える唯一の言語ですが、つい最近まで文字が存在せず、あくまでも口頭で伝達するための手段としてのみ使用されてきました。このままでは文化そのものがいつかは消滅してしまうという危機感を抱いたフラニ族の兄弟、Ibrahima BarryとAbdoulaye Barryは独自にプラール語の文字を開発。教育現場や日頃のコミュニケーションの中で広く普及させることには成功したものの、あくまでも手書き文字としてしか存在していないという課題が残っていました。

そこでマイクロソフトはBarry兄弟と連携し、プラール語専用のフォントを開発。タイポグラフィのプロフェッショナルの力をフル活用することで世界中のPCで使用可能なフォントが完成し、西アフリカでも進むデジタル化の波に対応させることに成功しました。「フォント」というデザイン性の強いものを通じて文化を支えた実績が評価され、グランプリ受賞にいたったようです。

Creative Commerce Lions

「The Subconscious Order」(Hungerstation)

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サウジアラビアのフードデリバリーサービスHungerstationによるアプリ内施策が、見事グランプリを受賞しました。フードデリバリーを利用する人の多くはあまりに多い選択肢に無意識の内にストレスを感じており、メニュー選びに費やす時間は1年に132時間にも及ぶとも言われています。そんなストレスを少しでも緩和するため、Hungerstationは自社アプリ内に「無意識でメニューを選ぶことができる」機能を追加。内容としては、顔認証を活用することで2択の質問を通じてユーザーが無意識下で何を食べたいのかを導き出し、最終的に選ばれたメニューを提供しているレストランを表示させるというもの。

レストラン向けの施策が多いフードデリバリーサービスのプロモーションにおいて、とことんユーザーと向き合うことで新たな可能性を導き出したことが評価され受賞にいたったようです。

Innovation Lions

「Mouthpad」(Augmental)

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スマートフォンをはじめとした多くのデジタルデバイスは、その機能性の進化とともにアクセシビリティも新しいモデルが登場するたびに向上されてきました。今となっては多くのスマートフォンに音声コントロール機能が搭載されていますが、その正確性にはまだまだ改善の余地が見られ、交通事故などが原因で手や指が使えない人々にとっては大きなストレスの原因にもなっています。そんな課題を根本から解決するためにAugmentalが開発した「Mouthpad(マウスパッド)」が、業界全体のスタンダードを覆すほどの新規性を評価されグランプリを受賞しています。

口の中に入れる通常のマウスパッドの形をした同商品は、舌を使うことでスマートフォンの画面を自由自在に操作できるというもの。多くの人々が日々感じているストレスを解消しつつ、舌の新たな活用法を見出すことで大きな話題を獲得しました。

Mobile Lions

「World Cup Delivery」(Pedidos Ya)

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36年越しに優勝を果たし、サッカー大国アルゼンチンの全国民の夢が成就したFIFAワールドカップカタール2022(以下、W杯)において、優勝トロフィーが自国に戻ってくることは時の一大ニュースでした。アルゼンチン最大のフードデリバリーサービスPedidos Yaは、 さまざまな航空データやメディアの発表を通じて、優勝トロフィーがアルゼンチンに到着する時間を逆算。優勝トロフィーを載せた飛行機がカタールを飛び立った瞬間にPedidos Yaのアプリをダウンロードしている600万人ものユーザーに「あなたのご注文をお届け中です」という通知を送信しました。

突然に事態に驚いたユーザーがアプリを開くと、そこには世界地図とカタールを飛び立った優勝トロフィーの様子が映し出されていました。W杯という一大イベントで悲願の優勝を果たしたアルゼンチンにおいて、遊び心満載の手法で多くの国民から注目されたことが評価され、受賞につながったようです。

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