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 ご返信をいただきありがとうございます。

 私も数日前に学理動画を漁っていたら、マッカートニー本人が『Blackbird』について「バッハの曲をいじってたらできたよ」と、無防備きわまりない・しかし事実であろう話をさらっとしていたので、なんだろうこの厚さと軽さは、みたいな感じで敬意を新たにしていたところです。
 Red Hot Chili Peppers のフリーなんかもそうですが、天然で学理を突破できてそうな人は「楽譜読めますか(音楽理論って要りますか)?」という、「楽譜読めなくてもバンドできますよね(音楽理論も必須じゃないですよね)?」式の上目遣いとセットな質問をぶつけられているケースが本当に多いですね(とくにフリーは後年大学で勉強しなおした人だけに、言質を取りたい意識がそうさせるのでしょうね笑)
 ヌーノ・ベッテンコートがマッカートニーと(アワードの楽屋か何かで、打ち合わせとかリハとかではなく、ごく自然に呼ばれて)一緒に演奏したときのことを話していて、「自分が老人になったように感じた」と、あの見ていて心配になるほど躁傾向で善人でだいぶ子供っぽいヌーノでさえもしみじみと述懐していたのを見て、マッカートニーの(他人に分け与えるタイプの)躁エネルギーは本当にヤバいんだと思ったこともありました(笑)

「バキる」についてのご解説もありがとうございます。銚子産なのですね。90年代の自分も何かの漫画のセリフで読んだような記憶があるのですが、新鮮な20世紀の響きがしますね。
 チャーチルの、不機嫌は不機嫌で済ませつつ・常にニヤけてもいられる余裕の感じは、もう来ない世紀の徳性でしょうね。ボリス・ジョンソンが退く前の最後の議会演説で、周囲からツイッターみたいな野次を受けつつ、「もういっこだけ! もういっこだけネタっていうか、言うことがあるから」みたいな最低の宴会ノリで、あまつさえ半ばトランスしつつ、「ええーっと……アスタラヴィスタベイビー!」と『ターミネーター2』ネタだけ放って帰った映像を見てしまったとき、話がおもしろくない英国人の存在はここまで犯罪的なのか、と文字通り凍りついたことがありました。
 加えて、英国はリシ・スナクで「移民出身首相」の枠まで家畜化して飼い慣らした感があるので、チャーチルの時期と比べると本当に隔世の感がすごいですね(笑) 一方、アイルランドは前の政府指導者がインド移民&ゲイで、醜聞ではなくいきなり自主的に退任したことがありましたが、このへんの20-21世紀連結型のダイナミズムが解離されているせいで、「ニーキャップはすごい政治的なメッセージを発信してる日本のミュージシャンもこうなろうよ」的な、ロック理想化世代と同レベルの言論が私と同世代の人間たちからも発されている現状があるのだと思います。イスラエルの虐殺を批判するのなんか政治的メッセージ以前に当たり前のことで、そんな自明のことを音楽(家)の属性に帰すって、それむしろ音楽をバカにしてないか? とすら思わされるケースが多すぎるのは、前世紀におけるジョン・レノンの面の皮の厚い勇気をピュアなピース=厭戦にのみ還元する(それはつまりジョンが本当に備えていたポテンシャルの弱体化を意味する)思考が或る世代のファン意識に定着しすぎたためで、逆に言えば、それが変われば20世紀古典の新しい効果はこれからいくらでも生まれうるのでしょう。

No.3 9ヶ月前
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  • <菊地成孔の日記 2025年9月4日記す>

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