新型コロナウイルス感染症に伴う外出禁止期間を経てイギリス国民の多くが少しずつ普段の生活に戻るなか、道行く人々は今まで以上にせわしなく、「The Big Issue」の販売員の呼びかけに足を止めることも減ってしまったといいます。売上の低下が生活環境の悪化に直結する販売員たちにとっては由々しき事態であり、なんとか販売数を上げるために雑誌の発行元が着目したのは空き枠の目立つ街中のデジタルサイネージでした。
販売員たちが四方八方に指を差す様子を収録し、彼らの名前と一緒に“I’m here(わたしはここにいる)”というシンプルなフレーズを配置した映像を街中のデジタルサイネージで流しました。販売員たちの制服には彼らの位置情報をデジタルサイネージに知らせるためのビーコンを仕込み、特定のサイネージに接近した時に彼らの現在地に応じた場所を彼ら自身が指差す映像が放映されるように工夫されています。
呼びかけだけでは振り返らなかった通行人も、デジタルサイネージで大々的に映し出される販売員の映像を見て徐々に関心を取り戻していきました。一般ユーザーだけでなく多くのメディアが取り上げた結果、SNS上のエンゲージメントは860%の伸長を見せ、売上も400%増加。
実際に自分の映像がデジタルサイネージで流れた販売員のLawrenceは「大きく映し出された映像を見た人たちが目線を移すと、すぐそこには生身の僕がいるんだ。こんなにすごいことはないよ。しっかりと売上にも貢献してくれているよ」とコメントしています。
空いたOOHを活用しつつ、街頭販売を行う特殊なビジネスモデルならではのやり方で潜在顧客へのアピールを行った結果、SNS上の話題だけでなくしっかりとビジネスへの貢献を実現することができた事例でした。